柏木真介が手綱を握るシーホース三河に『終盤の勝負強さ』が復活「我慢して我慢して、相手の気持ちを切らす」

柏木真介が手綱を握るシーホース三河に『終盤の勝負強さ』が復活「我慢して我慢して、相手の気持ちを切らす」

2020/10/27
柏木真介

鈴木貴美一ヘッドコーチ「彼は勝利の方程式を知っています」

ヘッドコーチから選手への評価は何を基準に測ればいいのだろうか。一つはプレータイムが挙げられる。選手起用の決定権と責任を持つヘッドコーチの信頼が、その数字には表れる。もう一つはスターティングラインアップに名を連ねるかどうか。各ポジションでベストの選手が最初にコートに立つのもまた、当然のことと感じられる。

しかし、シーホース三河における柏木真介の起用は、それとは異なる。開幕からここまで9試合を終えてプレータイムは4人のポイントガードの中で最も長い20分だが、先発出場はゼロ。先発はカイル・コリンズワース、熊谷航、長野誠史に託してベンチスタート。それでも第4クォーター、終盤の勝負どころで鈴木貴美一ヘッドコーチは必ず柏木をコートに送り出す。

そこで柏木が見せるのは、熟練のゲームコントロールだ。どちらに主導権が行くか分からない試合の流れ、一つひとつのポゼッションごとにチームに必要なものを読み取り、チームが勝つ可能性が最も高いプレーを選択していく。チームは開幕から7勝2敗と好スタートを切っているが、圧勝と言えるのは28点差で勝った三遠ネオフェニックス戦ぐらい。あとは1桁リードでの勝ちが4つ、先週行われた京都ハンナリーズ戦、そして日曜の富山グラウジーズとの第2戦では20点近い点差を付けたが、第3クォーターまでは互角の展開だった。この勝負強さに柏木が大きく関与していることは、試合を見ている人なら感じ取っているだろう。

日曜の富山戦は最終クォーターを迎えた時点でわずか2点のリード。ダバンテ・ガードナーがファウルトラブルでベンチに下がり、金丸晃輔が第4クォーター開始直後に足を痛めて下がったことを差し引けば、むしろ劣勢だった。ところが柏木が落ち着いてゲームをコントロールし、三河はあれよあれよという間にリードを広げていく。残り5分で10点リード。ガードナーを戻すこともできたが、良い流れをわざわざ切る必要もない。得点源2人を欠いたまま、三河は22点差で勝利した。

強いチームの定義は様々あるが、『終盤に強さを発揮できるチーム』は間違いなくその一つ。かつての常勝軍団アイシンが持っていたその勝負強さを体現する柏木について、鈴木貴美一ヘッドコーチは「彼は勝利の方程式を知っています」と表現した。

なるほど、勝利の方程式か──。分かるようで分からない。経験豊富なガードはたくさんいても、先発の選手を差し置いて終盤を任せられ、柏木ほど影響力を与えられる選手はいないように思える。だから「勝利の方程式とは何ですか?」と、本人に聞いてみた。「いやあ、難しい質問ですね」と、知っているはずの柏木は苦笑いを浮かべた。

柏木真介

「僕もたくさん失敗をしてきていますから(笑)」

「今までやってきたことを普段通りにやることを心掛けています。特別なことをやろうとは思っていません。ただ、ゲームによっていろいろな展開があるので、ベンチにいる時も試合に出ている時も、とにかく流れをしっかり読むことは意識しています。基本的にはやっぱり我慢することです。それはディフェンスでもオフェンスでもそうなんですけど、タイムコントロールやいろいろな駆け引きがある中で、最後の第4クォーターの残り5分からいかに自分たちが我慢して我慢してプレーをして、相手の気持ちを切らすかという戦い。そこに持っていくことが大事です」

ガードナーと金丸がいない状況でのゲームコントロールは難しかったはずだ。「ウチのチームは金丸とダバンテを中心にゲームを組み立てているのがベースなんですけど」と柏木は認めつつも「その2人が抜けたことで違うゲームの組み立てをしていこうと切り替えました。あとはとにかくディフェンスとリバウンドがキーだったので、そこだけをしっかり。あとは残り5分からエネルギーをいつも以上に上げて戦うことを意識していました」

すべては前日の第1戦に競り負けたことからの反省だった。「昨日に関しては本当に我慢できなかった展開でした。ディフェンスにしてもリバウンドにしても、オフェンスでも上手く我慢できない悔しい敗戦でした」と振り返る。

しかし、その『我慢』はどうやって出していくのか。彼の役割は自分のプレーで状況を変えることではなく、チームを動かすこと。「そこは経験というかね」と柏木は今度は愉快そうな笑みを漏らした。「そうやっておっしゃってもらいますけど、僕もたくさん失敗をしてきていますから。その結果が今に繋がっています。今までアイシン時代にいろんな先輩に教わりながらやってきて、このチームで本当にいろんな経験をさせてもらったからこそ今があるので。その経験が一番大事なことだと思います」

そのキャリアの長くをアイシンで過ごした柏木は、Bリーグ1年目を終えた2017年オフに移籍するが、3年ぶりに復帰した。当時から残っているのは金丸晃輔と加藤寿一のみ。若返りを図るチームは、昨シーズンは大きなポテンシャルを感じさせながらもチームとして噛み合わなかったが、今は柏木が見事にコントロールして接戦を勝ちに繋げている。

「正直、まだまだ改善点はたくさんあります。ただ、ここ数年勝てていなかったチームで、かつ若いチームですから、やっぱり結果がすごく大事です。そういった意味では今の結果にはすごく大きな意味があります」

勝っていればチームの士気は高まる。熊谷航と長野誠史は後ろに柏木が控えていることで思い切りの良いプレーができるし、加入したばかりのコリンズワースも柏木との2ガードは明らかにやりやすそうだ。シェーファー・アヴィ幸樹も高橋耕陽も勝っている中で自信を付けている。柏木が出戻った三河は、かつての勝負強さを取り戻しつつある。

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