ケンバのリーダーシップを軸にメンタルの連携を強化
昨シーズンのスターター3人が抜けたセルティックスですが、今シーズンは新たなリーダーとなったケンバ・ウォーカーを中心に、チームとしての結束の強さを感じさせていました。攻守の数字自体は昨シーズンとあまり変わらないものの、選手間の意思統一がしっかりとしているため粘り強く勝利を挙げられるようになり、その中でジェイソン・テイタムがオールスターに成長するなど、個々の充実ぶりも目立ちます。
セルティックスで興味深いのは「選手同士の関係性が良好になった」とプレーから感じ取れるものの、アシスト数は26.3本から22.8本に下がっており、抜群のチームワークというよりは、抜群にバランスの取れた個人アタックの組み合わせです。特定の選手が長くボールを持ってチャンスを作るのではなく、マッチアップの中で優位になれる選手が攻め込む形をスムーズに選択でき、ミスがあってもリーダーのケンバが声を掛けることで一人ひとりが強気に攻めていく姿勢が崩れません。プレーの連携よりもメンタルの連携が取れている、という印象です。
ケンバ、テイタム、マーカス・スマート、ジェイレン・ブラウン、ゴードン・ヘイワードという豪華メンバーがフロアを広く取ってドライブして行くのは、ディフェンスからすると的が絞りにくく、しかも自分たちの弱い所を突かれるため、ヘルプが間に合わなくなります。スモールラインナップを好んで使いますが、昨シーズンよりもドライブからの得点が5.5点増え、フリースローも3.5本増えるなど、インサイドで得点するパターンが豊富になったことがオフェンスの堅実性が高めています。
一方でこの5人以外の選手は得点以外の面で貢献する役割分担になっており、ボールを持つ時間が短くともハードワークを欠かさないベンチメンバーは、目立たないながらも潤滑油のようにチームを動かします。特定の5人を組み合わせたユニットではなく、主役と脇役を様々な形で組み合わせていますが、全員が自分の役割を認識できているため、試合を通して機能不全を起こさずに戦っている点で結束力が感じられます。
接戦を勝ち切るための『最後の一手』
チームを取り巻く雰囲気が良いだけに、空中分解した昨シーズンに比べるとプレーオフへの期待も高まりますが、勝率5割以上のチームに対しては10勝13敗と負け越しており、5点差以内の試合では7勝12敗と接戦に弱いことは不安材料です。
粘り強い戦い方で強豪相手にも接戦に持ち込めているものの、相手を上回るための『最後の一手』に苦労している印象です。ディフェンス力が高いだけに、オフェンスでもう一押しをするために、これまで勝負弱いとされていたケンバと、スーパースター候補のテイタムがプレーオフの勝負どころで輝くことができるか、そのステップアップが問われます。
ここ数シーズンのセルティックスは試合終盤に奇跡的なシュートを何本も決めてきましたが、シュートを打つ選手がエースとは限らず、ヘッドコーチの「ブラッド・スティーブンス・マジック」とでも言いたくなるような読めないプレーチョイスをしてきました。しかし、今シーズンはほぼすべてをケンバかテイタムに託す『普通の』プレーチョイスをしており、それはほとんど成功していません。これが2人にステップアップを促す意図があったのか、それともプレーオフまで読ませないための布石なのか、接戦でのプレーチョイスにも注目したいところです。
セルティックスはこの4シーズン続けて好成績を挙げるも、プレーオフで敗退すると積極的なロスター変更をしてきました。メンバーが変わっても勝ち上がっていることは素晴らしいものの、ロスター変更は成功しているとは言い難い状況です。結束力を感じるチームになった現在のメンバーで来シーズンを迎えるためにも、再開されるシーズンで文句のつけようのない結果を残したいところです。