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プレー動画で細部まで学び、自分のものにする

ここ数年、NBAでは若い力の台頭が目立つ。クリスタプス・ポルジンギス、ジョエル・エンビード、ヤニス・アデトクンボら1990年代中盤から後半に生まれた20代前半の選手たちがスター選手の仲間入りを果たし、NBAも新世代の時代に突入しつつある。

NBAでのルーキーイヤーというと、フィジカル、スピード、過酷なスケジュールへの対応に苦しみ、やっとのことで1年を終える選手が多い。そんな中、今シーズンの新人王最終候補に選出されたベン・シモンズ、ドノバン・ミッチェル、ジャイソン・テイタムは異次元のパフォーマンスで周囲を驚かせた。特にセルティックスの主力という地位を確立させたテイタムは、1年目の選手としてはNBA史上2位タイとなるプレーオフ9試合で20得点超えを達成。試合を重ねるごとに勝負強さ、落ち着きが増し、今ではチームに欠かせない存在になった。

そのテイタムは、小さい頃からコービー・ブライアントの大ファンだった。大好きなコービーのプレーを参考にしようと思ったテイタムは、時間の許す限りYouTubeで過去のプレー動画を見ていたと『Wall Street Journal』に話している。

「コービーのようになりたかったんだ。時間があれば、とにかく彼のプレーを見ていた」とテイタムは言うが、彼はただ動画を見て参考にするのではなく、コービーの動きの細部を研究し、自分のモノにしたというから驚きだ。

幼い頃から将来が楽しみな選手として期待されたテイタムは、13歳の時、ザック・ラビーン、アンドリュー・ウィギンズ、ブラッドリー・ビールらを指導してきたトレーナーのドリュー・ハンレンの指導を受ける機会に恵まれた。ハンレンによれば、テイタムは13歳の時点でジャブステップ(ボールを保持している時、マッチアップするディフェンスの弱点を探るために行なう小さなステップ)の細部も重視していたという。テイタムは、そのうちコービーだけでなく、カーメロ・アンソニー、ポール・ジョージ、ケビン・デュラント、トレイシー・マグレディの動画も見始め、彼らのスキルを構成する要素を自分のプレーに取り込んでいった。

その結果、テイタムは1年目とは思えないパフォーマンスを披露し、早くもスター選手の仲間入りを果たそうとしている。

テクノロジーの進化は、いつの時代も若い世代が手にできる最大のアドバンテージだ。今の世代は、幼少期からマイケル・ジョーダン、コービー、アレン・アイバーソン、レブロン・ジェームズの時代にはなかった情報に接する機会がある。世界的にスマートフォンなどの電子機器が流通している以上、『最高の教科書』を生まれた時から手にしているも同然だ。

名実ともにスターの称号を得る選手の若年化は、リーグにとって歓迎すべきこと。選手の新陳代謝が活発であればあるほどスター選手が誕生し、リーグの人気も維持できる。NBAに限らず、最新ツールやテクノロジーの進化がプロスポーツに大きな影響を与える時代は、もう到来したのだ。