山内盛久

難敵の三遠に逆転勝ちで開幕3連勝

サンロッカーズ渋谷は10月11日、アウェーで三遠ネオフェニックスと対戦。出だしでいきなりつまづき前半途中に2桁のビハインドを背負うが、後半には激しいディフェンスから走る自分たちのスタイルを遂行することで劣勢をひっくり返し、83-73と見事な逆転勝利を収め開幕3連勝を飾った。

この試合、SR渋谷はジョシュ・ホーキンソン、トーマス・ウェルシュの両ビッグマンでフィールドゴール17本中14本成功の42得点をマーク。ここまで高確率でシュートを決めることができたのは、ガードやウイング陣のドライブによって生まれたズレをしっかり突くことでイージーシュートが多かったからだ。そして試合を通して効果的なアタックを繰り出せていたのは、ベンチメンバーの活躍も大きい。

近年のSR渋谷はプレータイムが一部のメンバーに偏っていた。メンバー固定によるプラス効果もあるが、それよりもマイナス面である終盤のガス欠やプレー強度不足の方が目立ったからこそ結果としてチャンピオンシップに届かずにいた。

しかし、昨シーズン終盤から率いるカイル・ベイリーヘッドコーチの下、今シーズンのSR渋谷はローテーションに絡む選手が増えている。その象徴と言えるのがオフに加入した山内盛久、野﨑零也の両ガードだ。山内は緩急をうまく生かした柔、野﨑はコンタクトの強さをいかした剛のアタックで守備を切り崩し、オフェンスを活性化させている。SR渋谷が前半の劣勢を覆すことができた大きな要因の1つは、2人のアグレッシブなプレーだった

ベイリーヘッドコーチにこの点について聞くと「昨シーズンと今シーズンは違うチームなので比較はしたくないです」と前置きをした上で、全員バスケが大切だと答えた。「このチームは全員で戦っているので、全員がいかに試合の準備をして臨めるかが重要です。どんな選手が出ても自分の持っているモノをコート上で表現してもらいたいです」

今オフ、4シーズン在籍した三遠を離れ、2021年以来のSR渋谷復帰を果たした山内にとっては、シーズン早々に訪れた古巣への凱旋試合だった。「コートに入った瞬間、たくさんのファンの方が温かく迎えてくれて、正直泣きそうになりました。勝って恩返しできたのはよかったです」と振り返りつつ、勝因をこう語る。

「前半を終えて9点負けていましたが、第2クォーター後半くらいから自分たちのバスケを取り戻せていました。激しいディフェンスから走ることを第3クォーターに体現でき、それを我慢強くやれた結果で勝つことができました」

山内盛久

「プレータイムをしっかり得られるチームに行きたかった」

ここ数年の山内は、強豪へとステップアップする三遠において、コートに立つ時間が減っていた。チームのまとめ役、モチベーターとして貢献していたが、「なかなかチームの勝利に絡めていなかったので、プレータイムをしっかり得られるチームに行きたかったこともサンロッカーズに移籍した理由の1つです」と、35歳の大ベテランは選手として勝負できる場を求めた。

開幕からしっかりと健在ぶりをしている山内だが、「いくら練習していても、ゲーム勘は試合に出ることでしか取り戻せません。頭の中で思い描いているプレーができないギャップを感じていますし、かつての動きを少しずつ取り戻しているところです。今日もちょっとは取り戻せたと思います」と満足は全くしていない。

「(ベンドラメ)礼生、JJ(ジャン・ローレンス・ハーパージュニア)の負担をより減らせるように、もっとステップアップしていきたいです。今日の出場時間は10分ちょっとでしたけど、まだまだ助けられる部分はあります」

もちろんプレーに加え、持ち前のコミュニケーション能力の高さを生かしたまとめ役としての役割も求められている。SR渋谷一筋で、前回在籍時から唯一チームに残っているベンドラメとは「2人ともだいぶ、年をとりました(笑)。でも、考えていることは一緒です」と阿吽の呼吸は健在だ。

実際に今日の試合でもそれを証明する出来事があった。「今日もハーフタイムで、礼生の前に自分が先頭を切ってしゃべってしまい、その後に話していいよと伝えたら、『思っていることは一緒だったので自分から話せなくてもいい』と言われました。彼はキャプテンとして強い自覚を持っているので、もっと彼を信頼すべきです。自分が発言するのではなく、周りがより言いやすい環境を作っていったほうがいいと感じました」

この試合の山内のスタッツは11分25秒の出場で1得点2アシスト1リバウンド。しかし、数字に出ない部分の大切さを証明する貢献ぶりだった。