NBA復帰を目指し、Gリーグで平均19.6得点とアピール中
ジェレミー・リンは昨シーズン限りで中国リーグを離れ、アメリカに戻って来た。いまだ契約には至っていないが、シーズンが短縮されて『バブル』で開催しているGリーグに参戦。ウォリアーズ傘下のサンタ・クルス・ウォリアーズでここまで5試合に出場、平均19.6得点、7.2アシストとNBA復帰に向けてアピールを続けている。しかし、彼が話題となったのはプレーの内容ではなかった。
リンはInstagramに、「アジア系アメリカ人は貧困や人種差別と無縁じゃない。NBA9年目のベテランであっても、コート上で『コロナウイルス』と言われてしまう」と投稿し、アジア系アメリカ人への差別や偏見はなくなっておらず、コート上で『コロナウイルス』呼ばわりされたことを明かしている。
リンはロサンゼルスで生まれ育った台湾系アメリカ人で、以前にも「アジア系アメリカ人は、自分の国で暮らしているにもかかわらず、唾を吐かれ、ひどい言葉を浴びせられ、実際に暴力に遭っている」と訴えるなど人種差別に対して抗議の声を上げてきた。特にこの1年あまりは新型コロナウイルスによりアジア人へのヘイトが拡大している。当時の大統領、ドナルド・トランプが新型コロナウイルスを『中国ウイルス』と呼んだ時にも「この発言はアジア人に対する憎しみを強めるだけ」と注意喚起した。
リンはニックス時代に『リンサニティ』と呼ばれた大活躍を見せてNBAの有名選手となった。それにもかかわらずコート上で『コロナウイルス』呼ばわりされたのだから、アメリカのバスケ界にいまだ深刻な差別がはびこっているのだろう。ウォリアーズの指揮官スティーブ・カーは、傘下チームで起きたこの出来事に「あってはならない出来事で、リーグは調査すべきだ」と発言している。だが、リンは犯人探しを望んでいない。
リンは再びSNSにこう投稿している。「失望する人もいるかもしれないけど、誰なのか特定して恥をかかせたいとは思わない。この状況で誰かを批判の槍玉に挙げることに意味はない。それで僕のコミュニティが安全になったり、人種差別の根本的な問題を解決したりはしないと思う」
「無知と無知の戦いは何も生まない。誰かを敵に仕立てて自分たちの痛みを共有しても意味はない。この状況を何とかしたいと思った人は、いじめを受けて誰も味方になっていないアジア系の子供、見過ごされているアジア系アメリカ人たちに目を向けて、どうすれば彼らを助けられるか聞いてほしい。人の話を聞いて、視野を広げるんだ。この世代は変わることができると信じている。必要なのは共感と連帯感だ」