NBA

サラリーキャップの金額が決まるまで、各チームは動けず

NBAは先日2019-20シーズンを無事に終了した。新型コロナウイルスの感染拡大で3月中旬からレギュラーシーズンが中断、オーランドのディズニーワールド内に『バブル』と呼ばれる隔離エリアを設けて再開へとこぎ着け、3カ月かけてファイナルまでの日程を消化した。

『バブル』という奇策を無事に成功させたことで、現在は選手はもちろん、リーグや球団関係者は胸をなでおろしているところだろう。だが、来シーズンに向けては様々な課題が残されている。フリーエージェンシーはいつからか、2020-21シーズンの開幕はいつなのか、アリーナに観客を入れるのか、リーグはこれらの質問に早急に回答しなくてはいけない。

コミッショナーのアダム・シルバーはNBAファイナル直前の会見で、来シーズンのスケジュールについて「ほとんどの質問に対する回答を持っていない」と語っていた。

今年のNBAドラフトはヴァーチャルで11月18日に開催される。ティンバーウルブズ、ウォリアーズ、そしてホーネッツが上位3位の指名権を保有している。大学バスケットボールのシーズンが短縮されたため、今年はレギュラーシーズンのパフォーマンスとズームでのインタビューなどを元に指名選手を選考しなければならない。それでも、スケジュールが決まっているだけ、各チームの関係者は動くことができる。

問題はそれ以外だ。フリーエージェント解禁は通常ならドラフトの1週間後だが、今年はまだ決まっていない。理由は来シーズンのサラリーキャップとラグジュアリータックスが確定していないからだ。新型コロナによるシーズン中断と無観客試合、『バブル』に費やした巨額の経費が影響して、本来ならサラリーキャップの限度額は大幅な減額になるところ。しかし、これを強引に下げてしまうことでの混乱は予想が付かない。NBA選手会の反発も相当に大きいだろう。

ここまでNBAの市場規模は右肩上がりで成長を続け、それと足並みを揃えてサラリーキャップ上限額は引き上げられ、選手たちは高給取りになっていった。新型コロナウイルスという未曽有の危機を受け、その影響が今後どれだけ長引くかの予想が難しい中で、リーグは決断を保留している。

そうなると、各チームは動くに動けない。フリーエージェントの選手の獲得にも動けないし、契約が残り1年になった選手に新契約を提示するかトレードするかも決められない。NBAファイナルが終わってまだ1週間しかたっていないが、開幕が1月中旬だとしたらあと3カ月しかない。各チームのGMはしびれを切らしてもいい頃だ。

「我々が物事をリードする立場にいることは分かっている。選手会との協力が必要な事項をすべて解決できるかは分からないが、指針は示したい。選手会との協議を元にサラリーキャップとラグジュアリータックスを決めることになる」とシルバーは語る。

来シーズンの開幕時期についてシルバーは「1月の可能性が濃厚」としているが、現時点ではスケジュールは確定していない。リーグと選手会は経済的損失をどう扱うか協議している最中だ。リーグは来シーズン開幕からアリーナに観客を入れることを希望しているが、アメリカ各地での感染『第二波』の襲来を受け、専門家の意見を参考に感染リスク回避のためシーズン開幕を遅らせることも検討されている。