シアカムの不調とセカンドユニットの活躍
1勝6敗と開幕から不調が続くラプターズでしたが、8日のキングス戦では渡邊雄太の活躍に助けられ、2勝目を挙げました。ここまで上手く行かない部分を渡邊が見事にカバーし、このままローテーションの一角としてプレータイムを得ることが期待されます。
マルク・ガソルとサージ・イバカが移籍し、インサイドが苦しそうに見えますが、ペイント内失点は37.7点でリーグ2位と奮闘しています。一方で昨シーズンはリーグトップだった被3ポイントシュート成功率が20位まで下がっています。実際、最大の武器であったローテーションを繰り返すチームディフェンスが機能せず、足が止まってしまうシーンが増えています。
それ以上に問題なのがリーグ最下位のフィールドゴール成功率42%に抑えられているオフェンスです。エースのパスカル・シアカムが個人技で仕掛けるシーンが多く、チームとしての展開力に欠けるオフェンスはミスも多く、ボールの失い方が悪いためトランジションディフェンスへの移行も悪くなります。
キングス戦の序盤も自分たちのシュートミスからトランジションを仕掛けられ、第1クォーターだけで43失点を喫し、最大19点のビハインドを背負いました。今シーズンの悪い部分が凝縮されたような展開で、オフェンスで取り返しに行ってはミスになる悪循環。しかし、シアカムと交代で渡邊がコートに出てくると流れが変わり始めます。
ベンチメンバー中心のスモールラインナップで仕掛けたラプターズは、スイッチとローテーションを繰り返す『ラプターズらしい』積極的なプレッシャーディフェンスで3ポイントラインの外まで相手を追いかけ、キングスのボールムーブを止めるようになります。ディフェンスが機能したことでカウンターアタックを連発し、トランジションオフェンスだけで得点を重ねていきました。
それでもキングスは追い上げられる苦しい展開の中で、ルーキーのタイリース・ハリバートンが3ポイントシュートを沈めて、前半を3点リードで折り返します。ラプターズとしては、この3ポイントシュートを止めるために、より平面で追いかける形を選択することになりました。
第3クォーター早々にOG・アヌノビーのファウルトラブルによって渡邊が登場し、さらに第3クォーター終盤からエースキラー役のスタンリー・ジョンソンも起用し、フレッシュなディフェンダーが増えたことで、チームディフェンスはさらに強固になりました。後半は失点を49点に抑え、オフェンスでは次々とトランジションを仕掛け73点を奪うことに成功しています。今シーズン初めてと言える『ラプターズらしい』ディフェンスとハードワークで、終わってみれば21点差の圧勝となりました。
それでも、スターターは運動量が足りない上に攻守の切り替えも遅く、ベンチメンバーが中心となって生み出した勝利でした。その中でも渡邊は得点こそ3点に留まりましたが、攻守にエネルギーをもたらしていました。
特に目立ったのは『必ずリバウンドに参加していること』です。気持ちの問題と片付けられてしまいそうですが、ラプターズのディフェンスは次々とローテーションしているため、リバウンドの時に自分がいるポジションは毎回異なってきます。シュートを打たれるまでは激しいチェイスを繰り返し、打たれた後はボックスアウトするべきか、ゴール下をカバーするべきか、ロングリバウンドをカバーすべきか、瞬間での判断が問われる中で、適切な対応ができています。
また、オフェンスリバウンドにも積極的に参加しており、特にロングリバウンドになった時に渡邊が絡んでいくことで、キングスのトランジションを大きく減らしています。スモールラインナップの時間帯が増えたことで、渡邊やスタンリーがリバウンドに絡む間に、チームメイトはトランジションディフェンスに戻れており、チーム全体がディフェンスから始まる『ラプターズらしい』リズムを生み出しやすくなっていました。
ラプターズの不調は、エースであるシアカムが攻守にエネルギーをもたらせていないことにあります。ディフェンスではファウルの多さが目立ち、オフェンスでは速攻での得点を減らしています。ハードワークと攻守の切り替えの早さはラプターズの生命線でしたが、中心選手が実行できていないことは大きな問題です。
その要因の一つは過密日程にもあります。試合と移動で休養の取れないシーズンだけに、毎試合ハードに戦うことを求めるのは酷なのかもしれません。『ラプターズらしさ』を安定して発揮するにはベンチメンバーの活用は非常に重要で、スタッツには残らなくても、チームに大きなエネルギーをもたらした渡邊のプレータイムも今後は増えていきそうです。