改善の背景「CS出場も怪しい危機感が背中を押してくれた」
5月3日、千葉ジェッツはホームでアルティーリ千葉と対戦し、オフェンス爆発によって96-87で勝ち切った。5連勝でレギュラーシーズンを締めくくったことで、東地区2位を確定させた。
第1クォーター、千葉Jは攻守の素早い切り替えからアウトナンバーの状況を次々と作り出し、イージーシュートの機会を量産。渡邊雄太が積極的なアタックにより、このクォーターだけで11得点を挙げる。さらにチーム全体で3ポイントシュートを確率良く沈める文句なしのオフェンスによって、34-24と先制パンチに成功する。
その後も千葉Jは前半終了間際の原修太のタフショット、第3クォーターでの金近廉の連続得点などによって、A千葉のビッグランを防いで試合の主導権を握り続ける。第4クォーター、現役ラストゲームである大塚裕土の奮闘など、このクォーターだけで5本の長距離砲を沈めたA千葉の粘りによって残り1分で4点差に詰め寄られたが、直後のポゼッションでディー・ジェイ・ホグがダメ押しの3ポイントシュートを決めて激闘に終止符を打った。
4月1日、千葉Jはシーホース三河とのホームゲームでシーズンワーストと言ってもおかしくない内容で75-89の完敗を喫した。続く4日の広島ドラゴンフライズ戦にも競り負け、チャンピオンシップ出場も危うい状況だった。しかし、翌5日の広島戦からここ12試合で10勝と上昇気流に乗ってチャンピオンシップに挑む。
このどん底状態からのV字回復に大きく貢献している1人が田代直希だ。千葉Jの好成績は田代が先発に定着した5日の試合から始まっているが、これは偶然の一致ではない。彼が先発に入ることで、出だしから守備の強度を高めることに成功。今や守備のトーンセットに欠かせない存在となっている。今日の試合、田代は14分半の出場でシュートアテンプトもなく0得点1リバウンド1アシストに終わったが、出場時間の得失点はチームトップの+18。スタッツに出ない部分でも貢献が光る彼らしいプレーぶりだった。
文字通り縁の下の力持ちとしてチームを支える田代は、チーム状況が好転した理由をこう語る。「本当に良くない時期があって、チャンピオンシップ出場も怪しいところまでいきました。この状況への危機感が(取り組みを変えることへの)背中を押してくれたと思います。そこから選手、スタッフ間でのコミュニケーションが増えました。各自でもっとこういうプレーをした方がいいなど、話し合うことでチームのケミストリーを高めることができたのが良かったと思います」
「また、何よりも分かりやすくオフェンスのペースが上がっていることで好循環が生まれています。特に原、(渡邊)雄太とトランジションのところをかなり意識してくれていて、それが良い結果に繋がっていると思います」

「この10年間Bリーグでプレーしてきて最高に楽しかった」
今シーズンがチーム2年目の田代だが、プレータイムなど数字の面では昨シーズンと変化はない。だが、存在感は確実に増している印象を受ける。田代は次のように自分の立ち位置を語る。「基本的に求められている役割は昨シーズンから変わっていないと思っています。エナジーを持ってプレーし、ディフェンスで激しくプレッシャーをかけることで、チームに良い循環を生み出してほしいとコーチから言われています。そういったところでの責任感は増したと思います」
この取材は、群馬クレインサンダーズと仙台89ERSのオーバータイムの最中に行われた。千葉Jのチャンピオンシップクォーターファイナルの対戦相手は、群馬が勝てば群馬で、負ければ琉球ゴールデンキングス。残り11秒で仙台が4点をリードした時、田代は大学卒業から8シーズンにわたって在籍した古巣との対決を覚悟していた。だが、ここから群馬が驚異的な追い上げを見せ、最終的には1点差で劇的勝利を収めた。
「もちろん群馬さんは全く気の抜けない相手です」と、田代は群馬を強敵とリスペクトしている。それでも彼にとって琉球は他のチームにはない特別な感情を抱く相手。だからこそ、古巣との対戦がなくなったことに「安心しました」と率直な気持ちが漏れた。「琉球の(チャンピオンシップでの)強さを自分は分かっています。極力、最後まで琉球とは当たりたくないと思っています」
Bリーグ1年目からプロキャリアが始まった田代にとって、10年目で迎えるチャンピオンシップは大きな節目となる。「僕のバスケットキャリアはBリーグの歴史と同じ長さで、幸いにも琉球と千葉Jで毎年CSに出場させてもらっています。そういった意味でリーグの先頭を走ってこられたことに感謝をしています。そしてBリーグのすさまじい成長を肌で感じてきて、この10年間Bリーグでプレーしてきて最高に楽しかったです」
このようにキャリアの歩みを振り返った田代だが、この10年を最高の形で終えるにはリーグ優勝が欠かせない。「足がつるまで走り切ろうと思っています」と言い、激しいディフェンスで千葉Jを支える覚悟を持ってチャンピオンシップのコートに立つ。
