佐土原遼

「セカンドユニットがステップアップしないといけない」

琉球ゴールデンキングスは1026日、群馬クレインサンダーズとのゲーム2に85-81で勝利。前日のゲーム1で敗れた雪辱を果たし、シーズン54敗とした。

立ち上がりは互角だったが、琉球は第2クォーター、攻守ともにプレー強度で群馬を圧倒。27-9とビッグクォーターを作り出し、大量リードを奪って前半を終える。後半に入っても琉球の勢いは止まらず、第3クォーター中盤には岸本隆一の長距離砲でリードを26点まで広げたが、無用意なターンオーバーやファウルを犯してリズムを崩す。

4クォーターに入っても悪い流れは続き、ここまでシュートタッチの良くなかった群馬にオープンショットを確実に決められ猛反撃をくらい、残り2分半でわずか4点差とされる。だが、ここで琉球はジャック・クーリーがルーズボールをモノにしてからの得点、松脇圭志がスティールからの速攻でレイアップを放って外れるも、ヴィック・ローがリバウンドを拾ってダンクで叩き込む。チームの根幹であるハッスルプレーを勝負どころでしっかり遂行し、なんとか群馬の追い上げをかわして勝利を収めた。

桶谷大ヘッドコーチは複数の主力を欠く現状を踏まえて「本当にこの状況の中でよく群馬さんに勝てました。この1勝は大きいと思います」と語る。

最終的には前半の貯金が大きく物を言った勝利となったが、第2クォーターのビッグランをもたらした立役者は佐土原遼だった。この試合の前まで3ポイントシュートが17本中2本成功のみと苦しんでいたが、このクォーターだけで長距離砲を3本連続成功。また、ディフェンスでは持ち前のフィジカルの強さを生かし、群馬のビッグマンを抑えるなど攻守に渡って活躍した。

シーズンベストのプレーを見せた佐土原だが、試合の総括では反省が先に出た。「前半はよい流れの中でバスケットができたと思いますが、後半はチーム全体でゆるい雰囲気が出てしまいました。第3クォーターの入りはよかったですが、このクォーターの最後と第4クォーターの最初、セカンドユニットが出ている時に点数を取られてしまいました。それで僅差の試合になってしまったので、自分を含めてセカンドユニットがステップアップしないといけないです」

佐土原遼

「ちょっとずつ自分の役割が明確になってきた」

ようやく当たりが来た3ポイントシュートについては試合後、この日のMVPに選ばれた時のあいさつで「やっと決まりました」と語っていた。この発言の背景には次のような苦しい経験がある。

「打てる場所で打たないとリズムに乗れない。負けている試合は打てるところで打てずにターンオーバーというプレーが目立っていました。またここ数試合、成功率が良くないことでマークマンに空けられることがありましたが、桶さん(桶谷ヘッドコーチ)から『打ち続けてほしい』と言ってもらって、空いたら打つことを意識していました」

「今まで隆一さんやヴィックなどチームメートにしっかり守備を崩してもらっているにもかかわらず、自分が決めるだけというところで決めきれなかった。フリーで良いリズムで打てる、決めないといけないシュートをことごとく外していました。でも今日は良いリズムの中で打って決められたので、あのような発言になりました」

昨シーズン、佐土原はファイティングイーグルス名古屋で1試合平均12.8得点を挙げるなど、リーグ屈指の日本人フォワードと評価されるハイパフォーマンスを見せた。しかし、今シーズンはまだ9試合を終えたばかりではあるが平均5.2得点と、物足りなさを感じる人もいるかもしれない。

だが、自身がチームの中心だったFE名古屋と、すでにスタイルが確立されているところに加わる琉球とでは置かれている状況が大きく違う。佐土原もそのことを十分に認識しており、「今の状況も想定内かなと。メンバーが変わっていない、去年ファイナルまで行っているチームにすぐにフィットするのは難しいかなと思っていました」と語り、これを言い訳にしたくないという責任感の強さが裏目に出たと振り返る。「アジャストを早めようという気持ちはすごくあり、それが最初はあせりとなって良いパフォーマンスに繋がりませんでした」

覚悟はしていたものの、本来の力を発揮できないもどかしい日々が続いた。しかし、今は違う。「自分というピースが最近キングスにはまってきている。ちょっとずつ自分の役割が明確になってきたことで、やりやすくなってきました。それがスタッツにも現れています。この調子で続けていければ、今日のようなスタッツをコンスタントに出せると思っています」と確かな手応えを語る。

ちなみにこの日は、母校の東海大付属相模がウインターカップ出場を決めた。「ライブではないですが、試合の経過を追いかけていました。自分が現役の頃はウインターカップに出るなんて考えられなかったですが、後輩たちが活躍し全国大会に出てくれるのはうれしい限りです」

このように母校愛を語る佐土原は、「母校の活躍は自分の力になりますし、もしかしたらそのおかげで今日はシュートが入ったかもしれません」と笑顔を見せた。

10月27日、琉球は群馬戦を個人的な事情で欠場していたケヴェ・アルマとの契約解除を発表した。これから新戦力が加入するだろうが、満足な練習を積めないシーズン途中でいきなりチームになじむのは簡単ではない。外国籍ビッグマンを当たり負けせず守れる佐土原の存在は、より大きなものとなりそうだ。