Bリーグチェアマン大河正明『現場百回』vol.2「バスケの起爆剤、仙台への期待」

2018/06/14
Bリーグ&国内
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文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦、古後登志夫
1958年5月31日、京都府生まれ。2015年にサッカーのJリーグから新リーグ創設を目指すバスケ界へと舞台を移して組織再編を手掛け、Bリーグの初代チェアマンに就任。現在は「BREAK THE BORDER」をキーワードに、新たなプロリーグの盛り上げに尽力している。日本バスケットボール協会の副会長も兼任し、立ち遅れたバスケットボールの環境整備、強化に邁進する。高校生までバスケ部。

スポーツ観戦に慣れ親しんだ文化がある地方都市への期待

──今回は仙台について聞かせてください。仙台89ERSは1年でのB1復帰とはなりませんでしたが、経営陣が変わって強くなろうという意欲を見せています。また今週末にはゼビオアリーナ仙台で日本代表の強化試合があり、リーグの復興支援活動『B.Hope』も宮城で行われます。

実は、日本バスケットボール協会の競技運営担当が作った最初の案では、17日の試合は仙台ではなかったんです。Bリーグのチームがない地方都市だったので、そこは仙台でやろうと私からお願いしました。八村塁選手は仙台の明成高校の出身で、代表デビュー戦が凱旋試合になれば面白いですよね。もともと『B.Hope』の活動が宮城県で予定されていたということもあります。

仙台には明成もあるし仙台高校もあります。東北や北陸はアリーナスポーツが盛んで、その東北の一番大きな都市ですから、バスケどころとして仙台への期待はやはり大きいです。今のところ秋田のほうが勢いがありますけど、東北の中心地としてバスケの起爆剤になってほしい。

見方を変えると、東京、名古屋、大阪圏じゃない4大地方圏、つまり札幌、仙台、広島、福岡はプロ野球もJリーグもあって、スポーツ観戦に慣れ親しんだ文化があります。北海道は1年目に苦労したけど立て直して、アリーナの入場者数も大きく増えました。福岡はB3スタートから一足飛びにB1まで来ました。広島はB2で苦戦していますが、実際にチケットを買ってくれるお客さんが多くて、今シーズンB2の中でもトップクラスでした。応援の風景やチアの素晴らしさも含めて、ポテンシャルを発揮しています。そうなると仙台だけが本来の力を発揮できていないということになりますが、そこはやっぱり期待したいんです。

──仙台89ERSは経営陣変更がありました。これはリーグとしてどう受け止めていますか?

オーナーチェンジは一番大きなインパクトがあるので、報告は随時受けています。bjリーグは日本中に地域に根差したプロクラブを作りました。ただ、当時は2億円ぐらいあれば上位で十分やっていける規模でした。でもBリーグになって、投資をしてバスケットボールで売上を増やし、回収していく時代になっています。そこで仙台の中村彰久代表はチームを強くするために良い選択肢を選びました。中村代表の勇気ある決断、それを受けてやっていこうとする新しい経営陣には敬意を払いたいです。

志村雄彦選手が引退するということでホーム最終戦を見に行き、新しい経営陣の方々とは少し話をしました。若い経営者になって、選手や施設にしっかり投資して事業規模を拡大して強くなろう、という前向きな姿勢を感じました。強くなりたいのはどのチームも同じですから、すべてがうまく行くことはないかもしれませんが、そういう道に進み出した印象は受けます。

「フィジカルとメンタル両面でタフになることを目指す」

──リーグの使命の一つが『世界に通用する選手やチームの輩出』です。Bリーグができて2シーズン目が終わりましたが、日本代表の強化にBリーグは貢献できていると感じますか?

今のところ4連敗で偉そうなことは言えませんが、一つの表れはルカ(パヴィチェヴィッチ)が指導したアルバルク東京の優勝です。彼らはどこにも負けないだけの練習をして、インテンシティ溢れるディフェンス、ピック&ロールのオフェンスをやり通して優勝しました。ここで他の指導者、特に日本人コーチが目覚めるべきだと思います。リーグ戦の合間に代表戦があると選手のコンディション管理が厳しい、なんて考えはもう捨ててほしい。フィジカルとメンタル両面でタフになることを目指すという意味で、A東京の優勝は意味があったと思います。

この2年間、A東京に象徴されるように堅守速攻、トランジションのバスケットが日本の目指すスタイルの一つになっています。日本代表にしても、2年前のバスケットと今のフリオ・ラマスがやっているバスケットでは大きくレベルアップしていると思います。まだまだ結果は出ていませんが、世界に通用する選手やチームの一歩目を踏み出すところが見えていると思います。

──渡邊選手や八村選手の影響で、バスケ少年が目指すエリートコースはBリーグではなくアメリカ行きになっていると思います。田中力選手もアメリカのIMGアカデミーに進みました。それはそれでアリですか?

今は世界におけるBリーグの立ち位置がはっきりしません。一つは、これまでの日本バスケには代理人との接触がほとんどなかった。ですが、ディアンテ・ギャレット選手を連れてきたエージェントに始まり、日本の市場に目が向けられるようになってきています。ラマスが日本代表のヘッドコーチになったことも、Bリーグの注目度を上げる要因になりました。NCAAを経由してNBAに、これがバスケット界の王道のコースかもしれませんが、Bリーグでの活躍が認められた選手がGリーグを経由してNBAにつながっていく、そういう形を目指しています。

Jリーグにはそういうところがありますよね。そうなるためにはBリーグに来る外国籍選手のレベルや出場機会を世界標準にもっと近づける必要もあります。「Bリーグで鍛えられた選手だから世界で通用する」と言われるようにしたいです。

社会的責任活動は「やんちゃなBリーグの好対照な世界観」

──今回、代表の試合のチケットが即完売にならないのは少々驚きでした。

Bリーグのチャンピオンシップやオールスターがすぐに完売するのに比べると、まだ日本代表にコンテンツ力がないことの表れです。本来は一番盛り上がるコンテンツのはずなのに、そこがまだ浸透していない。要は注目されていないのですが、伸びしろはあります。ワールドカップ予選で4連敗、徳俵に足が掛かっている状態ですが、ファジーカス選手の日本国籍取得と八村選手の帰国があって、他の選手たちもBリーグでしっかり鍛えて臨む2試合です。『土壇場からの奇跡』をここで起こして、代表が自分たちの注目度を上げてくれることを願います。

──バスケットボール選手会の活動とともに『B.Hope』による復興支援活動も行われます。Bリーグは立ち上げの時期から社会的責任活動に力を入れていて、特にチェアマンはそこを大事にしているようですが、その意義を教えてください。

アメリカの『NBAケアーズ』に触発された部分は大きいです。また、Bリーグは女性や若者をターゲットにして、ブランドイメージをあえて『やんちゃ』にしているのですが、やんちゃなBリーグが一方では社会的な課題に真剣に取り組む、その好対照な世界観を作りたかった。若い人が真剣に課題に取り組む、そういう姿勢を大切にしました。その中でパートナーとなっていただけるところも増えて、活動の輪が広がっています。

今年のオールスターは震災復興支援と絡めて熊本で開催しましたが、基本的には今後も続けていきたいです。東日本大震災の被災地への支援も同じですが、継続していくことが大切です。またA東京の人形櫂世くんの復学支援プログラムもすごく良い取り組みだったと思っていて、これもまた続けていきたいと話し合っています。

──最後に、今週末に韓国代表と戦う日本代表への期待を教えてください。

圧倒的なパワーで韓国に勝利するような試合を期待したいですね。1番から3番ポジションのところでは韓国にも決して引けを取らない。むしろ日本が上回っているぐらいだと思っています。そんなところで今までは韓国のインサイド陣にやられてきたのを、八村選手とファジーカス選手には覆してほしい。もちろん彼らだけでなく、日本のベストメンバーで勝利してほしいです。