ジェイソン・テイタム

控え目なことで「どこか物足りない」と思われる共通点

セルティックスはネッツとのプレーオフファーストラウンド初戦を落とした。前半はリードしたものの、後半に入ってすぐに逆転され、終盤に突き放されての93-104での敗戦。ケビン・デュラントが32得点、カイリー・アービングが29得点、ジェームズ・ハーデンが21得点と、ネッツが誇る『ビッグ3』がいかに強烈かを印象付ける試合だった。

セルティックスで彼らに並ぶ得点を挙げたのは、ジェイソン・テイタムの22得点のみ。ジェイレン・ブラウンはケガでプレーオフには出場できない。ケンバ・ウォーカーは膝に爆弾を抱えた状態でのプレーを続けており、カイリーとのマッチアップでプラスを作り出すのは厳しいだろう。テイタムもマッチアップする相手がデュラントだ。ネッツはチームとしてのディフェンスには難を抱えているものの、デュラントの読みと長い腕を生かしたディフェンスはリーグでも屈指で、そのマークをかわして得点を量産するのは至難の業だ。

テイタムはプレーイン・トーナメントのウィザーズ戦で50得点を記録し、チームをプレーオフに導いた。ウイングディフェンダーの質も量も乏しいウィザーズを相手に、テイタムは淡々とスコアを重ねた。この試合で22得点に留まったブラッドリー・ビールを始め、ステフ・カリーやデイミアン・リラードのようなリーグのトップスコアラーと比べると、テイタムは華やかさを欠く。観客を煽ったり相手選手をにらみ付けたり、コート上での自己主張をしないことで「どこか物足りない」との印象を持たれることも少なくない。それでもテイタムはチームオフェンスを理解し、ボールムーブの中で適切なポジションを取り、適切なプレー選択をすることで得点を重ねていく。

その姿に感銘を受けているのはデュラントだ。彼もまた若手だった頃には結果を出していても、淡々とプレーすることで「どこか物足りない」と言われ続けた。エネルギーの塊のようなラッセル・ウェストブルックと一緒にプレーするのでは無理もなかった。そのデュラントは9歳年下の、自分と似たタイプのテイタムを高く評価している。

「僕がJT(テイタム)について言いたいのは、ラインナップがどう変わっても彼のプレーは変わらないということだ。彼はコロナに感染したし、ブラウンは残り試合には出場できず、ケンバは出場できたりできなかったり。それでもJTは自分のやり方を変えない。周囲に左右されることなく成長している。そしてNBAのディフェンスを学んでいる。若いがすでに多くの経験を積んで、賢くなっている」

主力にケガ人が相次ぎ、攻守の遂行力も例年のレベルになくブラッド・スティーブンスの采配にもキレがない今のセルティックスが、ネッツとのシリーズに逆転で勝つのは難しいだろう。しかし、テイタムはデュラントとプレーオフでマッチアップすることでまた貴重な経験を積み、『ビッグ3』を擁するチームとの戦い方を学ぶ。

もともとスラッシャーとしての能力は高かったがパスの上手い選手ではなかったテイタムは、NBAキャリア4年でシーズンごとにアシスト数を伸ばしているが、ネッツとの初戦では5アシストを記録した。このプレーオフの中でも、まだまだあらゆる面で彼は成長できる。