文=丸山素行 写真=丸山素行、B.LEAGUE

ケガ人が続出しフルメンバーが揃わない中、10連勝を記録するなど、昨シーズンを上回るペースで勝ち星を積み上げているサンロッカーズ渋谷。今シーズンから指揮を執る勝久ジェフリーに話を聞いた。前編では勝久コーチのパーソナリティに焦点を当てたが、後編では今シーズンのチーム作りについて語ってもらった。

「リーグNo.1のディフェンスのチームになろう」

──SR渋谷は川崎ブレイブサンダースとともに東地区へと地区割が変更になりました。昨シーズン以上に激戦区となりましたが、チームとしてメンタルの準備が大変だったのでは?

「東地区が厳しい」というシーズン前の周囲からの予想がある中で、僕を含めて全員が絶対にやってやるという気持ちがまずありました。昨シーズンにチャンピオンシップに出た8チーム中5チームがいるので、厳しい戦いが絶対に続くことは分かっていましたし、SR渋谷が東地区に移った時点からチャレンジだという気持ちを全員が持っていました。

──開幕直前にブランデン・ドーソン選手がケガをして、その後もシーズンが進むにつれ故障者が続出しました。その中でこの好成績を残せているのは一番の要因は何でしょうか?

まずはディフェンスが軸だということです。自分たちはディフェンスは絶対に崩れてはいけない。リーグNo.1のディフェンスのチームになろうと最初から言ってきました。シュートはもちろん外れる時もある。でもそれがディフェンスに影響することがあっては絶対にいけない。軸がディフェンスだということがまず一番違うところです。

あとは一体感を持って一緒に戦うということです。チームスタッフ全員が共通理解を持って、一体感があるチームにしようと取り組んでいます。ケガ人がいて前半戦の成績は私自身も良かったと思います、本当にみんなが頑張ってくれました。

アシスタントコーチが参加せざるを得ない練習環境

──アシスタントコーチが3人もいて、スキルディベロプメントコーチもいます。『一体感』を強調しますが、それぞれの主張がずれたりすることはないのですか?

どうやるのかはスタッフで話し合っています。どのスタッフに聞いても返ってくる答えがなるべく同じであることはすごく重要なことで、言うことがバラバラにならないように、コーチ陣もコミュニケーションを取って、誰に聞いても「こうだよ」と言えるような環境には引き続きしていきたいです。

例えば誰かがケガをしたのでリハビリをどうするのかとか、練習ではここを見ようとか。コート上のプレーに直接関係ないことでもいろいろ決めています。その方針をみんながサポートしてくれています。

──選手に好調の要因を聞くと『一体感』と口を揃えることからも、スローガンが浸透しているのを感じます。ただ、ケガ人を多く抱えたことで日頃の練習にも支障があったのでは?

特に昨年11月後半や12月は5対5もできない、週によっては4対4もできないという状況でした。アシスタントコーチにプレーに入ってもらったり。一番最近まで現役だったアシスタントコーチのカイル(ベイリー)に痛み止めを飲んでプレーしてもらって、次の日に腰が痛いと言っていたほどです。やるしかないという状況だったので、そういうことをさせてまで本当に団結してやったのがこの結果です

ケガ人が戻って「今までよりもっと難しい」

──このタイミングでケガ人が復帰し始めたことは大きなプラス材料です。後半戦を戦う上で課題はありますか?

逆に人数がいることで、今度はもう一回選手たちが自分たちの役割を理解したり、強みを探さないといけません。今までは人数が少なかったので、ファウルの数やプレーの調子で判断するだけで、僕の決断はすごくシンプルでしたが、今は人数がいるので、選手は限られた時間の中で結果を出さないといけない状況になっています。考え方によっては今までよりももっと難しい。そういう状況の中でまた自分たちを見つけないといけない。それが後半戦の戦いだと思います。

──ちなみにSR渋谷はタイムアウト明けのシーンでのプレーの遂行度が高かったり、タイムアウトを機に立て直す力が高い印象を受けますが、どういったことを意識してますか?

まずだいたい話すのは、40分間何をやり続けるべきなのかということです。例えば「ボールプレッシャーがないじゃん」、「フルコートでピックアップしてないじゃん」とか。その確認が良いように作用してるのかもしれませんね。

──ケガ人がいる間は決断がシンプルだったという話でしたが、やはり選手全員を使えるほうが戦術の幅も広がりますしプラスですよね。ここから先は勝久コーチの采配が今まで以上に重要になってくるのではないでしょうか。

そこは自分としてもチャレンジです。東地区の中でスターティングラインアップが一番変わっているのがウチだったと思います。選手たちが力を発揮できるように、どういう持っていき方をすればいいのか、選手の組み合わせや役割をはっきりさせることなど、それは自分にとって大きなチャレンジです。