富山グラウジーズは今オフ、若手No.1の得点能力を誇る岡田侑大、『ミスター・トリプル・ダブル』ことジュリアン・マブンガを獲得し、Bリーグ屈指の『個性派集団』となった。その中心にいるのは、富山を牽引してきたリーダーの宇都直輝だ。浜口炎ヘッドコーチからも「チームを勝たせて代表復帰してもらいたい」と期待される宇都に、新シーズンへの思いを聞いた。
「ドライブをさらに生かすために必要な3ポイント」
──外国籍選手がいない状況ですが、信州ブレイブウォリアーズとのプレシーズンゲームに完勝しました。良い感触を得ているかと思いますが、特にどの部分が良い影響を及ぼしていますか?
日本人選手だけという意味では例年より良い準備ができています。炎さんが一番大事にしていることがコミュニケーションで、それを普段から意識してやっていることで、試合中も炎さんに言われたことを忠実に再現できたと感じています。
第1クォーターは競って、第2クォーターで10点差、後半に離していきました。前半は苦戦したんですけど、相手のやりたいことに対し選手間で話してアジャストできたのがあの結果に繋がったと思います。僕らは40分をかけて試合をしていて、後半にアジャストできたと感じました。
──コミュニケーションが取れている要因には何が挙げられますか?
例えば、『シャッフルランチ』といって、2週間に1回はヘッドコーチと3人で食事に行ったり、レクリエーションでは選手だけじゃなく監督やスタッフ全員を混ぜてやったりします。こうしたことを真剣に取り入れることで、後輩も意見を言いやすいし先輩も話しやすくなります。接する時間が多いほどバスケの話が出てきますし、そういうところで信頼関係が築けているかと。炎さんが選手間の繋がりを大事にしていることは大きいです。
──ちなみにプレシーズンゲームでは3ポイントシュートを打ったそうですね。基本的に3ポイントシュートは打たないイメージでしたが、チームとして求められているということですか?
3本くらい打ちましたね。時間がないから仕方なく打つのではなく、みんなが作ってくれたシチュエーションと、1対1で離された時に打ちました。
基本的にチームとして3ポイントのシューティングが多いです。これはいつも言っていることですが、チームメートには気持ち良くプレーしてもらって、やりやすいと思ってもらえるようなポイントガードになりたいと思っています。侑大はドライブが得意なので、僕が3ポイントを打たなければ僕のマークマンが彼に寄って、思うようなプレーができない可能性を考えて、3ポイントを打つべきだと考えていました。炎さんも直輝が代表に戻るには3ポイントを打てたほうが良いと言っていて、富山では最低でも1試合3本は打ちたいねと言ってくれました。「決めてこい」ではなく「打つことに意味がある」から、入る入らないは二の次と言ってくれて、それで気持ちが楽になっています。
──以前に話を聞いた時は、ミドルシュートやドライブに絶対的な自信があるから、得意ではない3ポイントシュートはあえて狙わないと言っていました。
そういう風に考えていたんですけど、代表に入って世界と戦った時に3ポイントがあったほうがいいなと感じました。ドライブとミドルシュートには絶対的な自信があるんですけど、さらに上を目指すとなった時に3ポイントのオプションがあったほうがいいと。僕が得意なドライブをさらに生かすために必要な3ポイントというイメージです。
ウチが勝ち始めた時に相手が何をしてくるかを考えた時に、僕の3ポイントを捨ててディフェンスしてくる可能性もあります。そこで打てればディフェンスも他に寄りづらくなります。打たないのと、確率が悪くても打つのとでは全然違くて、3ポイントがあることを見せるだけで対応は変わってきます。
「ハンドラーはたくさんいたほうがいいに決まっています」
──ちなみにジュリアン・マブンガ選手が富山に来ると分かった時はどのように感じましたか?
僕はどんな選手でも合わせられる自信があるので、良い意味で誰でもいいというか、楽しみだなと思ったくらいですね。ジョシュ(ジョシュア・スミス)が来た時はカッティングとか脇役に徹して、レオ(ライオンズ)が1対1をするならそれに合わせたプレーを選択してきましたし。これまで自分がしてこなかったことをこの2シーズンやってきたので、ポイントガードとしての引き出しは増えました。
──「ボールを持ちたがる選手が多すぎる」と懸念する声も聞こえてきますが、浜口ヘッドコーチはボールハンドラーが増えることは良いことと言っていました。宇都選手も同じように感じますか?
間違いなくそう思います。ジュリアンと僕と侑大はボールを持ったプレーが得意なだけであって、他のプレーができないわけではありません。ボールを持ちたがると思われるかもしれないですが、僕らはプロフェッショナルですし、ボールを持たなくても活躍できる自負はあります。侑大はまだ若いので自分を貫いてボールを持ってほしいですけど、僕やジュリアンは年齢的にも中堅ですし、経験もあるのでチームのために違うことができます。いつでもハンドラーが試合に出ている状況を作れるので、ハンドラーはたくさんいたほうがいいに決まっています。
──以前、浜口ヘッドコーチは「チームを勝たせて代表復帰してもらいたい」と宇都選手をキーマンに挙げていました。選手としてもモチベーショが上がるのではないですか?
上がりますね。実は2年目の(ミオドラグ)ライコビッチの時も代表に入れるって言ってもらって、実際にその時に代表に入ることができました。僕自身も身が引き締まりますし、期待に応えたい気持ちになります。有言実行したいですね。
──どの部分を向上させれば、代表にもう一度選出されると思いますか?
3ポイントをワイドオープンで決めれるようになれば、ディフェンスも警戒せざるを得なくなり、ディフェンスの間合いが変わってきます。例えば今は1m離されてるとするじゃないですか。3ポイントを打って間合いが15cm縮まれば、僕はもう抜けるんですよ。今まではタフになっても1mで抜けていた。それが15cm縮まれば余裕なんです。相手はそれだけで面倒くさくなると思いますよ。
「3ポイントが打てるようになれば世界が変わる」
──代表に選ばれるには長所をアピールすべきですが、過去2シーズンは自分の得意なプレーを抑えて我慢していたと思います。
自分を殺してでもチームが勝つことが優先なのは当たり前で、抑えていたつもりはありません。決定率が高いジョシュを選択することは正解だったと思いますし、実際にチャンピオンシップにも出れましたから。
僕はピック&ロールが得意なんですけど、過去2シーズンはピック&ロールの数と成功率でリーグ最下位でした。要するに僕がピック&ロールをあまりしていないからです。今のバスケ界はピック&ロールが主流です。アンダーされた時に3ポイントが打てるようになれば、ファイトオーバーされた時にミドルシュートも決められます。いろいろなオプションが増えて、それだけで世界が変わると思っています。
確かに自分の特化したところを出せていないせいで目にもつきにくくなったし、代表候補にも入りませんでした。そこは少し難しいです。でもこれまでの引き出しは十分に出せると思いますし、今シーズンはそうはならないと思っています。
──自身の再起も含め、今シーズンのチームにかなり自信があるように思います。あらためてファンにメッセージをお願いします。
まず、プレシーズンゲームで観客の前でプレーできたことは単純に楽しかったです。声を出せない状況でしたけど、いるだけで試合として成り立っていたというか、真剣に試合ができました。
今シーズンは大声が出せないなど観戦ルールがあると思いますが、その中でもファンの思いは伝わります。特に富山の人たちは熱いので、いるだけで伝わるんです。その思いが僕らの力になるので、これからも応援し続けてほしいです。
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