「日本人選手のターンオーバーは言い訳にならない部分」
秋田ノーザンハピネッツは開幕節で連勝する最高のスタートを切ったが、その後はセンターのコルトン・アイバーソンやポイントガードの伊藤駿のケガが相次ぎ、現在は5勝7敗と黒星が先行している。
11月10日のアルバルク東京戦は前田顕蔵ヘッドコーチが「東京を倒せば自信を得られる、チームとしてまとまりを得られるので大事な試合」と位置付けていた。しかし、最終クォーターの大事な場面でリーグワースト4位と課題のターンオーバーを連発し、0-11と一気に走られたことで73-88で敗れた。
秋田はカディーム・コールビーと契約を継続したが、彼は今年2月に負った両膝膝蓋骨骨折のリハビリのため、開幕からずっとインジュアリーリスト入りしている。そして前述の通り、ケガ人が相次いだことでさらに苦しい台所事情となり、こうした状況に前田ヘッドコーチも頭を抱えている。
「天皇杯を入れて14試合をやって、全員が揃ったのは2試合だけ。そんなチームは他にありません。疲労を抜かないことにはどうにもならないですし、試合を通してマネジメントしないといけない部分も大きいので練習もできません。選手たちの身体が動く状態に持っていきつつ、チームの質を上げられるか。その中で勝ちを積み上げる難しさも感じていて、非常にしんどいシーズンです」
特に外国籍選手のレベルが年々上がっている今、インサイドの弱体化は致命的だ。彼らの負担を減らすためにゾーンを併用するなど、もちろんできる限りの策は講じている。だが、いくら戦術のテコ入れを行ったとしても、個人的なミスが多発すれば勝ちは遠のいてしまう。A東京戦でのターンオーバーの連発がそれに当たり、だからこそ前田ヘッドコーチもその点を指摘する。
「外国籍選手のところはしんどいですが、日本人選手のターンオーバーは言い訳にならない部分だと思っています。ケアレスなファウルだったり、判断のミスなどもったいない点が多く、失点に繋がるターンオーバーが多かったので非常に痛かったです」
また、若手選手の安定しないパフォーマンスも悩みの種だ。それぞれの選手が武器と言える強みを有するが、それと同時に長く起用できない事情も抱えており、前田ヘッドコーチは「サイコロを振って、今日はこの選手が当たっているなという状況」と形容した。
「去年からそうですが、非常に波がある選手たちが多い。今日で言ったら大浦(颯太)選手は完全にフィジカルで負けてしまい、スクリーンに引っかかり、押されてターンオーバーになってしまう。多田(武史)選手はシュートが良いけど、ディフェンスのところで課題があり、様子を見ながら使っていた。保岡(龍斗)選手はシュートセレクションが非常に課題で、判断力を高めないといけない。悪ければ出ない、良ければ出るというシンプルなところで競争してもらっています」
「ヘッドコーチからの信頼度がまだまだ足りていない」
名前の挙がった保岡は、A東京戦の第2クォーターに10得点の荒稼ぎを見せ、最大15点あったビハインドを覆す立役者となった。厳しい発言が目立った前田ヘッドコーチだが、「保岡が良かった時間帯は間違いなくチームにとってプラスだと思います。オフェンスもですけど、身体が強いのでディフェンスでもかなり良い仕事をしてくれた」と、高評価を与えていた。
保岡はこれまでと違い、今シーズンからスラッシャーの役割を与えられた。3×3仕込みのスピーディーかつフィジカルなドライブを期待されての役割の変更だ。だが、頭で分かっていてもそれをコートで体現するのは容易ではなく、保岡もこのスタイルの変化に適応できていないという。
「中に切り込んでほしいと、ドライブをしてくれと言われてシーズンが始まりました。ヤスのリズムだったら打っていいよと言われているんですけど、打てるタイミングで打たずに切り込んでしまう場面が今でもあります。中に行こうとするのが前面に出すぎてしまい、打てばいいのに中に切り込んでしまう。それがオフシーズンから積み上げてきたものだったので、そこはアジャストしていかないといけないです」
まさに前田ヘッドコーチが指摘したシュートセレクションの部分で保岡は苦しんでいた。その結果、先発の機会、プレータイムともに減少し、数字も伸び悩む負のスパイラルに陥っている。保岡は言う。「自分のオフェンスの持ち味もまだ出せていなくて、それがディフェンスに影響が出てプレータイムも減っていっている感じです。ヘッドコーチからの信頼度がまだまだ足りていないと思うので、徐々に積み重ねてやっていきたい」
シュートセレクションや判断力が劇的に改善される特効薬は存在せず、それは日々の練習や試合で培っていくしかない。タフなスケジュールで練習ができないこともこの苦境を悪化させているが、生みの苦しみを乗り越えた先には栄光が待っている。
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