城宝匡史

新シーズン開幕から2カ月。各チームとも25試合を消化した状況で、良い意味で最大のサプライズとなっているのが富山グラウジーズだ。今オフには浜口炎を新たなヘッドコーチに迎え入れ、積極的な補強を敢行。戦力が充実した一方で「チームとして機能するには時間がかかる」と見られていたが、ここまで18勝9敗と上位に食い込んでいる。かつて富山のエースとして活躍し、3年ぶりに復帰した城宝匡史に、新生グラウジーズでの手応えを聞いた。

「オフェンスができる選手はディフェンスもできる」

──城宝選手は新加入選手とは言え、古巣への復帰となりました。環境に馴染むのに苦労はありませんでしたか?

今回はすんなり入ることができました。移籍して引っ越してくると生活面でいろいろバタバタするものですが、6年も住んでいて知っている土地ですから。住み心地も良いですし、到着してすぐに練習の準備に入れたのは良かったですね。

──「タレントは揃っているがチームとして機能するのか」というのが富山に向けられた目線だったと思います。城宝選手は開幕前の時点でどのような手応えを持っていましたか?

何も考えていませんでした。強いて言えば「よくこれだけのメンバーを集めたな」ってぐらいですね(笑)。どういうバスケをするのかもあまり分からないまま加入を決めたので。でも、能力のある選手が集まったのは見れば分かります。みんな「攻撃的すぎる」と言っていたと思うんですけど、だいたいオフェンスができる選手はディフェンスもできるんですよ。一生懸命頑張るかどうかの話だけです。だから岡田(侑大)も今すごく献身的にディフェンスに取り組んでいるし、実際すごく成長していますよね。

──ベテランとして富山に戻って来た城宝選手は、どんな役割を与えられて、それに対してどう取り組んでいますか?

僕は一番最後に加入が決まった選手なんです。チーム構想が決まったところに加わったので、『自分が、自分が』という感じではありませんね。試合にあまり出ないのは実際寂しいんですけど、少ない時間でどれだけ自分の仕事をするかにフォーカスしているので。コーチから期待されているのは3ポイントシュートだけだと思っています。出たらもう打つことだけを考えていますね。

ここまでプレータイムが少ない中ではまあまあやれているんじゃないですかね。決め続ければプレータイムも伸びていくと思っています。ただ、チームとしてはジュリアン(マブンガ)が中心だったりするので、そこの調子が良ければそこでやってもらっていい。チームの勝率はここまで良いので、今の感じで行ければいいと思っています。

──ここまで16勝9敗と結果は出ていますが、内容についてはどう見ていますか?

悪くないと思います。全く立て直せなかったのは宇都宮ブレックスとの試合ぐらいですね。宇都宮ぐらいのディフェンスをしてくる相手に僕らがどう攻めるのか、そこがまだ明確ではなかったんですけど、次に対戦した時はああはならないと思います。宇都宮との試合では、その時点での力の差は感じました。それでもウチにはまだ経験の少ない選手もいますし、チームのケミストリーもまだまだこれからなので。

上手く行けばチャンピオンシップに進出して、そこから上を狙えるチームだとは思うんですけど、やっぱり課題はディフェンスで、ディフェンスレートはリーグでも下の方ですから、そこはしっかり守れるチームになる必要があります。オフェンスはすでにトップクラスなので、もっと守れるようになれば勝てる試合も増えていくはずです。

城宝匡史

「プレータイムが少なくても、そこで自分の仕事をする」

──城宝選手個人の出来はいかがですか。今はプレータイムが短いので判断しづらいのですが、本人の手応えはどうでしょう。

38歳でもバリバリやっているつもりなんですけど、周りは気を使って褒めてくれるかもしれないし(笑)。でも、練習を見てもらえば一番早いんですけどね。練習では若い選手と一緒になってバリバリやれているので。何年か前と比べても変わっていませんよ。

特にシュートを求められている今は、シューティングの部分では若手に負けないつもりでやっていますし、実際誰にも負けないです。めっちゃ入っているんですよ。いつも『50本シュート』という3ポイントシュートを50本、最近だと2セットやっているんですけど、チームで確率が一番良いのは僕ですから。50分の50を出したいんですけど、なかなか出なくて。今はアベレージで47本か48本くらいですね。

──もともとは富山のエースです。復帰してプレータイムが限定されたシューターとして起用されることにモヤモヤした気持ちはありませんか?

僕はメンタルが超ポジティブなんですよ(笑)。これまでいろんな経験をしてきて、昨シーズンまでは30分近くプレーしていたのに今では10分とか3分とかプレータイムがバラバラになっているので、物足りない気はします。でもこれまででもチームには今の僕の立場の選手がいたよなと思いながら、「自分は恵まれていたんだな」と思ったり。そこは気持ちの切り替えじゃないですけど、僕もプレータイムが少なくても、そこで自分の仕事をしようというマインドになっているので、モヤモヤした気持ちはないです。

──開幕前に取材した時には、今回の富山では『ユースチームテクニカルアドバイザー』も兼任すると話していました。そちらの活動は順調ですか?

順調ですね。週3でユースを見て、週2でスクールを見ているので、週5で活動しています。スクールでは補佐みたいな立場なんですけど、ユースは自分に任せてもらっているので、ドリルを組んだり練習メニューを組んだり、選手にアドバイスしたり、いろいろやっています。昼間に選手としての練習をやって、夜にその活動があるので「ちょっと休みがほしいな」と思うこともあるんですけど、子供たちも楽しみに練習に来てくれているので、教え甲斐はすごくあります。

──大会とかもあるんですか?

あります。富山のU15で1番になれなかったんですよ。富山には奥田中がいますからね。選手も集まるし練習環境も整っているので強いんです。奥田中には30点差とかで負けているんですけど、県の2位です。でもU12では県内で敵なしです。みんなすごく上手いですよ。通常のリングの高さで練習しているんですけどシュートは入るし、みんな理解力もすごいんです。

教えている子供たちがトップチームの試合を見に来たり、モッパーをやったりするんですけど、そういう時は意識しますね。いつも自分が子供たちに指示していることができていなくて「やってないじゃん」と言われるわけにはいかないので。ディフェンスのポジション取りのような細かいところまで気が抜けません。昨シーズンにペップ(ジョゼップ・クラロス・カナルス)に相当叩き込まれたので、そこはちゃんとできるようになっていて良かったですよ(笑)。

城宝匡史

「良い選手が多いと練習のレベルも高くて気が抜けない」

──福岡でB2を経験して、B1に戻って来ました。「やっぱりB1は良いな」と思うことはありますか?

単純に楽しいです。スピードもディフェンスの強度もB1になると違います。B2にも良い選手はいますが、サイズ感は違いますし。良い選手が多いと練習のレベルも高くて気が抜けないし、頑張らないと簡単にやられちゃう部分もあります。だから練習強度の高い中でフォーカスのレベルを高く保って毎日やれています。

さっきも言いましたがプレータイムは短いですけど、コーチからシュート力を求められているのなら、その使われ方に合わせてみよう、と考えてやっているので、集中もできています。でも今の役割に落ち着くつもりもなくて、毎日の練習ではプレータイムを取るためにめちゃくちゃ頑張ってます。完全にそういうマインドですね。その向上心というか、ガツガツした気持ちがなくなったら引退ですよ。

──シーズンは中盤戦に入りますが、チームは上々のスタートを切って、ここから何を目標にしますか?

ここまで良い位置につけているので、バイウィークでしっかり休んで、そこからまた波に乗りたいです。1月は重要な試合ばかりで、そこでしっかり取れればチャンピオンシップに行ける雰囲気が出ると思います。まずはそこを目指してやっていきます。

個人的には開幕直後に肉離れをやって何試合か欠場してしまったので、ケガなく自分の仕事をしていくのが目標です。プレータイムはもっと欲しいのが正直なところですが、そのためには今の使われ方でシュートをものすごく決めないといけないですね。それぐらい調子が良ければ使ってもらえると思います。

──今まで以上にチーム内競争が激しくなっていますが、今の状況を楽しめていますか?

やっぱり、上手い選手と高いレベルで競い合うことができるのは楽しいですよ。良い選手が多いということは練習中も気が抜けないです。みんなそうなので練習の強度も高いし集中して取り組むことができています。そんな中で今はチームもそこそこ勝っているので楽しいですし、非常に充実している感覚でやれています。