文=立野快 写真=野口岳彦

気迫のディフェンスとエースの働きで第2戦は川崎に

昨日、千葉ジェッツと川崎ブレイブサンダースによるチャンピオンシップのクォーターファイナル第2戦、そして第3戦が行われた。

初戦を落とした川崎は、第2戦でエナジー満点の戦いぶりを見せる。序盤は両チームのハードなディフェンスがオフェンスを上回ったが、その後は激しい走り合いのハイスコアな展開に移行。川崎の速攻からジョシュ・デービスのダンクが飛び出せば、千葉はマイケル・パーカーが走り込み得点。藤井祐眞の3ポイントシュートには石井講祐が決め返す。それでも第2クォーターに入ると川崎がじわじわと抜け出す。ニック・ファジーカスがすべてのシュートを決めてこのクォーター10得点と違いを作った。

後半もファジーカスがゲームを支配。両チームの激しいディフェンスでゲームが重くなる中、ファジーカスだけが高確率でシュートを決めていく。またファジーカスは試合を通じて12リバウンドを記録。絶対に負けられない気迫が乗り移った川崎全体のディフェンスをゴール下で支え、なおかつパスもさばいて6アシストと、手の付けられない好調ぶり。

54-45で迎えた最終クォーター、川崎は栗原貴宏の3ポイントシュートで差を11点に広げ、そのままリードを守り切り71-61で勝利。マッチアップの富樫勇樹を0点に抑えつつチームにスピードをもたらした藤井を中心としたガード陣の気迫のディフェンスで千葉を抑えきった。

消耗戦の展開、コンディションの差が勝敗を分ける

これで第1戦は千葉、第2戦は川崎の勝利。よって勝負は第3戦へ持ち越された。千葉はギャビン・エドワーズの6連続得点で第2戦の嫌な流れを断ち切るが、川崎も辻直人や藤井がインサイドに切れ込んでの得点で食らい付く。しかし、試合開始3分ここまで川崎をけん引したファジーカスが足を痛めるアクシデントでいったんベンチに下がる。

ここで千葉の石井が魅せる。川崎の死力を尽くしたディフェンスをかいくぐりロングツーを沈めると、直後の守備では、川崎のエース辻がアイソレーション気味に広いスペースを得た1対1を完璧に守り、エアボールを誘発。この流れからレオ・ライオンズと富樫が3ポイントシュートを連続でヒット。ファジーカス不在の2分間で6-6から14-6と抜け出し、前半を終えた。

川崎もこのままでは終わらない。ファジーカスがコートに戻った後半開始から藤井のハッスルとファジーカスの得点で一気に差を詰める。藤井は得点を決めた直後の守備でエドワーズからボールを弾きスティール。これをファジーカスが見事な動きでファウルをもぎ取り沈めて1点差に。

ここでチームを救ったのは富樫だった。残り40秒を切り1点差という場面でボールをコントロールし、ピック&ロールから自ら切れ込みフローターシュートを沈める。エースが責任を果たした千葉が試合残り25秒で18-15と突き放した。

辻とファジーカスのピック&ロールに密着して打開をさせず、オープンになった藤井にパスをつながれるが、懸命にチェックに行く石井のディフェンスが功を奏してこのシュートは決まらず。ファウルゲームのフリースローを富樫とライオンズが決めきり、22-15で千葉が勝利した。

余力のなかった川崎、『東芝のチーム』の最後

激戦を制した千葉の大野篤史ヘッドコーチは「どちらに転んでもおかしくないゲームだったと思いますし、負けたくない、負けられない、どちらもプライドを持った良いゲームだった」と両チームの気迫溢れるプレーを称賛した。

昨シーズンのファイナリスト、川崎はここで敗退。最後まで走り切った選手を「非常によく頑張ってくれた」と北卓也ヘッドコーチは称える。このオフにDeNAへ運営体制が変わる川崎にとっては『東芝のチーム』として最後のゲームに。社員選手として東芝に入り、今のチームで最も長く東芝に籍を置く北は「東芝のために、という思いでした。僕がプレーできるところではありませんが、有終の美で終わりたいという思いはあったのですけど申し訳ない」と頭を下げた。

その北ヘッドコーチが悔やむのは、第2戦でファジーカス、辻、藤井と主力のプレータイムが30分を超えたこと。「ファウルトラブルもあったんですけど、第2戦でもっとプレータイムを分散させれば、第3戦に余力を残せていた。そこは私の責任」と采配を悔やんだ。

負ければ終わりの試合、主力を引っ張らざるのは仕方ない部分もあった。しかし第2戦ではルー・アマンドソンがファウルトラブルでファジーカスを休ませられず、そのファジーカスは第3戦で一度ベンチに下がった時点で足を痛めていたようで、後半の5分間はフル出場したものの本来の迫力を欠いていた。その点では、エドワーズが「フィジカルに戦って消耗させたのが第3戦で効いた」と明かしたように、第2戦で32得点を奪われながらもブレることなくハードに守り続けた千葉が総合力で上回ったとも言える。

優勝候補同士の激突を制した千葉。大野ヘッドコーチは「今日、ホームじゃなければ負けていたと思います」と、ファンに感謝するとともに安堵の声を漏らす。レギュラーシーズン60試合でホームコートアドバンテージをつかみ取ったことが大舞台で生きた。次週のセミファイナルも船橋アリーナに琉球ゴールデンキングスを迎え、大きなアドバンテージが期待できそうだ。