「ナメられた」の感情がジャズの選手とファンにとって大きな発奮材料に
ジャズとクリッパーズの第1戦は、主導権が行ったり来たりするアップダウンの激しい戦いの末に、ホームのジャズが勝利した。
試合開始からジャズが10-2のランで先手を取ったかに見えたが、ここから全くシュートが入らなくなり、8分半で決まったのはフリースローによる2得点のみ。その間に22点を奪われて12-24と一気に引っくり返された。それでも後半開始からドノバン・ミッチェルがシュートを4本連続で決めてジャズに勢いを与え、79-79の同点に追い付いて最終クォーターを迎えた。
終盤まで接戦が続いたが、ビハインドを追い付いたジャズに勢いがあった。グリズリーズとのファーストラウンドでは1万3000人しか入場が認められなかったファンの数が、1万8000まで引き上げられて、応援に熱気が増したのも彼らを後押ししていた。この試合でベンチから出て18得点を挙げたジョーダン・クラークソンは、試合前の会見で「ホームアドバンテージがどれだけ意味のあるものか、クリッパーズに教えてやる」と語っていた。
クリッパーズがレギュラーシーズン終盤の試合を落としたのは意図的に見える。レイカーズと対戦するぐらいなら、カンファレンスセミファイナルで西1位のジャズと対戦することを選ぶ、という行為にも見えた。対戦を前にジャズファンの間ではその議論が白熱し、クラークソンはそれに乗った。「彼らが対戦相手を選びたいなら、それでいいさ。僕たちはシューズを履いてコートに立ち、自分たちのバスケットをぶつけるだけだ」
クリッパーズの指揮官タロン・ルーは、沸き立つ議論に少々当惑していた。「プレーオフに向けて全員のコンディションを整えるのがベストだと話し合った結果だ。第一、ジャズとの対戦を選んだわけじゃない。ファーストラウンドに勝たなければここまで来れないんだからね。彼らがこのシリーズに向けた発奮材料にしたいならそれでいいが、それは彼らの問題だ」
意図的だったかどうかは別にして、「クリッパーズは我々をやりやすい相手だとナメている」という考え方はジャズの選手たち、そしてファンにとって大きな発奮材料となった。気合いが空回りする時間帯はあったものの、ワンプレーに対する気持ち、ボールへの執着心は常に上回った。とりわけ目立ったのはロイス・オニールとボーヤン・ボグダノビッチが交互に付くことでカワイ・レナードを抑えたディフェンスだ。フィールドゴール19本中9本成功、23得点と『並み』以下の数字に抑えたことで、クリッパーズの爆発力を発揮させなかった。
一方でジャズのエース、ドノバン・ミッチェルは時間が進むごとに調子を上げていった。放ったシュートは実に30本、そのうち16本を決めて、3ポイントシュートは6本成功。45得点のうち32得点を後半に決めて、接戦でクリッパーズを突き放す立役者となった。
クリッパーズも最後まで粘りを見せたが、3点差の残り20秒で迎えたラストポゼッション、カワイもポール・ジョージもディフェンスを振り切ることができずにボールを手放すことを余儀なくされ、最後はマーカス・モリスが強引に3ポイントシュートを狙うも、ルディ・ゴベアに余裕十分のブロックで叩き落とされて万事休す。最終スコア112-109でジャズが先勝した。
もっとも、ジャズは中5日でのホームゲームだったのに対し、マーベリックスとGAME7までの激闘を終え、中1日でソルトレイクシティに乗り込んでおり、コンディションの有利不利があるのは明らかだった。タロン・ルーは先が長いことを見据えて11人ローテーションで選手の負担を軽減している。続く第2戦からが本当の勝負と、すでに意識を切り替えているはずだ。