今夏、赤穂ひまわりは世界屈指のオールラウンダーとして大きな飛躍を遂げた。東京オリンピックではチームトップのリバウンド数、2番目に長い出場時間を記録し、銀メダル獲得に大きく貢献。アジアカップでは大黒柱として日本代表を5連覇へと導き、大会MVPを受賞した。2022年ワールドカップ、2023年パリオリンピックでも代表の中心として活躍が期待される逸材に、大会の振り返り、いよいよ始まるWリーグへの意気込みを聞いた。
「バスケットボールをもっと広めたいという気持ちが強かった」
――まず、アジアカップ優勝おめでとうございます。あらためてどんな大会でしたか。
優勝はうれしいですが、考えれば考えるほど本当に大変だったと思います。やっぱりオリンピックですごく注目されて、誰が見てもバスケ熱がすごくなっている中での大会でした。若くて、経験値も少ないチームでも結果を出さないといけない。そこへのプレッシャーを勝手に感じてしまい、それが自分の中ではすごく大変でした。
──プレッシャーを感じる中でチームは優勝し、大会MVPも受賞しました。「やってやったぞ!」みたいな高揚感はありましたか。
そういった思いよりも、勝てて良かった、優勝できて良かったという気持ちが大きいです。
――オリンピックでも主力選手であり、アジアカップはチームの大黒柱という意識で臨んだ部分はありましたか。そこで結果を出せたことへの満足感はありますか。
中心としての自覚を持たなければいけない、と思って臨んだ大会でした。そのせいでプレッシャーを感じたところはありますが、自分が引っ張っていく気持ちでプレーするべきと考えていました。
結果に対しては良かったなとは思いますが、良いバスケットができたかと言われるとそうではないです。まとめることはそんなに得意ではないですが、チームをもっと良い方向に導くことはできたと思います。個人として良いプレーもありましたけど、悪いプレーもあって決勝戦は全然良くなかったです。そういった部分で満足はしていないです。
──東京オリンピックから休みなくアジアカップと心身ともにキツかったと思います。それでも出場を決めたのはなぜですか。
大会ごとに気持ちを作っていくので、オリンピックが終わって一回切れたものを、またアジアカップに向けて短い間で作っていくのは大変でした。最初は休もうかなとも考えましたが、オリンピックですごく注目されている中で結果を残したい、バスケットボールをもっと広めたいという気持ちが強かったので、最終的にアジアカップへの出場も決めました。
「経験はお金で買えないので、この経験値を絶対に次に繋げていかないといけない」
──アジアカップでは最後まで接戦のタフな試合が続きました。そこを勝ちきれた要因や意識していたことはどんなところですか?
前半に良いバスケットができていなかったですが、後半になっても足を止めずに走り続けたことで粘り勝ちできたと思います。後半はどの試合も良かったので、オリンピックと違うメンバーでも後半の強さは変わらないと感じました。
──アジアカップでは同世代の選手が多かったです。赤穂選手はその中で誰よりも経験を積んでいるので、引っ張っていかなければいけないと意識はしていましたか。
みんなすごく能力は高いですし、身体能力もポテンシャルもすごいものを持っている世代です。みんな得点を取れますが、それ以外のプラスアルファを自分が補おうと意識していて、ちょっとはそれができたのかなと思います。オフコートの部分で自分が引っ張ろうとは思っていなかったですが、バスケット面ではここで相手に持っていかれたらいけないと感じる場面は、自分でやろうという意識はありました。そういう状況はしっかり判断できるようにしたいと思っていました。
東京オリンピックでは年齢も下で先輩たちについていく、好きなことをやらせてもらえるようなすごくやりやすい環境でした。それがアジアカップでは代表経験ではメンバーの中で一番あって、オリンピックの時とは180度くらい変わる状況で周囲を牽引していく必要がありました。今まで経験したことのない立場でプレーできたのは良い経験で、プラスになりました。
──この夏の経験を経て赤穂選手が成長できた、課題として感じたのはどんな部分ですか。
2つの大会を経て自信が少しはつきました。経験はお金で買えないので、この経験値を絶対に次に繋げていかないといけないなと思います。通用したプレーがしっかり分かったところも自信に繋がりました。課題はもっと自分でやるぞっていう意識を持たないといけないこと。状況に応じて、時にはちょっとわがままなくらいのプレーをすることです。
――いよいよWリーグが開幕します。デンソーは毎年、上位進出を果たしていますがタイトルにはあと一歩で届かない状況が続いています。
毎年、日本一を目標にやっているので今年こそはと言っていますが、本当に今年こそは優勝したいです。
──アジアカップから帰国後の隔離期間中、どのように過ごしていましたか。
オリンピックからずっと走り続けてきた感じだったので、この隔離で逆に落ち着けました。自分的にはリーグに向けて身体を作りながらもメンタル的には休めるなど、穏やかに過ごせました。
「やっぱりリツさんに任せっぱなしはダメだと思います」
──マリーナ・マルコヴィッチHC体制も今シーズンで2年目となることへの手応えはありますか。
マリーナHCが求めているバスケットを100%できれば絶対に勝てますし、優勝できると思います。選手たちが彼女の言っていることをどれだけ正確に表現できるかが大事になります。それにプラスアルファで選手自身もしっかり考えてプレーすることが重要です。
──東京オリンピックでは、マリーナHCが率いていたセルビア代表は気になっていましたか。
結構、結果は気になっていました。セルビアと戦えたらいいなと思っていましたが、それよりもセルビアに負けたくないなって気持ちはありました。
──髙田真希選手と一緒に2大エースとして、デンソーを引っ張っていきたいと意識しますか。
やっぱりリツさん(髙田選手)に任せっぱなしはダメだと思います。苦しい時にリツさん頼みになるのはデンソーの悪い部分であって、そこは直していかなければいけない。そういう時に自分がしっかりできるように頑張りたいです。もともと、ヘッドコーチからは「もっとリーダーシップ取ってほしい」と昨シーズンから言われています。昨シーズンは、その部分をやりきれなかったので、今シーズンはもっとリーダーシップを取って昨シーズンよりも成長したいと思います。
──今シーズンは個人的にどんなテーマを持ってプレーしていきますか。
チームが求めていることは何でもやって、その上でどんなプレーでもトップレベルでできるように頑張りたいと思います。それに加え、もっと自分で行こうという気持ちを強く持つことです。
──最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。
オリンピックが終わってバスケットがすごく注目されていることが伝わる中、アジアカップでも5連覇することができました。今、バスケットが本当にが盛り上がっている状態でのWリーグ開幕で、ファンの皆様に楽しんで見てもらえるようなプレーをしたいと思います。これからも応援をよろしくお願いいたします。