ジャマール・マレー

相手のエースに圧倒されながらも、チーム一丸で延長戦を制す

新型コロナウイルスの影響で長い中断期間があり、オーランドのディズニーリゾート内に設けられた隔離エリア『バブル』で再開したNBAは、現地17日からプレーオフに突入。その最初の試合となったナゲッツvsジャズは、プレーオフらしい激闘となった。

前半は7人の選手が23本中11本と高確率で3ポイントシュートを決めたナゲッツが最大12点のリードを奪うが、後半に入りジャズが逆転。『バブル』でのシーズン再開後にブレイクした2年目のマイケル・ポーターJr.は得点力とリバウンドを兼ね備えているが、オフボールでのディフェンスに難がある。ベテランのジョー・イングルスがそこを突くことでナゲッツの守備を攻略した。

それでもナゲッツは、5点ビハインドで迎えた第4クォーターの序盤にモンテ・モリス、メイソン・プラムリーのセカンドユニットの活躍で点差を詰め、ここからは1ポゼッション差の争いに。時間の経過とともに両チームの集中は高まり、ディフェンスの強度が上がっていく。最後の時間帯はジャズのドノバン・ミッチェル、ナゲッツのジャマール・マレーと両エースの一騎打ちとなった。

残り3分12秒、マレーが軽やかなステップから逆転のフローターショットを沈めると、ミッチェルもすぐさま3ポイントシュートを決めてリードを奪い返す、まさにプレーオフの雰囲気に。両チームともほとんどの攻めをこの2人に託し、2人とも徹底マークを受けながら高確率でシュートを決めていった。

同点で迎えた残り26秒、マレーのミドルシュートがリムに弾かれたリバウンドをニコラ・ヨキッチが奪い、ゴール下でファウルを得てフリースローを獲得。2本とも決めて115-113と一歩抜け出す。しかしミッチェルはドライブから確実にファウルを誘い、こちらもフリースローを2本きっちり決めて同点に。プレーオフ最初の試合はオーバータイムに突入した。

ミッチェルはマイク・コンリーが不在のチームでいつも以上にオフェンスを引っ張った。「ただ正しいプレーを選択することだけを考えた」と試合後に語った彼は、フィールドゴール33本中19本成功、さらにフリースローは13本すべて決めて57得点という圧倒的なパフォーマンスを見せた。

しかし、オーバータイムはナゲッツのものだった。第4クォーターのテンションをそのまま持ち込んだ延長でジャズにミスが出る。ミッチェル以外の攻め手を見い出そうとしたルディ・ゴベアがパスミス、ここから速攻でモリスの3ポイントシュートを許すと、今度はイングルスがアタックからのキックアウトのパスをミスしてターンオーバー。ナゲッツはここで得たポゼッションでマレーが3ポイントシュートを決めて、123-115と突き放した。

ナゲッツの勢いを支えたのはオフェンスではなく、第4クォーターの終盤からポーターJr.をベンチに下げて引き締めたディフェンスだ。延長に入っても、フィニッシュの際に倒れたヨキッチが速攻を許さないために全速力で戻り、結果としてルーズボールを拾って貴重なポゼッションを確保するなど、ミッチェルの圧倒的なパフォーマンスに押されながらも、イージーシュートのチャンスを与えないことでジャズの勢いに耐え、自分たちのペースに持ち込んだ。

最終スコア135-125でナゲッツが先勝。マレーはプレーオフでのキャリアハイとなる36得点を記録したが、135得点を奪ったオフェンスについて質問されると「僕はスタッツを気にしない。大事なのは勝利であり、勝つために必要な得点が挙げられればいい。正直に言って勝てるのであればチームの得点は75とか80でいいよ」と答えている。

ナゲッツの指揮官マイケル・マローンは「ミッチェルが57得点を奪ってジャズが勝つなら、私は戦術ボードなんか持たずに眺めているよ。だがそうじゃない。我々には我々の戦い方ができる」と、粘り強く勝利を引き寄せた戦いぶりを誇ったが、長い時間ビハインドを背負ってのオーバータイムに疲れ果てた様子で「地獄のようなゲームだった。勝ったけど満足はしていない。長いシリーズの一歩にすぎないし、明日はしっかり映像を見て研究しなければ」と、快勝してもなおこの先の苦戦を予想した。

それでも初戦を取った意味は大きい。試合中も笑みをこぼしていたマレーは「プレーオフでプレーすることをずっと考えてきたからね。最も厳しい戦いだけど、一番楽しいゲームでもある」と理由を説明した。

ミッチェルはカール・マローンが持っていたチームのプレーオフ得点記録を塗り替えたが、勝利には繋がらなかった。当然、こちらには笑みはないが、自信を失ってはいない。「手痛い敗戦だけど、ただの1試合にすぎない」とコメントして引き上げた。マローンが言うように、長いシリーズになりそうだ。