「海外組のマークが散らばるような活躍が必要になる」
バスケットボール男子日本代表は八村塁と渡邊雄太という現役NBA選手がロスターに名を連ねたことで、過去最強チームとの呼び声が高い。それでも、世界の強豪しか出場できないオリンピックにおいて、世界ランキング42位の日本のパワーランキングは出場12カ国中11位と評価は高くない。
NBAプレーヤーである八村や渡邊のマークは厳しくなることは当然予想される。そうなった時に、他の選手が個で打開できるかどうかが日本の一つのカギとなる。その役割を最も期待されるのが比江島慎だ。独特なリズムから繰り出される緩急自在のドライブは彼の一番の武器であり、自身も胸を張る。
「持ち味であるドライブや1対1は自分の長所として分かっていたので、磨いてきたつもりです。ドライブや得点能力が評価されてメンバーに入れてもらえたと思うので自信を持ってやる。世界のレベルでもやれることを証明したいです」
しかし、2年前に5連敗を喫したワールドカップでは、八村やニック・ファジーカスなどのスコアラーに頼ってはいけないことを自覚しながらも、パスを選択し自身の長所を出すことができなかった。それを忘れない比江島は、同じ轍を踏まないことを約束する。
「海外組が中心のバスケになるのは間違いないので、その中で持ち味を出さないといけない。僕やペリメーターの選手が塁ばっかりを探してパスを出すとワールドカップと同じ結果になってしまいます。海外組のマークが厳しくなるのは当たり前で、そこで自分がアグレッシブに行くことで、海外組のマークが散らばるような活躍が必要になる」
「今までやってきたことは間違いじゃなかったと証明できる」
比江島は長らく日本の中心選手としてプレーしてきており、今回のメンバーの中では代表経験が豊富な部類に入る。だからこそ、これまで日本が痛感してきた世界との差を最も身近で感じてきた。しかし、それと同時にその距離が確実に縮まってきたことも実感している。
「リオオリンピックの予選で世界に手が届くところまで来たと感じることができました。ただ、それと同時に世界との差も感じました。世界の舞台で活躍するために海外挑戦をしたり、オリンピックで活躍するためにワールドカップの経験が必要でした。その経験をこの夢の舞台で出し切るだけだと思います。そこで納得できるプレーができれば、今までやってきたことは間違いじゃなかったと証明できると思います」
大きな期待を背負ってきた比江島は大事な試合で納得のいくプレーができないことも多く、「もっとアグレッシブに行けば良かった」と後悔の言葉を口にしてきた。それでも、フランスから大金星を挙げた最後の強化試合では、積極的な姿勢を最後まで貫いてタフショットを次々と沈め、八村と渡邊に次ぐ15得点を挙げて勝利の立役者となった。どんな結果になろうと、比江島自身が自らの理想とするプレーを貫くことができれば、日本の勝利は近づくはずだ。もう後悔はいらない。