カワイ・レナード&レブロン・ジェームズ

チーム戦術か個人能力か、対照的な『ロサンゼルス対決』

現地時間7月30日、NBAが4カ月半ぶりにシーズン再開を迎えます。その初日に組まれた注目カードが、西カンファレンス1位のレイカーズと2位クリッパーズ、優勝を占う上でも重要な一戦です。

優勝を占う上でも重要な西カンファレンスの1位レイカーズと2位クリッパーズの直接対決は再開初日に予定されています。同じロサンゼルスに本拠地を置く両チームが揃って好成績をあげるのは珍しく、ともにプレーオフに進むのでさえも7シーズンぶりとなります。レブロン・ジェームズ、アンソニー・デイビス、カワイ・レナード、ポール・ジョージとスーパースターを抱えて優勝のみが目標となっている点は同じですが、その戦い方は対照的で、興味深い対戦カードです。

選手同士が適切な距離感を保ったポジショニングとパスワークでディフェンスを崩すレイカーズは、全員が連動したチームオフェンスを武器とし、明確な役割分担で個性を生かした爆発力を秘めています。一方のクリッパーズは個人技をベースにしたオフェンスで、それぞれが自由にやりたいことを表現するような形から、自然に生まれた選手間のケミストリーが特徴です。

オフェンス力はレイカーズが上回るものの、シーズンを通して連携を深めるために、中心となるレブロンとデイビスのプレータイムは長くなってきました。一方のクリッパーズは個人の良さを前面に出すため、連携よりもコンディショニングを重視して全員のプレータイムが抑えられています。スーパースターの負荷は連携重視のレイカーズの方が大きく、個人技中心のクリッパーズの方が特定の選手に頼らない、面白い構図となっています。

また徹底した対策で相手を狂わせるのがプレーオフだけに、爆発力はあるものの連携を分断される可能性があるレイカーズに比べて、複数の選手の個人技で勝負するクリッパーズの方がパターンが多く、読み切れないため狂わされにくい面があります。

ディフェンス面ではクリッパーズが優秀な個人ディフェンダーを並べ、マッチアップを変えながら相手のキーマンに対応し、個々の戦いで優位に立つ戦術を採用しているのに対し、レイカーズはビッグマンを2人並べてインサイドを強固に塞ぎ、カバーとローテーションを意識付けたチームディフェンスを構築しています。

また、クリッパーズはレナードとジョージがエースディフェンダーなのに対して、レイカーズは周囲にエースディフェンダーを配置し、レブロンとデイビスはヘルプやカバーを担当します。このスーパースターの使い方も対照的です。攻守に個性を押し出したクリッパーズとチーム力を押し出すレイカーズのせめぎ合い、ここまでの直接対決では個人勝負になっていく終盤を制した方が勝っており、クリッパーズが2勝1敗でリードしています。

立場を変えてぶつかり合うヴォーゲルとジョージ、レブロン

対照的なチームを作ってきた両ヘッドコーチとスーパースターの関係にも注目しましょう。レイカーズの指揮官フランク・ヴォーゲルは、かつてジョージをエースに据えたペイサーズをハードなディフェンスとチームワークで強豪へと引き上げました。しかし、プレーオフでは接戦の場面でもジョージの個人技ではなくチームオフェンスを徹底し、結果として3シーズン連続でレブロンに負けています。

一方、クリッパーズを率いるドッグ・リバースは、セルティックス時代にプレーオフでレブロンを倒して優勝した経験を持ちますが、クリッパーズに来てからはシーズンを好成績で終えながら、個人技を軸としたチームの限界を示すかのように、プレーオフではカンファレンス決勝にも進めていません。エースを変えてチーム戦術のライバルに挑むことになります。

ヴォーゲルからすると、かつて乗り越えられなかった壁であるレブロンをエースに据えたチーム戦術で勝利を目指すことになります。そのチーム戦術のエースとしてペイサーズに勝利をもたらすことのできなかったジョージが、個人技中心のリバースの下で、かつてともに戦ったヘッドコーチとライバルのいるチームを倒しに行くことになります。

スーパースターが移籍を繰り返すようになったことは、違う戦術の中でも輝くことのできる個人能力が重要となり、それぞれが立場を変えて対戦することも増えてきました。プレーオフで巡り合うことのなかったロサンゼルスの両チームが、対照的な戦術でどこまで勝ち進むことができるのか、またカンファレンスファイナルで当たるとなればどちらが勝つのか。NBA優勝に向けた両者の挑戦は、LAのライバルとの激突からスタートします。