橋本竜馬

文=鈴木栄一 写真=琉球ゴールデンキングス、B.LEAGUE

5月に30歳となった橋本竜馬は、このオフに一つの大きな決断を下した。2011年の加入から7年間プレーしてきたシーホース三河からの移籍である。桜木ジェイアールと並んでチームを象徴する選手が橋本だっただけに、三河を離れること自体が驚きを持って受け止められた。

新天地に選んだのは琉球ゴールデンキングス。30歳で迎える新シーズン、心機一転の橋本に今の心境を語ってもらった。

「すべて変わる中でチャレンジできるのが楽しみ」

新天地として琉球を選んだ理由について、橋本は「かなり簡単に言うと、こうなります」と前置きした上でこう説明する。「7年という長い期間、三河に育ててもらいましたが、これから先のキャリアを考えた時、どうしたら一番良いのかを考えさせられたオフシーズンでした。そしてもう一回チャレンジしようとなった時、社長や佐々(宜央)ヘッドコーチと話をしていく上で、ここでバスケットをやりたいう気持ちが強かったのがキングスでした」

その『チャレンジ』の一つが新しいバスケットのスタイルへの取り組みだ。三河はゴール下を起点にハーフコートバスケを主体とするチーム。これに対し琉球は3ポイントシュート主体のアップテンポなバスケを志向しており、スタイルはまさに真逆となる。これを橋本は自らを成長させる要素とポジティブにとらえた。

「三河とは全くスタイルが違うのは感じていて、イチからのスタートですが、それ自体がチャレンジです。三河で積み重ねて来たものがアドバンテージとしてある中で、バスケ、生活環境とすべて変わる中でチャレンジできるのが楽しみです。新しいことを勉強することで良い積み重ねになると思っています」

その琉球には橋本に続いて並里成も加入した。チームの看板選手を務めてきた生え抜きの岸本隆一と合わせて、すでにBリーグで確固たる実績のあるポイントガードが3人ひしめき合うことになる。この3人がうまく共存できるかが注目を集めている。

それでも橋本自身に不安はない。「周りの方々には『本当に大丈夫か?』という見方もあるかと思いますが、僕たちは楽しみにしています。逆に言ったらこの中でプレータイムを勝ち取れるのか。また、みんな一緒にやっていくことでどうなるのかも含めてチャレンジです。常に前向きであり、周囲の声を気にすることなく自分たちの目標に向かっていくだけです」

橋本竜馬

「勝つことに貪欲に餓えたキングスの姿をお見せする」

その橋本が琉球にもたらしたいと意識しているのは、常勝軍団のリーダーを担ってきた彼だからこそ注入できる要素だ。「昨シーズンの琉球は、一昨シーズンのイメージとは変わってディフェンスでしっかり締める、守備のインテンシティを上げ、リバウンド、ルーズボールをしっかりしてオフェンスをつなげていくをメインにしていたと自分の中では思っていました。ただ、その中でも自分がチームにもたらしたいのは『勝つメンタリティ』です」

「三河では常に勝つことが目標であり、絶対的な命題でした。『優勝以外は2位も3位も変わらない』という意識でやって来ました。勝つためにはそういうメンタリティ、試合に対しての気持ちの持っていき方が重要になります。キングスのメンバーにその部分が足りないわけではないですが、みんなで優勝に向かっていく上での指針になっていきたい」と橋本は言う。

「バスケットボールの面でも、助けられるところはあります。それ以上に、どのように勝ちにいくのかの姿勢を見せられれば、自分たちが目指しているところに向かっていけると思います」

新シーズンへ向けて、琉球のチーム練習は7月中旬からスタートしている。開幕はまだまだ先だが、「今は準備の段階であり、練習でうまくいかないこともいろいろあります。ただ、今しっかり苦しんで歯を食いしばる時期にしないと、本当にキツい試合、難しい状況で勝ちきるチームになれない。準備を楽しむだけでなく、選手、スタッフが苦しみながら前進して行くことが重要です。そういう期間にすれば開幕を良い状態で迎えられると思います」と、すでにシーズンに向けた戦いは始まっていることを橋本は強調した。

そして『琉球の橋本竜馬』のプレーを楽しみにしているファンへのメッセージを求めると、次のように語ってくれた。「勝ちにいくメンタルなど、基本となるところはブレない、変わらないです。戦術、やり方の違いにアジャストできれば、自ずとこれまでとは違うスタイル、プレーが見せられると思います。橋本はこんなこともできるのか、こういうプレーもするんだ、とファンの皆さんにも思ってもらえれば」

「戦う集団であることは変わらず、そこからさらに勝つことに貪欲に餓えたキングスの姿をお見せできると思います」と橋本は力強くインタビューを締めくくった。安定のゲームメーク、激しいディフェンスに加え、背中でチームを引っ張る橋本の存在が琉球にどんな進化をもたらするのか、今から楽しみだ。