文=丸山素行 写真=野口岳彦、鈴木栄一

八村、ファジーカスの加入で広がる引き出し

昨日、ワールドカップアジア1次予選Window3に挑む代表メンバーが発表された。ゴンザガ大の八村塁、帰化選手のニック・ファジーカスが新たに名を連ねて注目を集める中、この1年で代表に定着しつつある宇都直輝もしっかりとメンバーに名を連ねた。

新たなエースとなるであろうファジーカスの加入による恩恵を宇都はこう歓迎する。「ニックはピック&ロールするとポップしてくれるので、デカい人を引っ張ってくれます。僕はドライブが得意なので、もし自分にデカイやつがつけば、ニックに外から打たせますし、ニックに寄るようであれば自分が1対1ができるので。中も外も相手のディフェンスに合わせた動きをしてくれるので、すごくやりやすさを感じています」

宇都の強みであるドライブ力は、リングへのアタックを重要視するフリオ・ラマスヘッドコーチのバスケにマッチする。ファジーカスと八村が加わってもなお、宇都は自らの武器をフルに活用していくつもりだ。「僕が求められているものはクリエイト。ドライブしてキックアウトだったり、ゴールにアタックすることがメインになります。中に行ける力があるのは自分にとって良いことですし、それができるのは限られた人間だと思うので、そういった点を自分の中で整理して速い展開に持っていったり、自分にできることをしっかりやりたいです」

大型ポイントガードとしての地位を確立しつつある宇都は「身長がある分、ディフェンスでもガードからプレッシャーをかけられる。そういったところも期待されていると思う」とミスマッチにならない身長の利を押し出す姿勢だ。

宇都がフィニッシャーとなる高速トランジションに期待

宇都のドライブはパスにも生きる。ドライブでディフェンスを引き付けてからのパスで味方のイージーシュートの機会を演出し、2年連続でアシスト王となった。そのスタイルは代表でより生きると自信をのぞかせる。

「自分で得点するチャンスを作れる分、アシストもやりやすい。八村選手はリバウンドを取って自分でボールを持って行けるので、速い展開に持っていきやすくなるのでは」

富山グラウジーズでは、リバウンドを取って宇都がボールをプッシュするプレーが一つの武器だったが、「もともと僕が自分で運ぶのは速くするため」と宇都は言う。宇都以外にもボールをプッシュできる選手がいれば、宇都がフィニッシャーになる形、さらにはそこからのバリエーションも出てくるはずだ。

「練習に参加してまだ日が浅いので、そういうシーンが多いわけじゃないんですけど、一緒にプレーしていて兆しはあります。これから一緒にやっていく上で未来が見える。そう思って2人と話したりしてます」

「レベルは違いますけどメンタル的には一緒」

リーグで結果を出し、フリオ・ラマス体制になってからずっと代表に呼ばれている宇都にとって、代表選出は目標ではなく日常になりつつある。そのせいか、かつては存在した「必ず代表に残る」というギラギラ感はなく、落ち着いた様子が印象的だ。

「シーズンを戦ってきた自信もありますし、Window2でやった部分も大きかったので。そういった面では少し自信になって、考え方も少しは変わったのかなと思います」と宇都も内面の変化を自覚している。

今シーズンの富山は入れ替え戦を戦うことになったが、熊本ヴォルターズに苦しみながらも勝利してB1残留を決めた。そうした逆境での強さも宇都の自信を支えている。「他の選手より崖っぷちで戦ってきた経験があるので。レベルは違いますけど、メンタル的には一緒だと思うので、そういった経験を生かして崖っぷちの試合で発揮できるようにしたい」

0勝4敗ともう後がなく、まさに崖っぷちに立たされている日本代表。八村、ファジーカスと新たな戦力を加え決戦に臨む新生日本代表には、宇都が持つ逆境の強さも必要となってくる。