男子日本代表

ラマス体制の結果を受けて、ホーバスは『独自性』を追い求める

トム・ホーバスの男子日本代表ヘッドコーチとしての初陣となったワールドカップ予選のWindow1は、中国を相手に63-79、73-106の連敗に終わった。新しいコンセプトを浸透させるには圧倒的に準備期間が足りず、対戦相手はアジアの盟主である中国。さらに海外組が不在でタレント力でも劣っていた。

このような背景を考慮すると、2敗という結果も致し方ない面はある。しかし、2日続けて出だしで大きくつまずき、第1クォーターで大量リードを許して追いかける展開になるなど、反省点は多々あった。

今回の代表は、フリオ・ラマス体制の4年間では構想に入らなかった選手が数多くメンバー入りするフレッシュな陣容となった。言うまでもなく国際試合はBリーグとは違う独特の雰囲気を持っている。今回、ポイントガードを6名招集し、1試合目と2試合目で3名ずつ起用した理由を「代表の大舞台でどれだけできるのかは実際に使ってみないと分からない」とホーバスは明かしている。だからこそ、ワールドカップや東京オリンピックといった大舞台を経験しているメンバーをスタートに起用し、大事な試合の入りを託したが、結果は厳しいものとなった。

初戦は、第2クォーター以降のスコアは同点であり、翌日の巻き返しに少なからず期待を抱かせる終わり方だった。試合後のホーバスもリベンジへの手応えを語っていた。「いろいろと直せるところはあります。明日もうちょっとレベルアップできたら絶対にチャンスがあると思います」

しかし、その期待は翌日の開始10分で無残に打ち砕かれた。指揮官は「びっくりしました」と失望感を露わにした。それと同時に、不用意なミスで相手に流れを渡す元凶となったベンドラメ礼生と比江島慎の先発ガードコンビをすぐに下げる厳しさを見せた。オリンピック経験者にも容赦のない起用法は、これまでの実績に基づいた序列がないことを示す姿勢の表れだった。

西田優大

高評価を得た寺嶋良、齋藤拓実、西田優大の共通点は『積極的なドライブ』

この2試合で評価を高めたのは、寺嶋良、齋藤拓実、西田優大とフル代表デビューを果たした新鋭たちだ。彼らに共通していたのは、ゴール下への積極的なドライブで相手ディフェンスを切り崩せていたこと。スピードを重視して積極的に3ポイントシュートを打つ『スモールバスケットボール』を標榜するホーバスのスタイルだが、長距離砲の確率を高めていくにはペイント内に切り込むことで相手のディフェンスを収縮させてからキックアウトする展開に持ち込む必要があり、この3名はその仕事ができていた。

ホーバスの基本戦術は、5人が揃ってアウトサイドに開く5メンアウトで、ピック&ロールを基本戦術とするBリーグのチームとは大きく違う。そこに多くの選手が対応できていなかった。実際問題として、代表チームでBリーグの外国籍のようにピック&ロールのスクリーン役からのダイブ、またはポップをこなせるビッグマンを複数揃えることは困難だ。そしてBリーグのトレンドと同じ戦術で、アジアを勝ち抜けても世界では通用しなかったことは2019年のワールドカップ、東京オリンピックが実証しており、ホーバスが独自性を追求するのは理にかなっている。

今回の2試合でも、相手にスイッチを強いてガードが相手ビッグマンと対峙し、スピードのミスマッチを生かせる状況は作り出せていた。ただ、そこでガードが抜いたところで、他の選手が上手く連動できず相手のヘルプで防がれたシーンも多かった。この連携については経験を重ねていくしかない。それでも現時点で、新しい代表のスタイルにフィットするためにどんなプレーが求められ、何をすれば指揮官の信頼を得られのかを知ることはできた。

次回のWindow2は来年2月25日にチャイニーズタイペイ、27日にオーストラリアと、それぞれアウェーで対戦する予定。6月30日にチャイニーズタイペイ、7月3日にオーストラリアとホームで対戦するWindow3ではNBA組、またネブラスカ大の富永啓生といった『海外組』が参戦する可能性もあるが、Window2は引き続き国内組のみで戦わざるを得ない。

このWindow2に関して、ホーバスは「多分、2月の合宿では24人は呼ばない」と今回のパフォーマンスを経て人数の絞り込みを行う意向を示した。ショットブロッカーとして非凡な才能を見せている期待のビッグマン、渡邉飛勇の復帰も期待されるが、果たしてどんなメンバーで挑むのか。開催国枠での出場が決まっているとはいえ、国内組で4連敗を喫しては前回の予選から進歩がないことになる。日本バスケの進歩を示すためにも、Window2では結果を求めたい。そのためにホーバスがどんなメンバーを選択するのが興味は尽きない。メンバーが硬直化していたラマス時代と違い、そこに様々な可能性があるところは一つポシティブな面ととらえたい。