文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

個人能力で試合の流れを呼び込んだファジーカスと八村

6月15日、バスケットボール男子日本代表は韓国代表を迎えた国際強化試合の第1戦を行った。アメリカから戻って来た八村塁、日本国籍を取得したニック・ファジーカスと、注目の新戦力を揃って先発起用したAKATSUKI FIVEが88-80で大勝している。

立ち上がりは劣勢を強いられた。前から激しく当たるプレッシャーディフェンスに戸惑う間に、シンプルにインサイドを攻める韓国に苦しみ、開始3分で2-10とビハインドを背負う。だが、今の日本代表には個人の力で劣勢で踏みとどまることのできるタレントがいる。ファジーカスがインサイドで寄せられながらもシュートをねじ込み、八村が落ち着いたミドルシュート、続いて強引な仕掛けで得点をもぎ取り反撃開始。富樫勇樹がオフェンスリバウンドをティップでつなぎ、ファジーカスがフリースローにつないで14-14と同点に追い付く。

日本の勢いは止まらない。ボールをプッシュする八村に韓国が過度に寄せると、冷静に状況を見定めて外にさばき、比江島慎が余裕を持って3ポイントシュートを沈めて21-18、初のリードを奪った。第1クォーターの最後は八村のブロックショットで韓国の反撃を封じ、27-20で終了。2-10から一気に逆転、ファジーカスと八村の爆発力が遺憾なく発揮された結果だ。

観客の度肝を抜く八村のダイナミックなアタック

結果的に、日本代表はこのリードを最後まで守り続けた。第2クォーター残り7分半、八村がコースト・トゥ・コーストからのユーロステップというド派手な得点を決めて33-23と10点差に。韓国が連続得点で勢いに乗りかけたところで、八村はポストプレーから背中で押し込んでのゴール下をあっさり決めて、ゲームの流れを渡さない。

もう一人目立ったのは竹内譲次だ。ベンチスタートではあったがファジーカスと組めばパワーフォワードで、八村と組んではセンターでというローテーションでプレータイムを得て、リバウンドにブロックにと躍動。Bリーグのチャンピオンシップで相手のエースをことごとく封じた自信を代表に持ち込み、オフェンスでも積極的なアタックで存在感を見せた。

インサイドで優位を作れない韓国は、日本のポイントガードのボール運びを狙い、強烈なプレッシャーを仕掛けて挽回を図るが、日本のポイントガード陣はすぐにアジャスト。相手の勢いをうまくいなして優位を生かしていく。また韓国のフィジカルと運動量に対し、真っ向勝負で上回ったのが馬場雄大だった。こちらも竹内と同様にA東京で得た自信を代表に持ち込み、アグレッシブなディフェンスと、相手の勢いを上回るハッスルで日本に活力を与え続けた。

指揮官ラマス「良い選手がいる時に問題は起こらない」

ファジーカスは27分半の出場で28得点13リバウンド、八村は26分の出場で17得点7リバウンド4アシスト。2人の新戦力は攻守に圧倒的な存在感を見せ、終盤には疲れた様子も見られたものの最後まで自分のタスクをきっちりとこなし、なかなか勝てなかった日本代表にきっちりと勝利をもたらした。

指揮官のフリオ・ラマスは会見場に上機嫌で現れた。「最初の5分間はリードされたが、それ以降は試合をコントロールした。デイフェンスもしっかりできてリバウンドも取れて、それがファストブレイクの得点、ファストブレイクからのフリースローにつながり、ペイントタッチもできた。それで試合をコントロールできたと思う。良い内容だった」

どんなタレントであっても、チームに新たに加えて機能させるのは難しいものだが、ラマスはそれを否定する。「彼らが持つポテンシャルをベースとして、彼らをうまく生かすためにシステムを変更した部分はあります」と認めつつも、「良い選手がいる時に問題は起こらないものです」と断言した。

明日は移動日で、17日には仙台で再び韓国代表と対戦する。今回の2試合はチームとしての完成度を高める機会であると同時に、12人の登録メンバーを選ぶテストでもある。ラマスは言う。「今日のメンバーが毎試合のスターターとは限らない。次の試合には次の選手を試すかもしれない。今日プレーした11人のうち7人はチームに固定する選手だと思っている。もちろん全員にチャンスがあるが、次の予選のためにもベースを固めていかなければならない」

韓国は主力選手を複数欠いており100%の姿ではないが、それでも勝ち切れたことは大きな収穫。しかも内容も、近年最高と見なしていいものだった。Window3をベストの状態で迎えるために、第2戦も勝つことができれば大きな自信につながるはずだ。