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『Linsanity』から4年、リンがNYに帰還

『アジア系選手はNBAで通用しない』という定説を一変させたジェレミー・リンが、ネッツの一員として4年ぶりにニューヨークに戻ってきた。

台湾人の両親を持つリンは、NBAでの2年目にあたる2012年、ニックスでの初先発から5試合で合計136得点を挙げる活躍で、ニューヨークで時の人となり、尋常ではないという英単語『Insanity』から『Linsanity』という造語が生まれるほどの社会現象を起こした。

一大ブームから4年が経過し、今度はブルックリンを本拠地とするネッツのプレーヤーとなったリンは、当時について、「一夜ですべてが起きたようだった」と、7月20日に行なわれた入団会見で振り返っている。

「(Linsanityが)起こったときはうれしかった。嘘は言わない。うれしかったよ。ただ、その後は重荷になってしまったんだ。ここまで大きな動きに自分が関与しているとは思わなかったから。でも、時が経った今では、毎シーズンを受け入れられているし、感謝している。これまでよりも楽しくやれるようになって今に至っているんだ」

ニックス時代のリン旋風のすごさは、当時のニックス戦のチケット価格にも表れている。『TicketsNow.com』によれば、2012年2月17日に行なわれたホーネッツ(現ペリカンズ)戦のチケット最高価格は、3919ドル(現在のレートで約42万円)にまで上った。

ニックスからロケッツを経て、昨シーズンはホーネッツのシックスマンとして活躍したリンは、メディアからブルックリンで再び『Linsanity』が起こるかを聞かれると、こう答えた。

「僕は僕のまま。以前のような現象と比較するつもりはない。周囲は『Linsanity』現象と今の僕を比較するだろうけど、僕はただプレーを続けるだけさ。悲観しているわけでも怒っているわけでもない。以前のことがあるから、特異なものと見られるかもしれないけど、僕は自分のプレーを続けていくだけ。どう言われるかは、それは皆さん次第だ」

新天地であるネッツを取り巻く状況は、決して明るくない。昨シーズンは21勝61敗と大苦戦。2013年に成立させた『チーム史上最悪』と言われるトレードの余波を今も受けている状態だ。

セルティックスからポール・ピアース、ケビン・ガーネット、ジェイソン・テリーをトレードで獲得した際、ネッツは2014年、2016年、2018年のドラフト1巡目指名権、2017年の1巡目指名権交換オプションを譲渡した。つまり、即戦力の新人を指名するには、3年後の2019年まで待たなければいけないのだ。

早急な再建が難しい中、リンはチームの流れを変える要因の一つになれればと言う。

「フリーエージェントとなって考えたのは、起業したばかりの企業への投資のようなこと。今の段階の製品を見る必要はなくて、チームの根幹を成している部分だったり、チームに何ができるか、という部分が大事なんだ。経過を踏んでいく中で、最終的に出来上がるものが大きく変わることだってあり得る。それはスタートアップ企業の共通点みたいなもので、FA市場について考えた時に思ったことだった」

「僕はヘッドコーチのケニー・アトキンソン、ブルック・ロペス、そして自分自身に賭けた。自分が行きたい方向に進めないと感じたら、契約なんてしない。たしかに、昨シーズンの結果だけを見たら、自分たちが行きたい方向に進んでいないことが分かる。でも、これはプロセスであり、挑戦なんだ。将来的に到達可能なチーム像を信じている。今はまだ到達できていない。それは皆が理解している。でも、そういうことなんだ」

ニックスでの活躍が今のリンの地位を築いた。ネッツでは念願の先発の座を勝ち取れるであろうか。