スティーブン・アダムズ

プレーオフで強烈なインパクトを残し、契約を勝ち取る

スティーブン・アダムズは今シーズン、ロケッツで見事な復活を果たした。現地6月14日、『ESPN』は両者が3年3900万ドル(約59億円)での契約延長に合意したと報じている。

アダムズはキャリア10年目、グリズリーズに在籍していた2022-23シーズンの1月に左膝を痛め、当初は数週間の離脱で済むはずがケガが長引いた。翌2023-24シーズンに向けたプレシーズンには出場したものの、後十字靭帯を手術することに。結局このシーズンは公式戦に1試合も出場できず、昨年オフにグリズリーズからロケッツにトレードされた。

この時点でグリズリーズはアダムズを戦力として計算できないと判断し、サラリーキャップが厳しい中で年俸を削減する動きだった。ロケッツはあくまで控えセンターとして、契約が残り1年のアダムズを獲得した。

それでも彼は、シーズンが進むにつれて周囲の信頼を勝ち取っていく。ディフェンシブ主体でタフに戦うチームとしてロケッツが順調に勝ち星を増やしていく中で、当初の構想ではオプションの一つに過ぎなかったアダムズが、その攻守に力強いプレーで重用されるようになった。特にウォリアーズとのプレーオフでは欠かせない戦力となり、アルペラン・シェングンとのツービッグ起用がロケッツの大きな武器となった。

レギュラーシーズンで58試合出場、平均プレータイムは13.7分とグリズリーズ時代から半減し、それに合わせて得点やリバウンドのスタッツも半減したが、プレーオフでは22.1分の出場で5.7得点、6.6リバウンドと全盛期と変わらぬ数字を記録。ウォリアーズとのファーストラウンドは小競り合いと口論、テクニカルファウル連発の荒れたシリーズとなったが、その激しい戦いの中で一歩も引かず、なおかつチームプレーを貫くアダムズは大きなインパクトを残した。

ウォリアーズとの『GAME7』に敗れてシーズンは終わり、ラファエル・ストーンGMは「今シーズンのロケッツは素晴らしいチームだったが、継続のための継続はしない。我々の目標はNBA優勝で、それに近付くためなら継続性を無視してでも補強を行う」と語った。それがケビン・デュラント獲得説などロケッツの積極補強の噂に繋がっているのだが、アダムズの『継続』はブレなかった。

膝の大ケガで実戦から1年半も遠ざかっているベテラン。それが1年前の評価だったが、今のアダムズはディフェンスとリバウンドの要であり、若いチームの精神的支柱でもある。彼が2023年にグリズリーズと結んだ契約は2年2520万ドル(約38億円)だった。膝の手術を経験し、2つ年齢を重ねて31歳となった今オフにそれより大きな契約を得たことは、アダムズにとって大きな勝利と言っていいだろう。