富樫勇樹

「引き締めることなく入ってしまった」第3クォーターに明暗

千葉ジェッツとサンロッカーズ渋谷、チャンピオンシップ進出を決めている両チームがレギュラーシーズン最終戦で激突した。

勝てばワイルドカード上位となるSR渋谷は、立ち上がりから関野剛平の速攻が決まり、チームで高い位置からプレッシャーをかけ、広瀬健太が速い展開から3ポイントシュートを沈めるなど出足で上回る。とは言え千葉も受け身に回りながらもランを許さず、食らい付いていく。ベンチから入ったシャノン・ショーターが連続得点を挙げれば、すぐに広瀬がピタリとマークに付いて強みを消す。セバスチャン・サイズとジョシュ・ダンカンがオフェンスリバウンドからねじ込むなど強引な得点を連発する一方で、SR渋谷は得点こそ外国籍選手に偏るが日本人選手が崩してチャンスメークする。

お互いに激しさを前面に押し出し、ハイペースで得点を奪い合う中で、何をきっかけに均衡が崩れてもおかしくないスリリングな前半を終えて、SR渋谷が53-50とわずかにリードした。

ところが第3クォーターのSR渋谷は16-31と圧倒された。関野は「前半の流れのまま、引き締めることなく入ってしまった」と語る。伊佐勉ヘッドコーチもこの時間帯を「出だしで流れが一気に変わってしまいました。タイムアウトを2回取ったけど変わらず、ミスは仕方ないですが、断ち切らないといけない。チャンピオンシップでそんな流れが2分でもあれば終わり。そうならないようにしていこうと話しました」と振り返る。

千葉の大野篤史ヘッドコーチも、立場は逆でも同じことを語った。「前半のようなディフェンスをしていたらチャンピオンシップは戦っていけない。1つか2つのミスは出るんですけど続けないこと。分かり切ったことを徹底してやれるかどうかが一番大事」

集中を切らしたまま後半に入ったSR渋谷に対し、千葉は激しいディフェンスからトランジションに持ち込むことで圧倒する。攻めで効いたのは、ゴール下でのギャビン・エドワーズ、サイズやダンカンのポストアップ。彼らビッグマンが、タイミング良くボールが入ったタイミングでターゲットハンド側に反転してディフェンスの裏を突き、そのままシュートを決める攻めだ。このパスを富樫勇樹も藤永佳昭もよく狙い、次々と得点を重ねていく。後半の3人の得点は23で、それほど多くないように思うかもしれないが、3人合わせてフィールドゴール12本中9本成功と、ここで効率良く得点を挙げた。試合を通じてペイント内での得点はSR渋谷の32に対して千葉が64と、ここで圧倒的な強みを作った。

また、この試合でB1通算1000得点を挙げた原修太は8本中7本のシュートを決めて16得点と、持ち味であるディフェンスのハードワークだけでなく得点の面でも大暴れ。こうして千葉の勢いは第4クォーターも衰えることなく、最終スコア104-83で勝利した。

ギャビン・エドワーズ

完成度を高める千葉「個で打開する時間帯が少なくなってきた」

千葉は新型コロナウイルスの影響で3週間半試合がなくなり、再開後は3連敗。それでも日程を組み替えて21日間で9試合と超タフなスケジュールの終盤戦を9連勝で終えた。

「個で打開する時間帯が少なくなってきた。自分たちのゲームプランに則ってプレーを遂行できるようになってきた」と大野ヘッドコーチはチームの変化を語る。「コロナで中断せざるを得なかった後、勝ちたい意欲があって結果が出ない中で崩れるんじゃなく、お互いを信じ合って支え合って、それが特にロッカールームで見られました。僕らが口を開く前にコミュニケーションを取っていました。本音をちゃんとしゃべる、チームのためになることを話す。それがやっと出てきたと思います」

富樫勇樹は来るべきチャンピオンシップに向けてこう語る。「楽しみでしかない。東地区で優勝して第1シードで上がることはできなかったですけど、今日の試合も勝っても負けても僕たちの順位が変わらない中で、こういう戦いができたのは本当に良かった。次に繋がる試合だったと思います」

千葉はホームにシーホース三河を迎え、敗れたSR渋谷はレギュラーシーズン勝率トップの宇都宮ブレックスと敵地で対戦することに。伊佐ヘッドコーチは次のように戦う覚悟を語っている。「勝率が物語っているように、失点でリーグ1位ですし、何よりチームが安定している。僕らが勝てるとしたらクロスゲームしかない。向こうが崩れることはない。こちらが崩れず付いていって最後に全員でモノにできたらと思います」