プレーオフで最も注目を集めたナゲッツのシーズンが終了、ジャマール・マレーが持つ『スタッツ以上の何か』とは?

プレーオフで最も注目を集めたナゲッツのシーズンが終了、ジャマール・マレーが持つ『スタッツ以上の何か』とは?

2020/09/28
ジャマール・マレー

あらゆる面で成長し、マックス契約に相応しいエースに

1年前、ナゲッツがジャマール・マレーとマックス契約を結んだ際には、批判的な意見ばかりが出てきました。同じ年にドラフト指名されたベン・シモンズのような有無を言わさぬ身体能力やプレーメーク力はなく、ブランドン・イングラムのような圧倒的な高さとポテンシャルもなく、ジェイレン・ブラウンのような激しいディフェンス力も持ち合わせていないマレーにチームの未来を託したことは、ギャンブルにしか思えないと言われました。

シュート能力が高くて得点力はあるものの平均得点は20点に届かず、5本に満たないアシストはポイントガードとしてはプレーメーク力に欠けており、弱点として狙われたディフェンス力を補うほどのプラスをもたらすとは言い難い。そんな評価をされていたマレーに対して『スタッツ以上の何か』を評価したからこその、マックス契約でした。

1年前には、いやプレーオフが始まる直前までコアなナゲッツファンしか知らなかったマレーの価値は、ギリギリの戦いが続くプレーオフで世界中に披露されました。

負けたら終わりという試合で40点オーバーを何度も記録しただけでなく、第4クォーターの3ポイントシュート成功率は通算で59%という信じられないような『勝負強さ』を見せたマレーは、最高のクラッチプレイヤーとして認識されるようになりました。スタッツに残る得点数ではなく、勝負を決められるメンタリティは最も重要な『何か』として、マレーの評価は跳ねあがりました。

ただし勝負強いプレーをすること自体は昨シーズンのプレーオフでも証明済み。今シーズンの違いはそれをチームの勝利に繋げたことです。ニコラ・ヨキッチを中心とするナゲッツのオフェンスは、パスワークとオフボールムーブが持ち味であり、個人技で決めるプレーを強く打ち出してはバランスが悪くなります。

頻繁にダブルチームをされたマレーですが、個人技にこだわることなくシンプルにパスを出してアシストを増やしただけでなく、コーナーからシューター的にプレーするようなこともありました。その個人技を『チーム戦術の一つ』に組み込めるように成長したことで、勝負強さは輝きを増したのです。

またナゲッツはリードしていると極端にペースを落として試合をコントロールしにいきましたが、テンポを落とすことはオフェンスのリズムを失うリスクもつきまといます。実際にナゲッツもショットクロックがなくなってからのタフショットが増えましたが、マレーはショットクロック7秒を切ってからの3ポイントシュートでも40%を超える成功率を残し、チームのスローダウンを成立させました。

チームオフェンスの一部として得点を奪い、試合のテンポをコントロールした上で発揮される勝負強さはスタッツ以上に印象的でした。タフショットでも関係なく高確率で決めるマレーの得点力は、粘り強く勝利をつかむナゲッツの脅威そのものでもありました。

一方で、ナゲッツのベースにあるのはディフェンス力です。特に昨シーズンのプレーオフでは弱点としてマレーが徹底的に狙われ、ナゲッツが勝てない理由となりました。しかし、このディフェンスを1年間で劇的に改善しました。優れたディフェンダーを揃えるナゲッツは、個人がマンマークで止めるべき範囲が広く設定されているだけでなく、オフボールでのスイッチやヘルプとローテーションを繰り返すため、判断力も求められる難しいディフェンスシステムを採用しています。

マンマークが弱いだけでなく、注意力が足りずにローテミスによってフリーを作っていたマレーでしたが、このプレーオフでは信じられないくらいに改善されました。また一番楽な相手を守ることが多い代わりにディフェンスリバウンドにも積極的に参加しており、チームの中で自分がするべきことを理解して実行し続けました。しかも、毎試合オフェンスの中心として40分以上プレーしながら、ディフェンスでも手を抜かなかったのです。

マレーが示した『何か』とは、勝負強さだけでなく、試合をコントロールし、チーム戦術を表現し、ディフェンスでも貢献していけるようになった『成長力』でもありました。キャリア4年目の23歳にして彼は、マックス契約に相応しい高次元でプレーする選手に成長しました。これらの特徴はヨキッチにも共通する要素であり、ナゲッツは単に優れた選手に未来を託したのではなく、強いメンタリティで成長できる選手を信じたのです。

しかし、常にギリギリの戦いを勝利を導いてきたマレーとヨキッチは、疲労が溜まっただけでなく、ハードマークでケガも抱えて満身創痍でした。カンファレンスファイナルでは、これまでであれば勝負強さを発揮していたクラッチタイムで、レブロン・ジェームスの支配力に抵抗できませんでした。レイカーズのディフェンスが素晴らしかったのは間違いないものの、カワイ・レナードやルディ・ゴベア相手にも決めてきた2人だけに、疲労とケガの影響は明らかでした。

ジャズとクリッパーズ相手に1勝3敗から逆転したメンタリティは素晴らしいですが、楽に勝負を決める強さを持ち合わせていれば、レイカーズとのシリーズはもっと白熱したはずです。勝負強さを発揮せずとも勝てるようにならなければ、優勝にたどり着くのは難しい。そう痛感したプレーオフになりました。

試合後にマレーは「メディアは自分たちを評価してくれなかった。勝てないと思われて、それが心の支えになった。優勝候補のレイカーズと戦うところまで勝ち上がったことで、周りを驚かせることができた」と語りました。来シーズンのナゲッツはギリギリの試合を制する『勝負強い』チームとしてではなく、優勝候補の一員に相応しい強さを発揮してプレーオフを戦う必要があります。マレーには、まだまだ成長してもらわなければいけません。

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