「簡単なファウルは絶対にしてはいけない時間帯だった」
10月2日、宇都宮ブレックスはホームに群馬クレインサンダーズを迎えたBリーグ開幕戦を、延長の末に69-75で落とした。
第3クォーターには群馬が得意とするアーリーオフェンスを封じ、ハーフコートバスケットに仕向けたことで失点を抑えると、その間に10-0と走って最大で11点のリードを奪った。しかし、ゲームハイの28得点を許したトレイ・ジョーンズのアタックを止められず、217cmの高さを誇るオンドレイ・バルヴィンへの対応に手を焼き、次第に追いつかれていった。
それでも、第4クォーター残り53秒に鵤誠司がリードを4点に広げるミドルシュートを沈めた宇都宮の方が間違いなく優勢だった。だがこの直後、遠藤祐亮が痛恨のミスを犯してしまう。遠藤はボールをプッシュするジョーンズをファウルで止めた。すでにチームファウルは5に達し、すべてのファウルがフリースローになる状況。時間が止まった状態で加点できるフリースローは、その時最も与えてはいけない選択肢だった。
遠藤も「簡単なファウルは絶対にしてはいけない時間帯だった」とそのシーンを悔やんだ。「自分たちがスコアした後の局面で、ファウルがこんでる中で冷静に対処できていればフリースローはなかったと思う。ブレックスはチームディフェンスを持ち味としてるチームなので、仲間を信頼しながらやっていましたけど、あの局面は冷静じゃなかった」
このプレーには、安齋竜三ヘッドコーチも下を向くしかなかった。そして、試合後には「10点くらいリードしてから自分たちが我慢し切れなくなって、延長まで行くパターンに繋がってしまった。ファウルをする前にしっかり陣形を取る、その遅さがファウルでフリースローに繋げられてしまった。この試合を通してある程度できていた部分がそこで崩れてしまったのが残念だった」と語り、そのシーンが敗因になったことを暗に示した。
同点とされた後、宇都宮はラストショットを比江島慎に託したが、バルヴィンのブロックショットに遭い、延長戦に持ち込まれた。結果的に40分間で試合を決められなかったことがこの敗戦を生んだ。
個人のパフォーマンスは上々も「結果が残せなかった」
遠藤が悔やむのも無理はないが、個人のパフォーマンスは決して悪くなかった。チーム最長となる33分49秒もの間コートに立ち、3本の3ポイントシュート成功を含む15得点を記録し、4アシスト2スティールとマルチに活躍した。
それでも遠藤は「大事な局面で自分は決めたい。前半が良かった分、最後に任された部分があったんですけど、そこで結果が残せなかった」と悪い面ばかりに目を向けた。それは自身への戒めであるとともに、チームを背負う強い覚悟の表れでもある。特に今シーズンの宇都宮はライアン・ロシターとジェフ・ギブスがチームを去ったことで、インサイドの弱体化が懸念される。こうしたネガティブなノイズを消し去るには、勝利が一番効果的だからだ。
チームに残り、大黒柱として期待されるジョシュ・スコットは11得点16リバウンドと気を吐いたが、高さを誇る群馬のインサイド陣を前にフィールドゴール成功率は11本中4本成功の36.4%と高くなかった。遠藤はそんなスコットを擁護した。「ジョーンズ選手はファウルのもらい方が上手です。マッチアップする選手が無理し過ぎず、ジョシュにスイッチして任せることで、ファウルをせずに守り切れていた場面もありました。ジョシュも試行錯誤してアタックしていましたが、そこでノーマークを作れずにアタックさせられなかったのはガードの責任もあるんじゃないかと思う」
新戦力のチェイス・フィーラーがファウルトラブルに陥り、要所で良いプレーを見せていた竹内公輔が指を痛めてベンチに下がる不運もあった。最後まで積極性を貫くも、比江島はフィールドゴール10本中わずか1本成功の4得点に終わった。ネガティブな要素が多々ありながらも接戦だったのは、宇都宮に地力があることを意味する。時期尚早なのは承知だが、この敗戦は宇都宮をさらに強くする劇薬となるかもしれない。まずはその効果が今日の第2戦でどんな形で現れるのかに注目したい。