文=泉誠一 写真=Getty Images

全米を熱狂させた大会でプレーした『Bリーガー』たち

アップセットも多かったマーチマッドネスだが、最後は1位のビラノバ大学が強さを見せつけて頂点に立ち、熱狂の日々に幕が下りた。

大荒れだったサウス地区において、ファイナルフォーまで勝ち上がった11位のロヨラ大学シカゴ校のシンデレラ旋風に沸いた今大会。準決勝でミシガン大学に敗れたが、一躍注目されたこの学校からどれほどのNBA選手を輩出してきたのか興味も沸いた。調べて見るとたった15名しかいなかった。

近々では今シーズン、ミルトン・ドイルがネッツに入団し、6試合出場。現在は傘下のGリーグチーム(ロングアイランド・ネッツ)で平均20.5点を挙げる活躍ぶりだ。しかしドイル以前は、1987年のアンドレ・ムーア(ピストンズ、バックス)まで遡らねばならない。30年も前の話ということが無名校だったことを裏付ける。

そんな過去の記録を見ていたら、全米を熱狂させた大学出身のBリーガーはどれほどいるのかも知りたくなった。

マーチマッドネス優勝を経験したBリーガーは3人

B1からB3まで対象となる135名中36名が、今年のマーチマッドネス出場校出身である。ランデン・ルーカス(アルバルク東京)とジャマリ・トレイラー(広島ドラゴンフライズ)のカンザス大学がファイナルフォーへ進出し、コートニー・シムズ(シーホース三河)のミシガン大学は準優勝だった。

あくまで今年の出場校でソートをかけただけであり、強豪校からやってきた選手は他にも多くいる。逆に、シムズ自身はNCAAトーナメントの出場経験はなかった。もう一歩踏み込み、マーチマッドネス経験者はどれほどいるのだろうか?

その興味と途方もない作業を天秤にかけながら躊躇していたが、セミファイナルのラジオ実況を聴き終えた後、ハイテンションのまま過去の記録を遡ることを決断。最初に断っておくが、こんな筆者による調査のため、参考までとさせていただきたくご容赦願いたい。

NCAAトーナメント出場経験あるB1選手は32名。そのうちファイナルフォー経験者は7名だった。成績上位順に最終ゲームの主要スタッツとともに対象選手を紹介しよう。


桜木ジェイアール(シーホース三河)
1995年/UCLA1年
【優勝】 決勝 vsアーカンソー大学(2点・2リバウンド・1アシスト)

ヒルトン・アームストロング(琉球ゴールデンキングス)
2004年/コネティカット大学2年
【優勝】 決勝 vsジョージアテック大学(1点・6リバウンド)

ジャワッド・ウィリアムズ(アルバルク東京)
2005年/ノースカロライナ大学3年
【優勝】 決勝 vsイリノイ大学(9点・5リバウンド)

セドリック・ボーズマン(栃木ブレックス)
2006年/UCLA4年
【準優勝】 決勝 vsフロリダ大学(9点・3リバウンド・3アシスト)

ロバート・ドジャー(三遠ネオフェニックス)
2008年/メンフィス大学3年
【準優勝】 決勝 vsカンザス大学(11点・10リバウンド・3アシスト)

ハシーム・サビート・マンカ(横浜ビー・コルセアーズ)
2009年/コネティカット大学3年
【ファイナルフォー】 準決勝 vsミシガンステート大学(17点・6リバウンド・1アシスト)

ギャビン・エドワーズ(千葉ジェッツ)
2009年/コネティカット大学3年
【ファイナルフォー】 準決勝 vsミシガンステート大学(2点・4リバウンド・1アシスト)

学生時代のチームメートが時を超えて日本で再会

41歳、いまだ衰えを知らない桜木が優勝したのは今から23年前、UCLA1年の時だった。かつてパナソニックトライアンズで活躍した元NBA選手のチャールズ・オバノンも優勝メンバーの一人であるのは有名な話。そのUCLAの後輩であるディジョン・トンプソン(レバンガ北海道)とセドリック・ボーズマン(栃木ブレックス)も同時期に活躍。しかし、ボーズマンが準優勝した1年前にトンプソンは卒業しており、ファイナルフォーの舞台には立てなかった。

日本に来ているコネティカット大学出身が、3人ともファイナルフォーを経験している。サビートとエドワーズは同学年であり、一緒に大舞台を経験した仲だ。

昨シーズンのサンロッカーズ渋谷では、アイラ・ブラウン(琉球ゴールデンキングス)とロバート・サクレ(サンロッカーズ渋谷)がゴンザガ大学以来、再び同じコートに立った。2008年のNCAAトーナメントでは1回戦で敗れたが、相手のデビッドソン大学にはステフィン・カリー(ウォリアーズ)がおり、その試合で40点を挙げている。なんともすごい舞台に立った選手たちが今、普通に日本で活躍しているから面白い。

日本の場合は大学より、知名度も人気も高い高校バスケ

広大なアメリカの場合、高校までは全米No.1を決める大会がない。学生たちにとって、真の全米No.1を決める戦いがNCAAトーナメントとなる。このマーチマッドネスは、日本では高校野球に例えられる。

バスケやサッカーを始めスポーツ全般に言えることだが、日本では大学よりも高校の方が露出は大きく、そして人気も高い。各クラブサイトでは出身高校を載せている場合もあるが、まちまちなのが現状であり、Bリーグサイトでは最終学歴のみ。高校までの競技者数(2016年度)はサッカーの約49.5万人に対し、バスケは女子が多いこともあり、56.7万人と上回っている。ミニバスからすべての経歴を掲載しているWリーグとまではいかなくても、知名度が高い出身高校を載せることで、ファンや部活経験者にとって身近に感じられる。

日本にやってきた外国籍選手の過去の活躍は調べないとなかなか分からない。だが、日本人選手の高校時代は少なからず記憶に残ってるファンも多いはずだ。