チームを立て直した「リバウンドとルーズボール」
リバウンドとルーズボール。強いチームにとっては不変のテーマだが、辻直人はその意義をあらためて感じたレギュラーシーズンだったと振り返る。「シーズンが始まって序盤というのは結構負けたりして勝率も悪かったんですけど、そういった時にチームとして何が一番自信を持つべきかを作ろうとチームで話し合ったんです。そこでリバウンドとルーズボールはどこにも負けないようにしようと決めました」
それは天皇杯の準決勝でシーホース三河に敗れ、リーグが再開するまでの時期。「このままではいけないということで、こういったものを出すことでチームとして変わろうとしました」と辻は明かす。6連勝で締めた2017年末の時点で浮上の兆しはあったが、その後のリーグ再開から川崎の復調気配は次第に明確になっていった。
「そこからはディフェンスの激しさも出たし、リバウンドとルーズボールについては格段に違うチームになれたと思うので。後半戦になってからリバウンドとルーズボールで頑張って、それが結果に結び付いた試合も多々あります。その集大成をチャンピオンシップで出せたら、絶対に結果はついてきます」と辻は力強く語る。
「感謝の気持ちを持って、昨年のリベンジを」
昨シーズンの川崎はチャンピオンシップのファイナルで敗れた。天皇杯でも決勝で敗れており、どのチームよりも悔しさを味わっている。「昨シーズンは中地区1位でチャンピオンシップに行って、優勝候補と言われながらファイナルで負けてしまった。このチャンピオンシップが始まるにあたって、相手チームが優勝を喜ぶのを目の前で見た悔しい思いが蘇ってきました」
そしてもう一つ、今夏を境にクラブ運営体制が東芝からDeNAに継承されるため、『東芝のチーム』としての最後を優勝で飾りたいという強い気持ちが、辻だけでなくチーム全体にある。「東芝グループとして戦う最後のチャンピオンシップでもあるので、お世話になった方々への恩返しをしたい。感謝の気持ちを持って、昨年のリベンジを果たしたいです。恩返しできる最高の舞台がこのチャンピオンシップなので、そこで必ず優勝したいという強い気持ちがあります」
思い返せば、NBLラストシーズンで東芝が優勝した2年前も、東芝の経営危機が表面化して大騒ぎになった時期だった。試合に勝つたびに辻を始めとした選手たちは「会社のみんなを元気付けたい」と語り、危機感を力に変えて優勝している。
「今回は『持ってる辻』と言われるように」
この時の辻はまさに「打てば入る」という爆発的なパフォーマンスで、当時のアイシンを破ってファイナルMVPに輝いている。高校、大学、そしてトップリーグとチームに数々のタイトルをもたらしてきた『大舞台に強い男』だが、「自分でも大舞台に強いと思っていたんですけど、昨シーズンは違ったので、最近どうなのかなと思っていたんです」と辻は苦笑いする。
「まあでも、最近ここに来て相手の嫌な時間帯でシュートを決められるようになりました。チャンピオンシップはレギュラーシーズンとは別物なので、確率ががくっと下がったり、逆に無茶苦茶良くなる人もいると思います。そこで最初が千葉ジェッツ相手で、しかもアウェーゲームというところで、自分が勝負強さを出せたら勝てるという思いはあります。今回のチャンピオンシップでは『持ってる辻』と言われるように頑張りたいです」
ニック・ファジーカスが日本国籍を取得した一方で、司令塔の篠山竜青がケガで離脱。良いニュースと悪いニュースがあった川崎だが、それでもレギュラーシーズン58試合目、アウェーの千葉戦に勝てたことは大きな自信となっている。「強敵には違いないですが、ニックが帰化して初めての試合で勝てたのは川崎として新しいバスケットができたという自信になります。篠山さんが不在ですが、それでも千葉にも三河にも勝ちました。そういった意味でもこの数試合がプラス材料になったと思います。それをもって短期決戦で、次を考えることなく今まで培ってきたチーム力を発揮できれば」と辻は言う。
勝ち進む中で篠山の復帰が間に合えば、チームにとってはまた大きなプラスになる。「そうですね」と辻は不敵な笑みを見せた。川崎と千葉、クォーターファイナルから激戦必至となる。
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