文=鈴木健一郎 写真=(c)WJBL、鈴木栄一

目標には届かず「反省点を挙げたらキリがない」

必勝を期したシーズンだったが、結果は3位。3月25日に行われたWリーグの3位決定戦、トヨタ自動車アンテロープスはシャンソン化粧品を破り、大神雄子の最後の試合を痛快な逆転勝利で飾った。だが、大型補強を敢行して優勝を目指したチームとしては、不本意なシーズンだったと言わざるを得ない。

レギュラーシーズンは26勝7敗。JX-ENEOSサンフラワーズから1勝を挙げて『女王』に一矢報いたものの、32勝1敗のJX-ENEOSとは大きく差を付けられ、デンソーアイリスと富士通レッドウェーブには負け越し。デンソーにはセミファイナルでも敗れている。

水島沙紀にとっても、難しさを痛感するシーズンだった。「それぞれのチームからエース級の選手が来て、勝てるメンバーを揃えたように見えると思いますが、一人ひとりそれぞれやってきたことが違うので、それを合わせるのが難しかったというのはあります。負けた試合も自分たちのミスからやられることが多く、反省点を挙げたらキリがないです」

シーズン終盤にヘッドコーチのドナルド・ベックが「家庭の事情で」退任。プレーオフ1カ月少し前の出来事で、少なからずチームに影響があったはずだが、水島はそれを認めようとはしなかった。「あったと言えばあったかもしれないですけど、それを勝敗に持っていっちゃいけないので。ヘッドコーチが交代しても自分たちのファイナル優勝という目的は変わりませんでした。そういう意味では一致団結して、できることを精一杯やれたと思います」

大神のラストマッチは劇的な逆転勝ち。残り1分を切ってからの水島のビッグプレー連発が勝利を呼び込んだが、本人はチームの勝利を強調する。「シンさん(大神)のために絶対勝とうと試合に入りました。気持ちが強すぎてうまく行かなかった時もあったんですが、ベンチメンバー含めてあきらめずに戦ったことで勝つことができました」

「シンさんだけに頼ってしまった部分があります」

トヨタ自動車は豊富な戦力を揃えたとはいえ、JX-ENEOSに追い付くにはチームとしてこれから多くを積み上げる必要がある。それは司令塔にしてリーダーの大神が抜けるところからの再始動だ。「正直、シンさんがいた3年間は頼りきっていました。今シーズンは、他の先輩方も一気に抜けてしまって、シンさんだけに頼ってしまった部分があります。不安な気持ちももちろんありますが、そこはシンさんがいなくなってもできるところを見せなきゃいけないです」

水島は常に全力プレーの背中で仲間を引っ張るタイプ。「私にはリーダーシップは向いていないんですけどね」と頭を抱えながらも「今シーズンも年齢的には上のほうにいたので、シンさんの支えにはなれなかったかもしれないですけど、チームを引っ張ったつもりです。来シーズンはシンさんの分まで頑張らなきゃいけない、という気持ちは持っています」

来シーズンも圧倒的な存在であるJX-ENEOSに挑む厳しいシーズンになる。だがトヨタはスタートしたばかりの若いチームで、伸びしろはいくらでも残されている。水島はその可能性に賭けるつもりだ。「今までだったら負けてシーズンが終わっていました。目標とするところまでは行けませんでしたが、こうやって良い形で終われたのでそこは自信にして、また悔しい思いは忘れずに、来シーズンに取り組みたいと思います」

来シーズンも打倒JX-ENEOSの一番手に挙げられるであろうトヨタ自動車。若くポテンシャルに満ちたチームで、水島には大神に代わりリーダーシップを発揮する『大役』が期待される。