ルカ・ドンチッチ

クリッパーズはプレースタイルでも選手層でも安定感を増す

クリッパーズvsマーベリックスは昨シーズンのファーストラウンドと同じ顔合わせで、お互いの成長が問われるシリーズになります。マブスで成長が求められるのはエースのルカ・ドンチッチのメンタル面ですが、キレやすさは全く改善しておらず、今シーズンはむしろ常にフラストレーションを抱えてプレーしているようにも見えます。

今回の対戦を考えると、マーカス・モリスがラフプレーで挑発してきた時に冷静に対処できそうにありません。ドンチッチとモリスが両者退場になれば損をするのはマブスで、メンタルコントロールはプレーオフではより重要になります。

スケジュールと健康安全プロトコルの関係でレフェリーの質が落ちている中で、ファウルコールは安定しなくなっていますが、ファウルを誘発するプレーを得意とするドンチッチがそれでリズムを崩し、クリッパーズではなくレフェリーと戦うようでは話になりません。特にプレーオフでディフェンスの激しさが増す中で、レフェリーの判断に委ねすぎると勝てない試合が増えてきます。

それはクリッパーズも同じで、昨シーズンまでは密集地帯に飛び込んでファウルを奪い取るアタックにより、リーグで最も多くのフリースローを打つオフェンスをしていたため、それがプレーオフに弱い一因になったのかもしれません。しかし今シーズンは一転して広いスペースへのパスアウトを徹底し、フリースローを減らしてワイドオープンを作ったことで、リーグ最高の3ポイントシュート成功率を誇っています。

昨シーズンはナゲッツとのカンファレンスセミファイナルで3勝1敗とリードしながら、急激にスタミナ切れを起こして逆転負けしたことでコーチ陣が刷新され、プレースタイルも明確に変わりました。カワイ・レナードとポール・ジョージの両エースがハイスコアで引っ張る形は変わらないものの、2人が欠場してもチーム力が大きく落ちることはなく、むしろ個人に頼らないためチームオフェンスが際立つようになってきました。プレースタイルでも選手層でも安定感を増し、クリッパーズのオフェンスは1年前とは全く違うものになっています。

一方のマブスは昨シーズンにクリッパーズのオフェンス力に対抗できなかったことから、ジョシュ・リチャードソンを獲得し、ドリアン・フィニー・スミスやティム・ハーダウェイJr.とともにディフェンス力を大きく改善させることを目指しました。しかし、個々のディフェンス力に反してチームディフェンスは改善せず、微妙な状況でプレーオフに臨みます。

3ポイントシュート成功率の高いクリッパーズに分厚いカバーを用意すれば、逆にワイドオープンが増える可能性があり、思い切って個人のディフェンスで勝負するほうが面白いかもしれません。レナードとジョージを止めるのは難しいものの、7試合のシリーズであることを考えれば、2人の個人技を増やすことでスタミナを削るような考え方もあります。直近の対戦でもレナードとジョージに48得点を奪われたものの、周囲に自由を与えなかったことで失点を89に抑えて勝利しています。

マブスのオフェンスではクリスタプス・ポルジンギスがどこまでプレーできるのかがキーになります。昨シーズンの対戦では3ポイントシュート成功率53%で平均23.7得点を奪っていましたが、ケガで途中離脱してしまいました。今シーズンも欠場が多く、パフォーマンスも安定しませんが、圧倒的な高さで放つアウトサイドシュートは対策が難しく、クリッパーズのディフェンスを乱すことができます。

総合力で上回るクリッパーズにとっては、シーズン通りのプレーを遂行するのが重要です。マブスはそれを局地的にでも乱すことでチャンスを探ることになります。逆にクリッパーズはドンチッチのメンタルを乱せば、マブス全体のリズムを狂わせることに。ハイレベルな戦術の攻防だけでなく、個人のメンタルの戦いでもあるプレーオフらしさを感じやすいシリーズになりそうです。