NBA再開カウントダウン スタメンを全員入れ替えた新生ヒートに勝利をもたらす『健康』と『明確な役割分担』

2020/07/25

3ポイントシュート成功率でリーグトップに

今シーズンはスターター5人すべてを入れ替えたマイアミ・ヒートでしたが、開幕から3カ月を24勝9敗と新しいチームとは思えない成熟度を見せ、東カンファレンス4位と好調なシーズンを過ごしてきました。その強さの秘訣はコンディショニングを重視するヒートらしい『健康』であり、ファイター揃いのチームイメージから離れるリーグ最高の3ポイントシュート成功率をもたらした『明確な役割分担』にあります。

厳しいトレーニングと徹底したコンディショニングのルールを設け、違反した選手は出場停止にするなど、選手のベストパフォーマンスを引き出すことに重点を置くヒートの方針は、時には厳しすぎて選手から不満も出てきます。しかし、このスタイルにハマる選手にとって活躍しやすい環境であり、見事にハマったケンドリック・ナンはヒートでなければ試合にすら出れなかったかもしれません。スターターの顔ぶれは一新されたものの、ハードなトレーニングを好むタイプの選手が集まったことで、チームの方向性はブレないものとなりました。

選手の指向とチームの指向があったからか、主力にケガ人が少なかったことで連携を深めていくことができ、特にスターターはそれぞれの役割分担がハッキリしたプロフェッショナル集団のようにプレーしています。

近年のNBAはゲームがアップテンポになり、選手の肉体的負荷が大きくなったことでケガ人も増えてきました。そんな中で『健康』であったことがヒートの大きな武器となり、開幕から好調を維持してきました。

ただ、明確な役割分担は時にリスクにもなります。スターターの中では重要度が低いと見られたマイヤーズ・レナードが欠場しただけでもチームのバランスは崩れ、7勝9敗と負けが先行しました。1月以降はケガ人も増え、役割分担が明確すぎるロスターではプレーオフに向けての不安もあるため、複数のポジションをカバーできるアンドレ・イグダーラとジェイ・クラウダーをトレードで獲得しています。この2人を上手くチームに混ぜ込んで連携を構築できるかどうかがプレーオフでの成否を握りそうです。

『新しい形のポイントセンター』アデバヨの成長と不安要素

連携が重要になったことはヒートにとっては新しい要素でした。昨シーズンまでは選手の役割分担を明確にするより、様々なことができる選手を並べることを好みましたが、今シーズンはシュート力に特徴を持った選手を増やしたことで3ポイントシュート成功率がリーグ1位になっています。これを可能にしたのがオールスターにも選ばれたバム・アデバヨが従来の枠に納まらない『新しい形のポイントセンター』としてシューターを生かす選手に成長したことでした。

これまで『ポイントセンター』と評される選手はアウトサイドシュートが上手く、パスセンスも高い優秀なオールラウンダーでしたが、アデバヨはパス能力はあるもののシュート力は低く、インサイドでしか得点できないタイプです。しかし、ディフェンスリバウンドからボールを運び、高いハンドリングスキルでボールをキープし、シューターにパスを供給していく『オンボールでのプレーメーク』に加え、パスを出した後は止まることなくインサイドに飛び込み、パスの受け手に代わって『オフボールでディフェンスを崩す』2重の動きでチャンスを生み出す選手になりました。

オンボールでもオフボールでもディフェンスを崩していく特殊な『ポイントセンター』を中心に、テンポよく打っていくシューターと相性の良さがヒートの大きな武器となりました。

若いアデバヨがチーム全体を機能させる重要な役割を担っていることは、プレーオフで徹底マークされて止められてしまうとチーム全体が停滞してしまう危険性もはらんでいます。そこで同じように起点となれるイグダーラに助けを求めたいところですが、ここまではアデバヨとプレーが重なったり、テンポの良いシュートにならなかったりと融合に時間がかかっているのがヒートの不安材料になっています。

新しいチームながら上手くいっていた長所が短所にもなり得る可能性を踏まえ、プレーオフに向けてトレードに動いたヒートでしたが、イグダラとクラウダーが融合する前にシーズンは中断となってしまいました。試合数が減ったことで試合の中で連携を深めていくのは簡単ではなく、開幕から上手くっていた長所を優先するのか、短所を潰すことを優先するのか、どちらも正解と言えそうなだけに難しい決断になりそうです。

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