信州ブレイブウォリアーズを率いてB1に挑む勝久マイケル(前編)「ただ純粋にプロセスにフォーカスする」

信州ブレイブウォリアーズを率いてB1に挑む勝久マイケル(前編)「ただ純粋にプロセスにフォーカスする」

2020/08/24
勝久マイケル

島根スサノオマジックのヘッドコーチとしてBリーグ開幕を迎えた勝久マイケルは、大混戦のB2で見事に昇格を勝ち取ったが、チームは指揮官交代を選択。栃木ブレックスのアシスタントコーチとして1年を過ごし、2018年夏に信州ブレイブウォリアーズのヘッドコーチに就任した。信州では1年目にチームをB2優勝に導くも、クラブがB1ライセンスを取得できずに昇格は見送りに。そして迎えた昨シーズン、新型コロナウイルスの影響で打ち切りとなるまでに40勝7敗の成績を残し、クラブもB1ライセンスを取得したことで昇格を果たす。勝久にとって新シーズンは、満を持してのB1初挑戦となる。『日々成長』を掲げプロセスにフォーカスする姿勢は、B1へと戦いの場を移しても変わることはない。

「自分と同じようなパッションを持つ人間と働きたい」

──bjリーグ時代の大阪エヴェッサでプレーした頃から、いずれはヘッドコーチになるつもりでしたか?

そう決めたのは大学時代です。ケガの手術のためにアメリカに戻った時、自分の母校のハイスクールの下級生チームのヘッドコーチをやる機会があって、私にとって初めてのコーチングがすごく楽しかったんです。まだ選手だったのですが、いずれ自分でプレーすることを止めた時にはコーチングがしたいと思いました。

正直に言えば、私はバスケのことしか頭になくて、それ以外に進む道を考えたことがありません。ただずっと体育館にいてバスケをして、バスケを見てきた人生です。今こうしてバスケのコーチングを仕事にしていて、間違いなくそれで良かったんですけど、それ以外の人生は想像できません(笑)。

──2年前に信州のヘッドコーチを引き受けた理由は何ですか。当時はB1ライセンス取得の目途が立っておらず、B1のチームへのこだわりはなかったのか、アシスタントであっても宇都宮の方が良かったのではないかと思ってしまいます。

その前のシーズンにアシスタントコーチを務めたブレックスはすごく良いチームでした。(安齋)竜三さんと仲良くなって一緒に働くのは楽しかったですし、(田臥)勇太さんをはじめ、素晴らしい選手たちと一緒に戦える楽しさもあって、いろいろな人に出会って良い経験をさせてもらいました。宇都宮は家族のための選択でもあって、宇都宮にいた年に息子が生まれたのですが、家族にとってもすごく良い環境でした。

ですが同時に、ヘッドコーチとして自分のバスケをやりたい気持ちもすごくあって、その翌年にいくつかのチームからオファーが来た時に、妻には申し訳ないけど自分のバスケを第一に選ばせてほしいとワガママを言いました。島根にいた時も妻が飛行機で来てくれていたんですけど、やっぱりすごく大変なんですよ。一緒には住めないかもしれないけどしょっちゅう会える場所はギリギリどこなのかとか、いろいろ考えました。やっぱり私がこういう仕事をしていて、どこに行ってもサポートしてくれる家族には本当に本当に感謝しているので。

──なるほど。年俸やチームの強さ、カテゴリーなどの要素ばかりを考えてしまいますが、家族も大事ですよね。何から何まで大満足のベストのオファーというのは難しいと思いますが、その中で何を重視しましたか?

その時はB1ではなかったし、正直に言えば条件で一番良いオファーだったわけでもないし、家族にとってとても良い場所ではあるが、ベストの場所でもありませんでした。結果的には家族にとっても素晴らしい場所になりました。でも、私はマック(アンソニー・マクヘンリー)と一緒にやりたかったんです。マックと自分の中では世界一のウェイン(マーシャル)を組ませたら特別なチームを作るチャンスがある、やってみたい、と思いました。

──マクヘンリー選手の存在が決め手だったというのは驚きです。

マックと働きたい、ウェインと組ませたい。編成の予算も大事ですが、自分が持っているビジョンを実現するチャンスがある場所だと思ったという、ピュアにバスケットの理由で信州に来ることを決めました。マックとウェインは特別なプレーヤーだと思っています。コート上のプレーだけじゃなく、リーダーシップやマインド、ハート。私は自分と同じようなパッションを持つ人間と働きたい。そうすることでハッピーになれるんです。

また私にとっては編成面だったりバスケットボールのことを全部任せてくれることも魅力でした。信州がそういうコーチを探していたこともありますが、コーチとフロントが一つになってチームを作っていくという私の希望を受け入れてくれました。

勝久マイケル

「目指すのは日本一であり、一番下からのスタート」

──それから2年、ここまでチームの進んできた道をどう評価しますか?

フロントもチームもここまで来たことが素晴らしいと思います。 チームとフロントのハードワークを 誇りに思っています。ですが、目指すのは日本一であり、一番下からのスタートなのでここから大変な挑戦ですけど、ここまでのチーム全員の頑張りは誇らしいし、それを続けていきたいですね。

──新シーズンの目標はどこに置きますか。チャンピオンシップ進出を狙いますか?

チャンピオンシップという言葉が出ましたが、最終目標は日本一です。何勝を目指すかとかプレーオフ進出とかよりも、一日一日を大切にして、毎日成長して、最後にどれだけ強くなっているか。我々がなれるベストのチームになることが目標です。

就任した時にも「どこを目指しますか」と質問されたのですが、答えは一緒でした。この2年間、『日々成長』という目標を掲げて、それを現実のものにしようと努力して、チームは少しずつ強くなってきました。優勝した年もトレーニングキャンプ中も、シーズン中も一度も優勝とか結果のことを話してませんでした。ただひたすらプロセスに集中しています。何勝を目指すか、言葉にしてもしなくても大事なのはプロセスをどうするかだと思っています。ただ純粋にプロセスにフォーカスすることを『日々成長』という言い方で大切にしていますし、それで結果もついてくると信じています。

──では、B1を戦う上でどの面を成長させていくべきでしょうか?

すべての面で成長が必要ですが、B1はまた違う世界だし、このチームにとっては初めての経験なので、まずは我々のできることから徹底してやっていきます。シュートは試合によって入る入らないがありますが、オフェンスとディフェンスの遂行力だったり、エナジーやコミュニケーションはコントロールできます。例えば昨シーズンは50点しか取れない試合がありましたが、コントロールのできるディフェンスの部分で頑張ったことで勝つ試合もあったり。

──ただ、プロセスにフォーカスするのは同じでも、戦い方は何かしら変えていく必要があるのでは? 信州のロスターを見ると楽しみな選手は揃いましたが、例えば日本代表の主力選手のような圧倒的な個を持つタレントはいないわけですよね。

おっしゃる通りで、B1には特別なタレントを持つ選手がいます。我々が今までB2でやってきたベースとなるディフェンスがあって、それはB1に行ってもブレないものですけど、特別なタレントを持つ選手を止めるためにやらなきゃいけないことはあります。具体的にはまだ言えませんが、ベースのものに加えてこういうディフェンスをしなきゃいけない、というものが結構出てきます。

オフェンスでもこの2年間で良いベースはチームで作ったつもりです。まずは新加入の選手たちにそこを理解してフィットしてもらうこと。それに加えて彼らの良さを引き出していきたい。B2とB1でのオフェンスでの違いの一つがボールのもらい方で、B2はボールはもらえるんですよ。だけどB1では40分間フィジカルに激しくやってくるチームが多くて、ボールのもらい方、バックドアの行き方だったりなど、プレッシャーをどうアタックするかを一つひとつ大事にやっていかないといけない。より激しく、よりフィジカルにやってくる相手に対して、我々がやりたいことを遂行できるか。そこは今まで以上に強調する必要があります。

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