『マブンガとの話し合い』を機に個人とチームが噛み合うように
富山グラウジーズは週末の横浜ビー・コルセアーズとのアウェーゲームを連勝で終え、連勝を5に伸ばした。31勝17敗は東地区4位で、ワイルドカードの最上位でのチャンピオンシップ進出圏をキープしている。
横浜は連敗が続いているが、ディフェンスとハードワークを軸にチームは上向きつつあり、実際に2試合ともゾーンを織り交ぜるチェンジングディフェンスの精度が高く、リバウンドやルーズボールへの激しさを押し出すあなどれない強さを見せた。特にリチャード・ソロモンの戦線離脱で外国籍選手がジョシュア・スミスとジュリアン・マブンガの2人しかいない富山に対し、ビッグラインナップを含めたローテーションを活用して、プレータイムとファウルをシェアできる利点を生かす戦い方をしてきた。
マブンガとジョシュアに依存する戦い方では、かなりの苦戦を強いられたはずだ。その状況でいつも以上にオフェンスの責任を負い、チームを引っ張ったのが岡田侑大だった。横浜がビッグラインナップを使う時間帯、マブンガは自分で無理に攻めるのではなく、ディフェンスを引き付けて岡田にパスを回した。岡田は第1戦では3ポイントシュート4本成功を含む19得点、第2戦では10得点と、マブンガとジョシュアに並ぶ得点源となり、2試合いずれも勝利に大きく貢献した。
「外のシュートが入っているのでスコアの面では上がってきていますが、スコアに映らないところでもう少し頑張れたらいいなと思います。まだまだもっと上に行けると自分では感じています」と岡田は言う。
アウトサイドのシュートが好調で、相手がそれを警戒すれば逆を突くドライブでゴール下へと仕掛けて行く。横浜との連戦を含め7試合連続で先発起用され、プレータイムが安定したことでオフェンスマシーンとしての岡田の魅力がより出るようになった。
岡田によれば、転機となったのは3月6日と7日の千葉ジェッツ戦の前。この千葉との初戦で岡田はベンチから出てキャリアハイの29得点を記録し、翌日の第2戦から先発に据えられている。「千葉戦から積極的にシュートを打てていることは自分でも感じていて、前半戦は考えながらオフェンスをしていたんですけど、今は自分の感覚で、やりたいことをやっている感じではあります」
「チャンピオンシップに行く力がありますし、行かないといけない」
「千葉との試合の前にジュリアンと話す機会があって、両方ともボールハンドラーでボールを持つ時間の長いプレーヤーなので、そのバランスについて話しました。そこで『やりたい時には言ってくれたらボールを預けるよ』と言ってくれたので、それが自分の中では一番大きいです」
日本人らしい遠慮ではなく、自分の我を押し通すよりもチームが機能するためにマブンガのゲームメークに合わせることを選択していた岡田だが、シーズンも後半戦になって自分の得点能力をより押し出すことがチームのためになると考えた。マブンガもそれを理解し、お互いに合わせることで今の連勝が実現している。
「今まではあまり要求しなかったんですけど、話してから要求することが増えました。今までツーメンゲームをあまりやってきませんでしたが、ジュリアンとのピック&ロールを増やすよう意識しています」
岡田は高い得点力を誇るが、ただお膳立てされたチャンスを決めるシュート力ではなく、自らズレを作り出してフィニッシュまで持ち込む多彩な能力の持ち主である。その力はまだチームとして噛み合い始めたばかり。ここからの伸びしろが「もっと上に行ける」という彼の言葉の根拠だろう。
今の富山にとってチャンピオンシップ進出は夢物語ではなく、現実的な目標だ。岡田もそこに目標を据えている。「僕はチャンピオンシップにまだ行ったことがなく、どういうところか経験していないのでよく分からないんですけど、今のチームはチャンピオンシップに行く力がありますし、行かないといけないと思います。初めてのチャンピオンシップに行くためにも、しっかり自分のやれるプレーをしていきたい」
そう語る岡田のまだ底が知れないポテンシャルを、チームとしてどう引き出し、組み込んでいくか。これが上手くいけば富山は2度目のチャンピオンシップ進出を果たすだけでなく、そこで勝ち上がっていくチームへとレベルアップできるはずだ。