Bクラブのキーマンに聞く
Bリーグ開幕が迫ってきた。日本のバスケットボール界が大きく変わろうとしている今、各クラブはどんな状況にあるのだろうか。それぞれのクラブが置かれた『現在』と『未来』を、クラブのキーマンに語ってもらおう。
構成=鈴木健一郎 写真=安田健示

大阪エヴェッサはbjリーグに初年度から参戦し、3連覇を果たした関西の雄だ。bjリーグでの11年において地元にしっかりと根を張り、ハリセンを使った応援スタイルなど独自の文化も持っている。今回のBリーグ発足においても当然のように1部に組み込まれた。さらには2016年に舞洲アリーナの定期賃貸借契約(10年間)を大阪市と結び、事実上の「自前のアリーナ」を持つ唯一のBクラブとなっている。

「エンターテインメント性の追求」、「夢のアリーナ」の2点で、Bリーグの理念を実現するべく先行する大阪エヴェッサ。その代表取締役に今夏就任したばかりの安井直樹氏に話を聞いた。


安井直樹(やすい・なおき)
1984年生まれ、大阪府出身。大阪エヴェッサ代表取締役。大阪エヴェッサのグループ会社でもあるヒューマンリソシア株式会社へ入社。2年後に大阪エヴェッサの運営会社であるヒューマンスポーツエンタテイメント株式会社(後のヒューマンプランニング株式会社)へ入社し、スポンサー営業を中心に経験を積んでチーフマネージャーへ。今年6月末より現職。自身も小学校時代からバスケ一筋で、高校時代には全国大会出場経験を持っている。

稲葉繁樹(いなば・しげき)
1981年生まれ、福岡県出身。『バスケット・カウント』プロデューサー。デジタルコンテンツ、映像、広告、音楽、イベントなど、ジャンルの垣根を自由に往来する「越境するプロデューサー」として多角的に活動している。今も多忙の合間をぬって月2でプレーする草バスケプレーヤー。20年来のブルズファンでもある。


15社だったスポンサーが約300社まで増えました

稲葉 まずは安井さんとバスケの関わりから聞かせてください。

安井 はい、小学校からバスケを始めて、高校までは本気でやっていました。高校で練習しすぎて「もう一生分は走った」という感じでしたので、大学ではサークルで楽しくバスケを(笑)。大学を出て就職したのがヒューマンリソシアという、大阪エヴェッサのグループ会社である人材派遣会社です。その2年後にエヴェッサに来ました。

稲葉 もともとエヴェッサで働きたいという気持ちはあったのですか?

安井 そうではないんですけど、ヒューマングループに入ったきっかけは、大学時代に就職説明会に行った時、ブースにエヴェッサのポスターが貼ってあったからなんです。自身もバスケットボールをしていたので、「なんか面白そうな会社だな」と。それが出会いです。

稲葉 入社からこれまではどんな業務を担当されてきたんですか?

安井 基本的には営業ですね。スポンサー営業をメインにずっとやってきました。今でもやっていますけどね。

稲葉 実際のところ、営業はうまく行っています?

安井 おかげさまで、契約はもうコンスタントにできるようになってきています。僕が入社した時は15社くらいだったと思うんですけど、今は300社に増えました。本当にありがたいことです。

稲葉 すごいじゃないですか。Bリーグになって盛り上がるとは言っても、スポンサーセールスに苦しんでいるクラブは少なからずあると思います。

安井 大阪という土地柄かもしれないですけど、人情味のある経営者の方が多く、地元のプロスポーツチームを盛り上げていこうと思っていただけているんだと思います。

稲葉 大阪のご出身だから、ネイティブとして大阪人のノリとか感覚が分かるんですかね。

安井 やっぱり大阪のチームや大阪の選手を、大阪の人は応援したい。「地元のチームだから支えてやらな」ってことですね。だから基本的には大阪の企業で成り立っています。今は、逆にスポンサーさんの枠がもうなくて、どうしようかなと思っているぐらいです。本当にありがたいことですよね。

今年は大阪出身の選手5人組、「E-FIVE」を推していきます

稲葉 じゃあ、次のアプローチはどうしましょう。

安井 次は観客動員ですね。どうやってお客さんにアリーナに来てもらうか、これを考えなければ。

稲葉 そのための具体的なアプローチはもうありますか?

安井 大阪のチームですから、大阪出身の選手が多く所属している『大阪のチーム』という位置付けにしていきたいです。過去には大阪出身の選手がほとんどいないこともありました。大阪の方に「自分の街のチーム」という意識を持ってもらいたいんです。今年は大阪出身の選手が5人になりました。この5選手と大阪市長を訪問した際、その5人組を「E-FIVE」(イーファイブ)と命名してもらったんです。今年はこれを推していこうと。

稲葉 「エヴェッサ・ファイブ」ですか。

安井 はい。やっぱりバレーボールの「ネクスト4」みたいなのがウケるんじゃないかと。ウチにはちょうど5人いてるんで「E-FIVE」です。

稲葉 大阪出身者で「E-FIVE」を作って、地元との一体感を増すという意味ですよね。地域の人たちと地域の選手たちを地域のチームで盛り立てていくというか。営業力が強いということは、つまりクラブと地域との関係性が強いということで。クラブとして今は営業が支えられるようになっていて、次は集客を取っていく。あとはチームとして良い結果を見せていくことですね。

安井 そうですね、昨シーズンを見ると、お客さんが多い試合は良いゲームをしてるんです。逆に集客が少なかったら、弱いチームが相手でも大苦戦してしまうんです。

稲葉 チーム自体の調子や相手の強さを抜きにして、集客でパフォーマンスが変わることもある、ということですね。

安井 そうです。やっぱり雰囲気に左右される部分はありますよね。僕ら運営してる側も、お客さんが多かったら盛り上がるし、逆なら「なんや……」って雰囲気になりますもん(笑)。だから次はもう、絶対に集客で結果を出したいと思ってます。僕らが観客動員を増やせればチームの成績も付いてくると思ってますし、スポンサーさんにも恩返しができると思っています。

稲葉 昨シーズンの平均観客動員は約1700人でした。

安井 2000人ぐらいのキャパのアリーナならいいんです。1700人も入るとかなり盛り上がっているように感じます。でも、舞洲の府民共済SUPERアリーナだと1700人ではかなり空席が目立ちます。これからは府民共済SUPERアリーナがホームアリーナなので、5000という数字を取りたいです。

どこにも負けないアリーナを持つだけに、安井代表は「絶対に集客で結果を出したい」と意気込む。

Bクラブのキーマンに聞く/安井直樹 エヴェッサ大阪代表取締役
vol.1「僕らが観客動員を増やせたら、チームは勝ちます!」
vol.2「アリーナから最寄駅まで、来やすく帰りやすい状況を」
vol.3「僕らは理念を達成するために活動していかなければならない」