渡邉裕規

文=丸山素行 写真=バスケット・カウント編集部、野口岳彦

『堅守速攻』を強みにBリーグ初代王者に輝いた栃木ブレックスだが、2年目の昨シーズンはチームが様変わりし前半戦でつまづくことに。一時はチャンピオンシップ進出も危ぶまれたが、試合を重ねるごとに本来の強さを取り戻した。復調の要因は様々あるが、現役引退を撤回した渡邉裕規の復帰が大きかったのは間違いない。早くも始動し、長いシーズンを戦う準備を進める渡邉に話を聞いた。

「キツイ思いをしなきゃいけないから大変(笑)」

――引退を撤回した昨シーズンは、オフ期間の準備がなかった分だけ難しかったと思います。こうやっていち早く練習を開始した今の心境はいかがですか?

やってない時はやってない時で、懐かしかったり愛おしくなるんですけど、やはりキツイ思いをしなきゃいけないから大変だなって(笑)。誰でもあるじゃないですか。仕事がないと不安になるけど、仕事をするとグチを言う。好きだから続けられますし、それができるだけ幸せですけどね。

――昨シーズンが終わった後、もう一度引退したいとは思いませんでしたか?

それはないですね。戻った時点でいらないと言われるまで、使いものにならなくなるまでやろうと決めていたので。逆に言えば前はそういう感覚がなくて、「バスケットで燃え尽きたくないな」と思っていました。

――昨シーズンはしっかりとした準備期間が足りなかったと思いますが、今シーズンはすでに練習を始め、昨シーズン以上の活躍が求められるのではないでしょうか?

そうですね、昨シーズンは戻れることの幸せを感じながら練習や試合に出ていましたから。チームが成熟していく段階の時期にいなかったですし、オフの練習を含め半年やっていなかったのを考えると「迷惑にならない程度に」と思っていました。今は焦る必要はないと思いますけど、一日一日を大事にしてやっていきたいですね。

渡邉裕規

「何を高めなきゃいけないのかに気付く期間」

――今日はスキルトレーニングとウェイトトレーニングを行いましたが、開幕がまだまだ先のこの時期、こういった個人練習にモチベーション高く取り組むのは難しいのではないかと思いますが、どういったことを心掛けて取り組んでいますか?

この時期にやるドリブル練習とか個人スキル練で、一つのフェイントが試合で出せるかどうかが決まります。それは40分間の試合の中でたった何秒かのモーションで、その1、2秒の動作のためにやっています。だからすごく大事です。自分に何ができなかったか、足りなかったとか、何を高めなきゃいけないのかに気付く期間だとも思っています。

――実際に足りないと感じているのはどんなところですか?

ゲームコントロールですね。昨シーズン、生原(秀将)と出ている時は1番と2番として出ていて「今、俺は何をするのか」というのが複雑でした。もう少しポイントガードとして得点以外の部分で、ゲームコントロールする力をつけないとなって。まあ毎年なんですけどね(笑)。今年はうまくコントロールできたなという年はなく、どこかに必ず反省があるので。

――名前が挙がった生原選手がシーホース三河へ移籍したのは、ちょっとしたサプライズでした。結果的に渡邉選手の責任と負担は増えるのではないでしょうか?

それはあるかもしれませんね。でも昨シーズンも緩くやっているように見えたかもしれませんが、帰って来たこともあって意外に責任を感じながらやっていたので。もう一度優勝争いができるようなチームにしていきたいです。

渡邉裕規

「東地区にいるだけで競い合っている」

――来シーズンも東地区が激戦区であることに変わりはありません。

東地区で上位になれるようになれば自然と優勝争いしてるようなものだと思っています。東地区にいるだけで競い合ってるというか、高め合っているようなところがあるので、東でいかに上位になるかが大事です。

どこが強い、弱いって言わなくても、勝敗を見れば分かりますし。昨シーズンは東の1位と2位がファイナルで戦ってますし、レギュラーシーズンでしのぎを削っているからこそ、チャンピオンシップの大事なところでの強度の高さが違ってくるんじゃないかと。

――ちなみに背番号を24から13に変えたのは、そういった強い覚悟の表れですか?

いや、もともと13ですし、昨シーズンはCB(セドリック・ボーズマン)がつけていたので。一番最初につけた番号で思い入れはあります。