勝負どころで託された決勝シュートを決めた古川孝敏「エースの自覚は持っている」

2018/05/15
Bリーグ&国内
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文・写真=鈴木栄一

大舞台に強い男「こういう試合ってすごく楽しい」

5月13日、琉球ゴールデンキングスは名古屋ダイヤモンドドルフィンズとのチャンピオンシップ・クォーターファイナルで第3戦までもつれ込む熱戦を制した。そして、第1戦、第2戦とともに接戦となる第3戦、17-12で琉球に勝利をもたらす立役者となったのは古川孝敏だった。

残り1分12秒、古川のシュートで琉球は11-7とリードを広げる。直後、名古屋Dのクレイグ・ブラッキンズに3ポイントシュートを沈められ1点差に縮められるが、次のオフェンスで再び古川がシュートを沈め、残り38秒で3点差となり名古屋Dがたまらずタイムアウト。残り23秒にはフリースローを2本きっちり決めて勝利を決定づけており、第3戦の勝負どころで8得点の大暴れを見せた。

第2戦、第3戦を総括して古川は、このように激闘を振り返る。「相手に少しですがリードされて、追いかける苦しい流れでした。ただ、そこを昨日以上に我慢してディフェンスを最初から激しくできた部分は大きかったです。皆、気持ちが入っており、結果的に逆転して勝ち切れたというのはシーズン中にもあります。こういう力はあるので、それを自信にまた繋げていければと思います」

そして、第3戦のここ一番での連続得点については「自分がやってやるって気持ちが一番強かったですね」と頼もしいコメント。昨シーズンのファイナルMVPに続き、大舞台での勝負強さを証明したことに「こういう試合ってすごく楽しいです。楽しいって言い方はちょっと軽いですけど、負けたら終わりの難しい舞台がすごく興奮する」と続ける。

託した佐々、応じた古川「まさに努力家のシュート」

ちなみに第1戦、第2戦ともに古川はシュートを外し続け、2試合合計でのシュート確率は28本中8本成功のみの28.6%だった。いくら中心選手ではあれ、シュートタッチが明らかに良くない選手に、負けたら終わりの崖っぷちの状況でシュートを委ねるのは勇気のいること。

しかし、残り1分半からの古川の連続シュートは、彼が一旦ゴール下に移動しそこからアウトサイドの位置に上がっていくピンダウンスクリーンと呼ばれるフォーメーションプレー。古川にシュートを打たせるためのプレーだった。

琉球の佐々宜央ヘッドコーチは、エースとはいえ絶不調だった古川にシュートを打たせる選択をした理由をこう語る。「あれは僕が指示を出して打たせました。それまでシュートは入っていなかったですが、その前の時、フリースローを決めていました。シューターはフリースローが入ると乗るので、これは使いたいなと。またハッサンは、(ジャスティン)バーレルのディフェンスが良いので、なかなか1対1ができない。その中で今シーズン、確率が高いプレーは隆一が仕掛けるか、古川があそこでピンダウンからシュートを打つかです」

「あそこで外しても後悔はない。僕とあいつの関係は長く、これまで何本あのシュートを練習したのか知っています。多分、(残り38秒で決めた)最後のシュートがまさにそうで、ディフェンスは来ているんだけどいつもシュートをしている感覚で打ったもの。彼は日本代表ですが決して才能に恵まれた選手ではない、まさに努力家のシュートで、心に来るものでした。今年移籍してきて、プレッシャーのある中でそこで託して答えを出してくれたのはうれしいです」

「次のセミファイナルで終わるつもりもない」

佐々と古川は、東海大学、栃木ブレックス、日本代表とこれまで長く一緒に戦ってきた間柄。だからこその面もあるだろうが、今シーズン何度も佐々から古川に、叱咤激励と言うべきか「もっとしっかりしてほしい」という厳しい言葉を聞いてきた。ただ、それも深い信頼があるからこそ。それが出たのが今回、本当の勝負どころでの佐々の選択だった。

そして古川は最後、自分が託されたことについて「自分がエースという自覚は間違いなく持っています」と言い切る。「もちろん他の選手がやれるっていうのは勿論僕も知っています。ただ、チームの中心としてプレーしないといけない。大事な場面を任せてもらっているので、そこはしっかり責任を持ってやっていきたいという気持ちです」

チーム、そして古川個人としても一つの大きな壁を乗り越えた今回のクォーターファイナル。いよいよ次はセミファイナルで千葉ジェッツと激突する。「本当にここで勝って終わりじゃなくまだまだ先もあります。そして、また次のセミファイナルで終わるつもりもないです。この3ゲームを通じて自分たちの良かったところ悪かったところをもう一度見つめ直して、チーム全員で戦えるように準備していきたい」と、古川は早くも次の戦いに向けて臨戦態勢だ。