ジャック・クーリー

「一つの勝ち以上の価値がある」大きな勝利に

琉球ゴールデンキングスは、10月25日にホームで島根スサノオマジックと対戦。離脱中のキム・ティリに加え、前日に活躍したドウェイン・エバンスも右足の違和感で欠場と、外国籍選手がジャック・クーリーだけで戦わざるを得ない状況で、日本人選手たちのステップアップにより82-75で逆転勝ち。連勝を7に伸ばしている。

島根はサイズのアドバンテージを生かしてビッグマンのリード・トラビスが開始3分半で8得点を挙げ、13-4と先行する。しかし、琉球も岸本隆一の連続得点、今村佳太の3ポイントシュートなどで反撃。島根の22-20と互角で第1クォーターを終える。

第2クォーター、島根は琉球の意識がインサイドに向かざるを得ない隙を突き、阿部諒、山下泰弘の3ポイントシュートでリードを2桁にまで広げる。琉球も並里成、田代直希が入れ返し、オフィシャルタイムアウトは31-31と互角。しかし、ここから琉球のファウルがかさむと、島根は再びトラビスのゴール下で加点する。前半だけで17得点を挙げたビッグマンの活躍により、島根が7点リードして前半を終えた。

しかし、第3クォーターに入ると琉球が主導権を握る。要所でのトラップなど激しくボールマンにプレッシャーをかける守備で得点を簡単に許さない。さらにオフェンスでは積極的に仕掛けることで島根を残り4分で5ファウルに持ち込む。これで流れを引き寄せると、堅守から走る展開に持っていき、このクォーターを28-14と圧倒して7点リードと一気に逆転した。

第4クォーター早々、島根はクーリーがベンチで休んでいる時間帯にゴール下で連続得点を挙げて追い上げるも、クーリーがコートに戻るといきなりゴール下でバスケット・カウントを決め、島根に行きかけた流れをすぐに断ち切る。琉球はさらに今村のバスケット・カウントなど怒涛の13連続得点で一気に勝負を決めた。

帰化選手に外国籍3名が出場した島根に対し、外国籍選手が人だけとサイズの圧倒的不利を抱えながらの逆転勝ちに、琉球のキャプテン田代直希は「一つの勝ち以上の価値がある。こういう状況でも勝ちきれたのは良い経験」と大きな手応えを得ている。

後半に限れば33失点に抑えるなど堅いディフェンスができた要因をこう語った。「高さだけでなく、相手の外国籍選手はスピードもあり、そこでのミスマッチもありました。そこでうまくトラップを使うだけでなく、チームとして当たり負けない。気持ちで負けないようにと常に話していて、そこをうまく試合で出せました」

岸本隆一

「全員でファイトしてチーム力を落とさない」

琉球の藤田弘輝ヘッドコーチは、会見の第一声で「たくさんの思いが乗った試合でした」と語り、その理由としてどんな状況でも沖縄のファンを失望させる姿を見せたくないと強調する。「外国籍選手が1人とタフな状況であることは分かっていましたが、コロナの大変な中でも、こうして応援に来てくれている人たちの前で弱い試合を見せたくない。僕たちの試合を見て、明日から頑張ろうと思う試合をしたかったので、そこでファイトできたことが良かったです」

この指揮官の思いに選手がしっかり応え、外国籍1人でも勝ちきれたことの収穫をこう評する。「アルバルク東京さんが良い例ですが、強いところは選手が抜けてもチーム力が落ちません。僕たちもそこを目指している以上、誰かがいなくとも全員でファイトしてチーム力を落とさないことを見せられたのは良い兆しです」

一方、手負いの相手に痛い逆転負けを喫した島根の鈴木裕紀ヘッドコーチは、明暗を分けるポイントとなった第3クォーターを「安易なファウルから一気に流れを持っていかれました。また、その最中もレフリーと戦ってしまった選手がいて、まだまだ戦うチームを作りきれていないと感じました」と振り返る。

さらに「前半にインサイドで得点できたので、相手はそこの対応をしてくる。逆に周りがしっかりボールを散らして仕掛けようという話をハーフタイムにしていましたが、ベンチから良い方向に導ききれなかったです」と、オフェンスの失速を悔やんだ。

これで琉球は7連勝、島根は3連敗となった。琉球は地区首位へ向けさらに弾みをつけるため、島根はこの悪い流れを食い止めるため、それぞれ過密日程の中で28日の水曜ナイトゲームに臨むことになる。