マイケル・ポーターJr.

オンボールのプレーは苦手だが、そこもまた伸びしろの『未完の大器』

『MPJ』ことマイケル・ポーターJr.が、ナゲッツと5年のマックス契約を結ぶと報道されました。19.0得点、フィールドゴール成功率54%、3ポイントシュート成功率44.5%と非凡な得点力を遺憾なく発揮したとはいえ、フルシーズン働いたのは初めてのことで、ナゲッツが大型契約を締結したのは驚きでもありました。大学時代に苦しんだ腰のヘルニアは、ドラフト時に他のチームが指名を見送るほど深刻な問題でしたが、ナゲッツはその再発リスクが低いと考え、何よりもMPJの可能性を信じたということで、5年契約を提示したのでしょう。

すでにニコラ・ヨキッチとジャマール・マレーの2人とマックス契約を結んでいるナゲッツにとって、MPJとの高すぎる契約はロールプレイヤーの補強を難しくするため、『ビッグ3』として機能しなければチームが崩壊してしまう危険性もあります。どんなに優秀な選手を揃えても、一つしかないボールを取り合うことになればチームは機能しません。

しかし、MPJに限ってはそんな心配は無用です。

近年のNBAでは従来の5つのポジションではなく、『ハンドラー』、『ウイング』、『ビッグ』という3つで表現されるようになってきました。選手のオールラウンダー化が進んだことでポジション別に分類する意味がなくなり、またエースが長くボールを持って仕掛けるオフェンス戦術が中心になってきました。そんな中でカワイ・レナード、ポール・ジョージ、ケビン・デュラントなど、従来はフォワードとして扱われていた選手も『ハンドラー』としてプレーしており、ボールを持つ時間が短い『ウイング』がエースになるのは難しい時代でもあります。

しかし、昨シーズンのMPJは19得点を奪いながら、1試合当たりわずか1.5分しかボールを持ちませんでした。これは13.8得点の八村塁、11.5得点のユスフ・ヌルキッチらのビッグマンほどの短さで、MPJが少ないボールタッチで効果的に得点していることを示しています。ヨキッチやマレーが長くボールを持つことになるナゲッツで、ボールを持たなくてもハイスコアを叩き出すことのできるMPJは、現代オフェンスにおいて『理想的なウイング』といえます。

MPJ最大の武器はデュラントにも例えられる高精度のジャンプシュートで、208cmの高さから放たれるためブロックすることが極めて難しく、タフショットになっても関係なく決めてきます。6.2本打った3ポイントシュートのうち2.1本がタフショットでしたが、それでもトータルで44.5%を成功させており、リーグトップクラスのシューターと言えます。

アウトサイドから打ち抜くだけでなく、ディフェンスの穴を見つけてのカッティングも得意とし、6割以上が『ドリブルなしでのシュート』となるなど、オフボールムーブの巧みさで、ヨキッチのパス能力をさらに際立たせています。そして平均1.3回のダンクに7.3リバウンドと、インサイドを高さで攻略すれば、マイボールになった瞬間の走り出しの速さで、速攻でチームトップの3.1得点を叩き出すスピードも見せており、MPJはウイングがオフェンスで求められるすべての仕事をハイレベルでこなしています。

まだ23歳ながら『オフボールの達人』とすら呼びたくなるMPJの得点能力は、ヨキッチやマレーに注目が集まれば集まるほど輝きを増します。しかし、そのマレーはシーズンの大半を欠場する見込みとなっており、MPJはこれからハンドラ―としてのプレーを増やしていく必要がありますが、ドライブでの得点が1.5得点しかなく、スクリーンを利用したピック&ロールも0.8得点と自分がボールを持って仕掛けるプレーは苦手としています。

プレーオフではボールを持った瞬間にシュートに行くパターンをサンズに読み切られ、それがスウィープ負けの要因にもなっただけに、これまで通りオフボールでシュートチャンスを作りながら、ディフェンスの対応次第で選択肢を変更できる選手へ進化しなければいけません。

見事なオフボールでチーム戦術にフィットしていても、ナゲッツの優勝のために、そしてMPJ個人としても高額契約に見合う価値を示すため、次のステップに進む時が来ました。インサイドでもアウトサイドでも高確率でシュートを決めているMPJですが、欠点も多い選手です。現時点で理想的なウイングでありながら、まだまだ進化する可能性を秘めた『未完の大器』と呼べる稀有な存在です。