主力2人を欠きながら完璧なディフェンスを遂行
12月9日、秋田ノーザンハピネッツは敵地でアルバルク東京を相手に、完璧なディフェンスを遂行する快勝を挙げた。
大きく動いてボールを呼び込んだ保岡龍斗の思い切りの良いプルアップジャンパーで秋田が先制。保岡はこのまま勢いに乗り、ミドルレンジと3ポイントシュートで打てるタイミングがあれば迷わずシュートを狙い、第1クォーターだけで3ポイントシュート4本中3本成功を含む11得点をマーク。試合を通じて両チーム最多の24得点を挙げる活躍ぶりだった。彼が思い切り良く打てたのは、リバウンドで秋田が圧倒していたからでもある。開始2分、保岡は3本目のシュートを初めて外したが、アレックス・カークが腕を伸ばして届かなかったリバウンドをカディーム・コールビーが抑えて得点に繋げた。
A東京は試合序盤に、ドライブで突っ込んできた須田侑太郎と味方同士で衝突した竹内譲次がベンチに下がることに。代わってデション・トーマスが投入されたが、ローテーションが乱れたことで受け身に回ってしまう。秋田はコールビーのポストアップが機能したことで、一度インサイドに預けてからの展開で次々とチャンスを作り出し、リードを広げていった。
秋田のオフェンスが非常に目立つ展開であったが、本当に効いていたのはディフェンスだ。お家芸のプレッシャーディフェンスに加えて、ヘルプに行くのか行かないのか、またそのタイミングが絶妙で、複数のゾーンディフェンスを使い分けながら、それぞれが絶妙な距離感を保ってA東京のアタックを許さない。さらには高い位置でプレッシャーを掛けてボールを止めると、そこから激しいディナイでパスコースを限定する。試合を通じてスティールは5とそれほど多いわけではないが、ボール奪取には至らなくてもA東京の出したいところにパスを出させない、ディフレクションでオフェンスを構築をさせない好守備は数えきれないほどあった。
秋田はアレックス・デイビスと中山拓哉の主力2人が欠場。攻守にかなり苦しいと思われたが、残った選手が集中力を高めた。保岡の得点が止まったタイミングで古川孝敏が連続得点を挙げたり、デイビス不在の分まで仕事の増えた野本建吾が奮闘してインサイドで相手の優位を作らせなかったのも大きい。プレッシャーディフェンスを担うガード陣は5人がそれぞれ10分から15分のプレータイム。矢継ぎ早の選手交代で常に100%の激しさを意地し、なおかつ誰が出てもディフェンスの連係を崩さなかった。
26-52とダブルスコアで迎えた後半、A東京はファーストプレーで安藤誓哉とカークのピック&ロールでの見事な得点が決まる。ところがここで指揮官ルカ・パヴィチェヴィッチがベンチテクニカルを取られ、フリースローを決められた上に古川の3ポイントシュートまで決められ、逆に点差を広げられてしまう。田中大貴のシグネチャームーブである、ドライブからフック気味に放つレイアップまでコールビーにブロックされ、追い上げのきっかけをつかめない
オフェンスの連係を断ち切られる中で、小酒部泰暉が個人技で強引な打開を繰り返して見せ場を作るも単発で、チームとしての勢いには繋がらない。持ち前の身体能力を生かして9得点4リバウンドと奮闘した小酒部だが、「後半からギアを入れてしっかりディフェンスから流れを作っていこうという気持ちで挑みましたが、良いところでシュートを決められたり、ファウルがかさんでしまい流れを作れず、チームとしても個人としても総合的に良くない試合展開となってしまいました」と、やはり満足にはほど遠かった。
保岡の驚異的なシュート成功も後半には続かず、徐々にA東京が点差を詰める展開にはなるものの、秋田はディフェンスの強度を落とさずにビッグランは許さない。最終スコア89-70と完勝を収めている。
前田顕蔵ヘッドコーチにとっては、チーム一丸の計算されたディフェンス、日本人選手による得点と、これまで突き詰めてきたバスケが形になっての見事な勝利。「みんながステップアップしてゲームプランを最後まで遂行してくれた、主力2人がいない中でA東京さんに勝てたというのは非常に大きいことだと思います」とコメント。秋田はこれで連勝を3に伸ばしている。