内海知秀ヘッドコーチが振り返るリオ五輪vol.3「激闘レビュー:ベラルーシ、ブラジル、トルコ」

2016/09/16
日本代表
266

取材・文=三上太 写真=野口岳彦、Getty Images

長期間にわたる国内外の合宿や強化試合を経て、「この選手がこういう力を出したら、日本は強い」という確信を得た『AKATSUKI FIVE』の内海知秀ヘッドコーチ。リオ五輪の予選ラウンドを3勝2敗の4位で通過すると、決勝トーナメントの初戦はバスケ大国、アメリカとの対戦となった。ここからは現地8月6日のベラルーシ戦に始まり、同月16日のアメリカ戦までの激闘の11日間を振り返ってもらおう。

PROFILE 内海知秀(うつみ・ともひで)
1958年12月7日生まれ、青森県出身。能代工、日本体育大を経て、日本鉱業で活躍。引退後の1988年に札幌大で指導者としてのキャリアをスタートさせた。2003年、JXでの手腕を評価され女子日本代表監督に就任し、アテネ五輪を戦う。JX-ENEOSを経て2012年に日本代表監督に復帰。4年がかりで強化したチームを率いてリオ五輪を戦い、ベスト8進出を果たした。

ここで欲しいという時の3ポイントシュートが来ていた

──1試合ずつ振り返りたいと思います。ベラルーシ戦は、今回の6試合で唯一走るバスケットができなかった。それでも4点差の勝利(77-73)を得られたのは何が一番大きかったんでしょう?

内海 確かに走るバスケットではできなかったかもしれないけど、それでも慌てず、我慢強くプレーできたことが勝因です。ベラルーシとは5月末に行なわれた遠征で練習試合をしたのですが、その時は渡嘉敷がいなかったんです。相手もポイントガードのWNBA選手(リンゼー・ハーディング)がいなかったけど、それでも良い勝負をして、相手の特徴を知ることができた。それもリオ五輪での勝因の一つです。だから我慢していればいけるなという感触はありました。しかも77得点でしょう? 当初目標にしていた76得点以上を、走れなかったゲームでさえクリアできていたので、幸先は良かったですよね。

──女子に限らず、日本は大会初戦の入りがうまくない印象があります。

内海 うまくないというか、こちらとしては当然うまく入っていこうとしているんだけど、やはり初戦は相当気を使います。

──その気の使いようが重たい展開になってしまった。

内海 例えばいつもなら成功しているプレーでシュートが入らなかったり、ミスになったり……そういう部分はあったのかもしれません。でも五輪の直前にブラジルやアルゼンチンでゲームをやっていたことも初戦の入り方に良い影響を与えたと思います。

──直前合宿の何が良かったのでしょう?

内海 ゲーム勘ですね。直前の南米合宿でのゲーム勘をそのまま五輪に持って入ることができました。試合そのものは負けましたけど……アルゼンチンには勝ちましたけど、ブラジルにはボロボロに負けちゃったんです。でもそのゲーム勘をしっかりと付けていきながら、そのまま五輪に入ったのは、いくら初戦が緊張するものでも、すごく良いことでした。

──ベラルーシ戦では栗原が3ポイントを6/10の確率(60%)で決めました。近藤楓と長岡萌映子も1本ずつ決めて全部8本です。

内海 毎試合3ポイントシュートを7本から8本決めることが、リオ五輪での一つの目標でした。これを決めることによって大きい流れになったのは間違いありません。特に良い流れにつながる3ポイントシュートを決められたことは、今大会を通して良かった点だと言えます。敗戦濃厚なゲームで打った3ポイントシュートが決まることって、バスケットではよくありますよね。そうではなくて、ここで欲しいという時の3ポイントシュートが来ていたのは大きかったです。

突き離せたのはトランジションの力

──ブラジルは大会前の練習ゲームではボロボロに負けて、さらに2年前の世界選手権でも、勝てば決勝トーナメントに行けるという大事なゲームで負けています。そんな因縁の相手に対して82-66と完勝しました。

内海 第1ピリオドの出だしはブラジルも体力があったので、1点差で終わりました。でも第2ピリオドで突き離せたのはトランジションの力です。第2ピリオドに入るとブラジルがバテてきてると感じましたし、ベテランセンターのエリカ・ソウザが休んでいた中で、ゲームの主導権を握れました。

──ベラルーシ戦から1日空けて、もう一度走ることを修正したのですか?

内海 修正というより、選手たちには「今まで積み重ねてきたものを出していかないといけないよ」と伝えました。あとはディフェンスが良かったこともトランジションバスケットにつながりました。毎試合それぞれの相手に対してアジャスト(対策)をするわけですが、ブラジル戦はアジャストがうまくはまって、ディフェンスが非常に良かった。それで相手のリズムを狂わせることができたんです。

──次はトルコ戦です。この試合は最後まで勢いに乗れず、62-76で敗れました。

内海 最初に入れるべきシュートを入れられなかったことが悔やまれます。走っていないわけではないんだけど、決めるべきシュートを決められていなかった。それとトルコのシュートの確率が非常に良かったんです。最終的に見ても一人の選手(ララ・サンダース)に36点入れられているんですよね。そこを抑えられなかったし、アジャストしきれなかったところも非常に痛かったです。

──ここだけ唯一、連日のゲームでした。

内海 それもあります。やっぱり身長の小さいチームは走らないといけないので、1日空くと空かないとでは体力的にも全然違います。それも要因として一つあるかな。

──スタミナの問題は今後の課題と言えますか?

内海 そうですね。今考えるとトルコ戦も前もって準備をしておけばよかったのかもしれません。でもまずは最初の2ゲームに勝つことだと思っていたので、疎かにしていたわけではないけれども、少し対策が足りなかったのかなという反省はあります。

内海知秀ヘッドコーチが振り返るリオ五輪vol.3「激闘レビュー:ベラルーシ、ブラジル、トルコ」