文・写真=鈴木栄一

試合終了をコート上で迎え「やっと認めてくれた」

4月15日、アルバルク東京はホームで行われた名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦で、持ち味の激しく堅いディフェンスを披露することにより73-63で勝利を収めた。前日、最大22点の大量リードを奪いながら終了直前に決勝シュートを許し逆転負けを喫したチームにとっては、結果、内容ともに手応えを得た試合となった。

この試合、A東京の馬場雄大は約23分のプレーで4得点に終わったが、5リバウンド4アシストとオールラウンダーとしての本領を発揮している。約2カ月に及ぶ戦線離脱から戻ってきたばかりだが、復帰後では今回初めてプレータイムが20分を突破。また、前日は最後の勝負ところをベンチで見ていたが、この日は試合終了のブザーをコートの中で聞いた。それだけに「出場時間の制限は今週からないのですが、昨日は大事なところでコートに立てていなかったこともあって、やっと認めてくれたのかと思います」と、少し安堵の表情を見せている。

「あんなにベンチが暗かったのは初めてだったと思います。ブザービーターのような形で負けるのもほぼなかったですし」と馬場が振り返るように、前日のまさかの敗戦は、チームに少なくないダメージを与えた。

しかし、そこから見事に立て直して連敗を阻止したところに、A東京が常勝軍団であり続ける所以がある。馬場は、勝因について次のように語る。「最後まで気を抜かなかったから勝てました。やっぱりディフェンスが良かったのと、流れを簡単に渡さずに最後まで続けられたからだと思います」

「コンスタントに2桁得点を取りたい」

自身のプレーのクォリティについて「2カ月以上ずっと離れて、チームに迷惑をかけてしまいました。まだ僕が思っているプレーとみんなが思っているプレーでズレているところはあるので、それを合わせていきたい。ゲーム感覚はケガする前ほどには戻っていないです」と分析するが、一方でこれからの問題は試合を重ねていくことが解決できると考えている。

馬場が強調するのは、あくまで大切なのはチャンピオンシップでいかにベストコンディションに持っていけるかだ。「もともと、プレーオフに照準を合わせるつもりで復帰しています。この目的を変えず、ゆっくりと焦らずに一試合ずつ勝つことを目的にやっていきたいです」

そしてチャンピオンシップに向け、「まず、走ることが第一。展開が遅くて重たいバスケになっていることが多々あり、そこは僕が変えられるところです。そして2番ポジションで起用されているので、ピック&ロールの使い方、ボールの配分は意識してやっていきたい」と自身の役割を語る。また、「(田中)大貴さんだけに任せていけないと思います。コンスタントに2桁得点を取りたい」と、得点における貢献度を強く意識している。

「優勝するためにという思いでやっているだけ」

レギュラーシーズンも残り7試合といよいよ佳境に入っていた。A東京は東地区2位で、首位の千葉ジェッツを2ゲーム差で追っているとともに、3位の川崎ブレイブサンダースとの差も2ゲーム。地区優勝を果たし、セミファイナルまでのホームコートアドバンテージを得られる可能性もあれば、一気にワイルドカードにまで転落する可能性もはらんでいる。

こういった順位について「最近、ちょっとは意識するようになってきました」と言う馬場だが、それによって何か影響を受けることはない。「チャンピオンシップが近いから、どうこう変化ということはないです。優勝するためにという思いでやっているだけ。後ろは振り返らないで、前だけ見ています」

卓越した身体能力の持ち主で、相手のエースシューターを封じ込められる守備力を備える馬場だが、第4クォーターでの失速が目立つ今のA東京において守備と同等、もしくはそれ以上に求められるのはオフェンス面でのインパクトかもしれない。

前日も第4クォーター、オープンで外角シュートの状況を作り出せてもそこからエアボールなど全くシュートが入らず。勝ったとはいえ、このクォーターで挙げた得点は8点のみ。アウトサイドが沈黙した時に求められるのはゴール下へのペネイトレイトで、シュートが決まらなくてもフリースローをもぎとるようなプレーであり、そういった力強いアタックは日本人随一のスラムダンカーである彼の得意とするところだ。今はA東京の調子は下降気味。この流れを変える存在として馬場に注目していきたい。