エバン・フォーニエ

ブーチェビッチ、ゴードン、フォーニエを放出

注目のトレードデッドラインで大きく動いたのはマジックでした。ケガ人が多く成績が伸びない中で、これまでチームの中核となった選手を手放し、若手有望株とドラフト指名権を集め、一気に再建に舵を切ったのです。

まずは大黒柱のニコラ・ブーチェビッチをアル・ファルーク・アミヌとともにブルズに放出しました。プレーオフ進出へ巻き返しが必要なブルズは、オールスターセンターの獲得でインサイドの得点力を向上させただけでなく、ブーチェビッチのプレーメーク能力はガード陣の得点力をより輝かせるはずです。ブルズにとって素晴らしい補強であるからこそ、マジックは2018年ドラフト7位のセンターであるウェンデル・カーターJr.と2つのドラフト1巡目指名権を獲得できました。

また注目されたアーロン・ゴードンはナゲッツとのトレードとなり、マジックはリーグ屈指のディフェンス能力を持つギャリー・ハリスとルーキーのRJ・ハンプトンという2人のガードと1巡目指名権を手に入れました。ゴードンには多くのチームが興味を示していたため、もっと多くの対価を得られた可能性もありますが、ハンプトンはドラフト時にマジックが指名する噂もあっただけに、意中のターゲットだったのかもしれません。ナゲッツとしては小さくない代償ではあるものの、レブロン・ジェームスやカワイ・レナードがいる西カンファレンスを勝ち抜くために必要なウイングディフェンダーを手に入れ、プレーオフで勝つための準備をしてきたと考えられます。

今シーズン限りで契約が切れるエバン・フォーニエはセルティックスと2巡目指名権2つでトレードしており、これで合計5つの指名権を手に入れたことになります。しかし、これらの指名権を抜きにしても、マーケル・フルツやジョナサン・アイザック、モー・バンバ、コール・アンソニーとすでにチームにいる選手を合わせると、すべてのポジションに複数の若手有望株を揃えたことになります。まだ『有望株』の域を出ない選手が多く、ケガ人も含まれているものの、これだけ充実しているチームは珍しいです。

前日のサンズ戦でプレータイムの長かった上位4選手(ブーチェビッチ、ゴードン、フォーニエ、アミヌ)が放出となり、一夜にして全く別のチームになったマジックの動きは、NBAのトレードデッドラインの怖さも面白さも感じさせるものでした。これでマジックは新たなサイクルに突入しますが、新たに獲得した若手はディフェンス力に特徴がある選手も多く、チームカラーにもあったトレードでもあります。チームは再建されることになるものの、ゼロベースで作り直すわけではありません。戦術的には従来通りの流れを維持し、その上で各ポジションで激しいチーム内競争をさせる形の戦力刷新となりました。