レギュラーシーズンを9連勝で締めて「やっと終わった(笑)」
千葉ジェッツは43勝14敗、東地区2位でチャンピオンシップに挑む。レギュラーシーズン終盤にコロナ禍に見舞われ、3月24日の試合から3週間が活動停止状態に。身動きが取れなくなった後、コンディションが整わないまま3連敗を喫した。それでもチームはそこから立ち直り、レギュラーシーズンを9連勝で締めくくるとともに、猛追する川崎をかわして地区2位を守り抜いた。
レギュラーシーズン最終戦となったサンロッカーズ渋谷戦を104-83と完勝したことで、弾みを付けることもできた。この試合で16得点を挙げて通算得点を1000に乗せた原修太は、勝利の喜び以上に「やっと終わった(笑)。正直、本当に疲れていて、やっと少し休めます」と安堵の表情を見せた。
原に先んじて会見に応じた富樫勇樹は「試合が続くと練習がなくなるので楽です」とニコニコしていたが、原は「それは富樫の勝手な思い込み。キツかったです」とバッサリ。「試合だけじゃなく移動が多かったので、沖縄に行って秋田に行って、特にこの数試合はすごくキツかったです。飛行機に乗っただけで身体や気持ちが重くなったりするし、外国籍選手の顔を見ても疲れがありました。今日は『これで最後だ』という気持ちでフレッシュに行けたんですけど、ここ数試合は富樫以外はみんな疲れたという思いが片隅にあったと思います」
もっとも、原が「疲れた」と言うのは試合に勝った後だからで、試合中のプレーで疲れを感じさせることはない。原はNBL最後のシーズンにアーリーエントリーで千葉に加わり、ここまで常に厳しい競争に晒されてきた。NBL時代には勝てないチームだった千葉は、Bリーグに時代が変わるとともに強豪へと生まれ変わった。大学まではスコアラーだった原は、『タフなディフェンスから走る』千葉のスタイルの中で生き残るために苦労を重ねた末、泥臭いロールプレーヤーとしての自分の役割を見いだした。
今シーズン開幕前には、4年間自分がやってきた2番、3番ポジションに3人もの補強(シャノン・ショーター、佐藤卓磨、赤穂雷太)があったことを「そのポジションが弱いと思われたから。自分が活躍して考えを覆したい」と悔しさを露わにするとともに、「プレータイムにはめちゃくちゃこだわりたい」と語っていた。そして過去4シーズンの数字を大きく塗り替えるプレータイムを得て、シーズン後半にはショーターに代わって先発に定着している。
「コートの中で余裕を持てているのは、ここ数年になかったこと」
「自分のモットーは『テキトーに頑張る』で、そのテキトーがとても良い方向に行っていると思います」と原は言う。ノホホンとした生来の性格を言い表しているのだろうが、コートのプレーは『テキトーに頑張る』とは全く異なるイメージだ。千葉のスタイル、大野篤史ヘッドコーチが求めるプレーを知り尽くしていることが原の武器。フィジカルで隙のないディフェンスで試合を千葉のペースに持っていく。それは新加入のどの選手にもできない原の仕事だ。チャンピオンシップでも彼が先発に名を連ねるだろう。
今シーズンの自身の成長を、原はこう語る。「コートの中で余裕を持てているのは、ここ数年になかったことです。それは練習で自分がこういうことをできるとアピールして、コーチ陣も『原にやらせてみよう』となって、今シーズンは自分のオフェンスのオプションがあったので、その責任を与えられたうれしさがありました。よりチャレンジできるようになって、その姿勢が成長できた部分だと思います」
泥臭く激しいプレーで評価を確立した原だが、SR渋谷戦では5試合ぶりとなる2桁得点、16得点を記録。富樫が作り出す速いペースにきっちりと合わせて攻撃に参加し、3ポイントシュートだけでなくインサイドに飛び込んでパスを呼び込んでの得点など、鮮やかなシュートを連発した。一番気持ち良かったシュートは「右手で決めたレイアップ」とのこと。「バスケ以外は全部右利きなんですけど、バスケだけ唯一右が不器用で、今シーズンあまり綺麗に決まったのがなかったので、うれしかったです。スキルコーチと目を合わせて喜びました」
過去のジンクスや因縁はあまり気にしないという原だが「良い時だけはすごく気にするので、とても良い流れでチャンピオンシップを迎えられると思います」と心底うれしそうな笑みを漏らす。
千葉の主役は富樫勇樹であり、ギャビン・エドワーズやセバスチャン・サイズだ。それでも千葉がBリーグになって手が届いていないリーグ優勝を勝ち取るには、原のような信頼できるロールプレーヤーが泥臭いだけでない輝きを見せることが大事な要素となる。Bリーグ5年目で迎えた大きな飛躍のシーズンを、原はチャンピオンという最高の形で締めくくることができるだろうか。