ジャマール・マレー中心のバスケにどうフィットするか
ナゲッツはジャズとの第7戦までもつれた激闘を制し、カンファレンスセミファイナルではクリッパーズと戦う。ジャズとのシリーズはジャマール・マレーとドノバン・ミッチェル、絶好調のエースによる個人の戦いがクローズアップされたが、タレント力で一つ上のレベルにあるクリッパーズと戦うには、ナゲッツもマレー頼みから脱却する必要がある。
ニコラ・ヨキッチはGAME7の勝負どころで攻守に底力を発揮し、クリッパーズとの戦いでも計算できる。だが、チームがさらに成長するには、マイケル・ポーターJr.に期待したいところだ。
ポーターJr.は2018年のNBAドラフト1巡目14位でナゲッツに指名された。3位以内でも指名でもおかしくない才能を持ちながら、上位指名が見送られたのは、ミズーリ大学進学を決めた後に椎間板ヘルニアに悩まされ、大学での1年間で3試合にしか出場できなかったからだ。ナゲッツに指名された後に手術を行い、2018-19シーズンは全休。昨年10月のプレシーズンマッチでようやく実戦デビューを果たしたものの、調子が上がってきた矢先に足首をケガするなど本領発揮には至らなかった。
ここまでは、ドラフト時に上位指名を見送ったチームの判断が正しかったと言える。だが、『バブル』に来てポーターJr.はそのポテンシャルを発揮した。長い中断期間を身体のケアにあてたおかげで、シーディングゲームから絶好調。リリースポイントが高くて正確なジャンプシュートが最大の武器だが、リムにアタックしてゴール下で勝負できる力強さもあり、身体の強さとリーチを生かしたリバウンドでも強みを発揮する。
シーディングゲームではマレーを含む主力の多くが出遅れたこともあって攻撃の中心を担ったポーターJr.は、8月3日のサンダー戦でキャリアハイの37得点を記録。シーディングゲームを通じて、20得点以上、2桁リバウンドが計算できるトッププレーヤーの片鱗を見せた。
だが、スタメンに戻ったマレ―がボールを長く持つようになると、ポーターJr.のオフェンス面での特長があまり出ないように。逆にディフェンスのポジショニングの難をジャズに突かれて、悪い部分ばかりが目立ってしまった。それでもジャンプシュートの確率、リバウンドの強さは変わらない。マレー主体のシステムに上手くアジャストできれば違いを見せられるはず。クリッパーズを相手にマレーだけで勝負できるのであればいいが、そう簡単にはいかないだろう。そう考えるとナゲッツとしても、ポーターJr.の持ち味をどう引き出し、欠点をどう隠すかのアレンジが求められる。
ポーターJr.はクリッパーズとのシリーズを前に闘志を燃やしている。プレーオフの重要な試合だから気合いが入るのは当然だが、彼はクリッパーズに『遺恨』があった。ドラフトでの出来事を彼自身がこう明かしている。「クリッパーズのチームドクターが僕について調査して、『もうバスケットボールはできない』との結果をまとめたんだ。だからクリッパーズが僕を指名しないことは分かっていた」
実際、2018年のドラフトで12位と13位の指名権を持っていたクリッパーズは、マイルズ・ブリッジズとジェローム・ロビンソンを指名している。クリッパーズの指揮官、ドック・リバースはこのエピソードを認めた。「確かに我々が指名候補を書き入れたホワイトボードには彼の名前があった。だが、ドラフトとはそういうものだ。重大な警告が出されているのに指名を強行することはできなかった」
一方、ポーターJr.の才能を信じたナゲッツの指揮官マイケル・マローンは、彼のここまでのパフォーマンスを高く評価している。「彼には『誇りに思う』と直接伝えている。彼の良いところはスペシャリストになろうとしないところ。スペシャリストは一つの方法でしかゲームに影響を与えることができない」
この1カ月で、ナゲッツのポーターJr.指名という賭けは、大成功へと転じている。ポーターJr.が勝敗に大きな影響を与えるかどうか、今回のシリーズにおける一つのポイントになりそうだ。クリッパーズの遺恨を語った上で、「そのおかげで今回の対決はすごく楽しみなものになる」と言うポーターJr.は、モチベーションに満ちている。