アシスタントコーチ経験豊富、オフェンス戦術の構築に評価
ティンバーウルブズは現在7勝24敗で、NBA30チームの最下位に沈んでいる。2月21日のニックス戦に敗れた後、ライアン・サンダースの解任が決まった。トム・シボドーを解任した2年前、内部昇格でヘッドコーチを任されたサンダースは32歳だった。選手の良き兄貴分として慕われたサンダースだが、接戦を勝ち切るための術を持たないことは明らかだった。
彼はウルブズで指揮官や球団社長を務めたフィリップ・サンダースの息子で、球団としては若いチームとともに若いヘッドコーチも育てていく方針だった。それでも下位に沈むチームがさらに毎シーズン勝率を落とす現状では、方向転換もやむを得ない。2019年の春からウルブズの球団社長を務めるガーソン・ロサスは、これまで若いサンダースに寄り添ってきたとも言えるが、ここで彼を切り捨てる決断を下した。
ロサスが選んだ後任はクリス・フィンチ。NBAでヘッドコーチを務めるのは初めてだが、ロケッツやナゲッツ、ペリカンズで長くアシスタントコーチを務め、オフェンス戦術の構築で高い評価を受けている。ナゲッツでもペリカンズでも、オブボールムーブの連続で相手ディフェンスを振り回す、アグレッシブで意欲的なオフェンスを作り出してきた。今シーズンはラプターズでニック・ナースのアシスタントを務めていたフィンチを、ロサスはシーズン途中で引き抜いた。
昨日、フィンチの就任会見が行われた。同席したロサスから「今のウルブズに必要な知識と経験を持つ人物」と紹介されたフィンチは、抱負をこう語る。「勝ち負けで判断してほしい。私は勝利にこだわって仕事をしたい。それ以上に若い選手たちを成長させたいし、チームにアイデンティティを確立したい。この3つの目標のうち2つをクリアできれば、チームにとって大きな前進になる」
「今シーズンは我々コーチにとって本当に難しい。開幕前の準備期間がほとんどなく、バック・トゥ・バック(2試合連続の試合)の連続だ。困難を前にして気持ちが引き締まるよ。だけどチームに自信を取り戻すことはできると思っているし、選手たちはプレーする喜びを見いだせるはずだ」
なぜこのタイミングでの指揮官交代なのか。その問いにロサスはこう答える。「一時停止ボタンはない。状況が動いている中で決断しなければならなかった。クリスならビジョンと哲学を共有し、このチームに良い変化を与えられると思った。そして正直に言うが、残念なことに内部からではその変化が可能だとは思えなかった」
いずれにしても、決断は下された。ウルブズはこれまで積み上げてきたものを一度ご破算にして、新たなチーム作りに乗り出す。チャンスを与えられたフィンチは意欲十分だ。「外部の意見はいろいろあるだろうが、この24時間は激動すぎて気にする暇がなかった。私はこの挑戦に興奮しているし、NBAで過ごす日々を楽しんでいる」
ボールを支配し、オブボールムーブを多用してアグレッシブに攻めるフィンチのスタイルがモノになるまで、かなりの時間を要するだろう。だからこそ、このタイミングで彼を迎え入れたとも言える。カール・アンソニー・タウンズという絶対的な軸がいて、ルーキーのアンソニー・エドワーズも期待通りの活躍を見せている。昨シーズン途中に加入したディアンジェロ・ラッセル、今シーズンに加入したリッキー・ルビオがフィンチの新しいスタイルにフィットすれば、魅惑のオフェンスが見られるかもしれない。