馬瓜エブリン

21-0のランでスタート、1点差に詰め寄られるも耐え続ける

Wリーグは2戦先勝方式のファイナルを迎えた。ENEOSサンフラワーズとトヨタ自動車の第1戦は、アップダウンの激しい展開の末にトヨタ自動車が71-66で勝利した。

第1クォーターは21-4とトヨタ自動車が大量リードを奪う展開に。馬瓜エブリン、長岡萌映子、河村美幸がインサイドを支配し、リバウンドを次々と奪っては走る展開へと持ち込む。ENEOSの心臓は宮崎早織と岡本彩也花のバックコートだが、この試合ではトヨタ自動車の安間志織が誰よりもエナジーを出し、味方が取るリバウンドをトランジションへと繋げていった。

失点を喫することなく快調に得点を重ねるトヨタ自動車は、どんどん足が動いてディフェンスの強度も増していく。宮崎のスピードに負けずに個人での打開を許さず、インサイドに預けようとするパスには手を引っ掛けて速攻を作り出す。

ベンチから出た藤本愛瑚がENEOSに最初の得点をもたらした時には試合開始から8分半が経過しており、2-21と大差が付いていた。それでもENEOSは第2クォーターになって立ち直る。気合いが空回りした宮崎が落ち着いた判断力を取り戻すと、藤本に石原愛子、そして宮澤夕貴のベンチスタート組が次々と得点を挙げて、30-37と追い上げて前半を終えた。

今のENEOSはポイントガードの宮崎のパフォーマンスが良ければどんどん勢いに乗るチームだ。第2クォーターの最後をヘジテーションからの単独突破による得点で締めた宮崎を止めるべく、トヨタ自動車は後半開始から身長が10cm高く走り負けしない平下愛佳に守らせたのだが、宮崎の勢いは止められない。トヨタ自動車はそこから矢継ぎ早にフレッシュなガードを送り込んで宮崎を止めようとするのだが、宮崎は40分間フル出場してなお、誰がマークについてもスピードで振り切り、ENEOSの反撃を演出していった。

その宮崎が唯一完璧に止められたのが、全員を抜き去ってシュートに行った第3クォーター序盤のシーンで、後方から追いかけて長い腕を伸ばす馬瓜ステファニーにブロックショットを浴びたシーンだ。ステファニーはそこから、速攻での3ポイントシュート、自らオフェンスリバウンドを拾ってゴール下のタフショットをねじ込むなど、ENEOSに傾きつつあった流れを強引に引き戻した。またチームディフェンスとしては、5アウトからの1対1で打開するENEOSに対し、ゾーンからのマンツーなどチェンジングディフェンスで対抗したのが効いた。

馬瓜ステファニー

「大事なのは自信を持ち、感情をコントロールすること」

それでもENEOSは41-53で迎えた第4クォーターに『女王』の意地を見せる。序盤の大量ビハインドからの追い上げに相当な力を使っているはずが、ここで攻守のインテンシティを保てなくなったのはトヨタ自動車の方だった。リバウンドが取れなくなり、球際の強さでもENEOSに遅れを取るようになる。また集中も保てなくなり、崩しきれないまま強引にシュートを打ってはリバウンドから走られた。

だが、チームを引っ張る存在としてENEOSに宮崎がいるように、トヨタ自動車には安間がいた。1点差に詰め寄られたところで、安間が強引に突っ込むアタックでバスケット・カウントをもぎ取る。このハッスルプレーが仲間たちに最後の力となり、河村が速攻を決め、エブリンがミドルジャンパーを沈め、永田萌絵から河村への完璧な合わせが決まって、トヨタ自動車は猛追を浴びながらもリードを保ち続けた。

残り1分を切って1点差。ここで先発ながら目立った活躍のなかった三好南穂にビッグプレーが飛び出す。ENEOSの激しいプレッシャーを浴びて攻撃が手詰まりのところで、ここまで無得点だった三好が猛然とリムにアタック。相手の予想を裏切る単独突破でファウルを誘った三好は、重圧の掛かる難しいフリースローを沈めて69-66と突き放す。最後のファウルゲームでもエブリンがフリースローを決めて決着。トヨタ自動車がギリギリの攻防を制して、ファイナル第1戦をモノにした。

19得点18リバウンドと攻守に大活躍のエブリンは、猛追を浴びながら耐えきることができた理由を「皇后杯で似たような状況があって、自分たちが引かないようにと常々話していたので、そこから自分たちのペースに持っていくことができた」と語る。

また指揮官ルーカス・モンデーロは「私は指導者として選手たちをフォローしますが、最終判断はコートにいる選手がやります。選手に伝えているのは、一番良いオプションを選ぶことです。そこで大事なのは自信を持ち、感情をコントロールすること。選手たちは厳しい戦いを乗り越えて勝ちました。追い上げられる状況でメンタルを強くして戦ってくれたことを誇りに思います」と語った。

それと同時に指揮官は「今日の試合は過去のもの。明日、優勝しなければならない。改善点はまだまだあるので修正したい」と気を引き締めてもいる。明日の第2戦に勝ってトヨタ自動車が優勝を決めるか、ENEOSが巻き返すか。目の離せないファイナルになる。